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異世界恋護奇譚 〜聖女のオマケでバグ転移した私、15歳で天然最強騎士団長と偽装結婚しました〜  作者: 三多来定


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221.リントとマリーの結婚式

 ミコトがセタの治療をしてから、3ヶ月が経っていた。


 季節は冬から春になり、花壇や街路樹に花が一斉に咲き出した第1エラルダ国の教会で、リントとマリーの結婚式が行われていた。


 マリーはつわりが落ち着き、お腹のあまり目立たないふんわりした純白のドレスを着ている。

 長い純白のヴェールから微かに除くマリーの笑顔は、女神のように美しい。


 教会の最前列でロイの隣に座っていたミコトは、マリーのあまりの綺麗さに、涙をボロボロ流していた。


「ミコト、披露宴で挨拶あるんだよ。そんなに泣いたらメイクとれちゃうよ」

 ロイは小声で言いながら、ミコトの涙をハンカチで押さえるように拭く。


 そう、ロイとミコトは、新郎新婦の友人代表で、披露宴で挨拶をするのだ。



 この3ヶ月の間に、国家特別人物の講義を終えたミコトは、ほんの1週間前に、各国代表と各国の国家特別人物の承認を得て、晴れてエラルダ初の女性国家特別人物となった。


 ミコトの肩書きは「治癒能力研究者」となり、功績は「治癒能力の再現と重症人の治療」という華々しいものになっていた。


 ただ一つ残念なことは、国家特別人物は臨時員制度を利用することが出来ないため、ミコトは自動的に騎士団を辞職することになってしまったことだ。

 もちろん臨時諜報部員と臨時員扱いの冒険者登録もなくなってしまった。


 今後、ミコトが騎士団の仕事を手伝えば、それは全て国家特別人物の功績となるため、事務をやりに行くと国費が動くという面倒な事態になるのだ。


 ミコトにとって、騎士団を辞めることは断腸の思いである。

 そんな訳で、ミコトは密かに女性が正式に騎士団員になれるように法律を変えようと目論んでいるのだが……。


「ほら、聖女が歌うよ」

 ロイは泣きながら不敵に笑うミコトの肩を揺らす。


 ミコトはハッとして、祭壇を見る。


 白い祈祷服を着たセイラが、祭壇に立ち、聖女スマイルをした後、澄んだ声で歌い出す。


「アヴェ・マリア……」

 ミコトは呟く。


 先程まで、アレコレと考えていた事がまるで嘘のように、セイラの歌で心も頭もいっぱいになる。


 ミコトだけではない。

 教会にいる全員がセイラの歌に聴き惚れている。


 マリーがセイラの歌を希望した理由が分かった。

 

 これは、神様の(うた)だ。

 神様に近い聖女が歌う、神様の(うた)……。


 セイラの歌が終わり、拍手が沸き起こる。


「すごいね……。何語か分からないけど、マリーって言ってた?」

「あ、マリア……。でも、マリーでいいかも……」


 ロイと会話しながら、ミコトの瞳から、再び涙がぶわっと溢れ出す。


「あー、また泣いて……」

「だって、セイラ、聖女みたい……」

「みたいじゃなくて聖女なんだよ」


 ロイは苦笑して、ミコトの涙をもう一度拭く。


「これは、メイクをもう一度ウミノさんたちにやってもらわないとダメだなぁ……」






 リントとマリーの教会での結婚式が終わり、次は国立宿泊所のホールでの披露宴だ。


 この世界、実は披露宴は一般的ではない。

 殆どの夫婦は、神様に誓う結婚式のみ行うのだ。


 リントが副騎士団長であることと、マリーが代表の孫であること、参列者に聖女と国家特別人物が2人もいること、などが披露宴を行わなければならない理由になっていた。



「あ、タリス! 悪いけど、ミコトを新婦控室に連れて行って欲しいんだけど……」


 ロイは教会の外で警備にあたっていたタリスに声をかける。

 タリスはすぐにロイとミコトの方へ走ってくる。


「いや、悪くないでしょ。俺、ミコトさんの専属なんだから」


 そう、タリスはミコトが国家特別人物になった1週間前から、ミコトの専属筆頭護衛になったのだ。

 

 普通、国家特別人物の護衛は騎士団員がやるのだが、ミコトより強い団員がいないことと、ミコトの護衛の重要性が高いことから、タリスが大抜擢されたのだ。


 タリスはAランク冒険者登録はそのままで、第1の国家公務員になったということになる。


「これでも2人にかなり感謝してる……って、ミコトさん、顔ひどっ!」

 タリスはミコトの泣き腫らした顔を見てギョッとする。


「顔ひどって、ひどい!」

 ミコトは叫ぶ。


「俺さ、ちょっと人を迎えに行かなくちゃいけないから、ウミノさんとネルさんにミコトをお願いしてきて欲しいんだよ」


「了解」


 ロイは納得したように微笑むと、ミコトに「あとでね」と言って走り去った。


「……それで、ミコトさんは、腹でも痛いの?」


 タリスの言葉に、ミコトは顔をしかめる。


「腹痛で泣いたりしません! マリーが綺麗で、セイラが聖女だったから泣いてるんです!」


「……あ、そう……」


 タリスは、やばい、全然分からない、と思いながらミコトの隣を歩く。


 新婦控室となっている聖女棟の前に、本日の聖女の護衛であるコランとハリーが立っている。

 どうやらセイラも控室内にいるようだ。


 コランとハリーは、ミコトの顔を見てタリスと同じくギョッとする。


「ミコト……さん、顔が……、どう……されました?」

 コランは不自然な敬語でミコトに話しかける。


「あの、敬語やめてください。みんなに言ってますけど、私は前と一緒がいいんです」

 ミコトは不満げに言う。


 何とかして騎士団にも返り咲くつもりでいるのだ。

 変な気遣いは絶対にして欲しくない。


 コランとハリーは、ははっと笑う。


「まあ、ミコトらしいか。顔が不細工になってるから早くなおしてもらえよ」

「気遣いが一切なくなった!?」


 コランとミコトのやり取りに、ハリーとタリスは吹き出す。


 すると、聖女棟の中からウミノがひょこっと出てきた。


「やっぱりミコトさん……、え!? 顔ひどい! お腹でも痛くなったんですか!?」


 ウミノの言葉に、ミコトは思わず笑う。


「なんかウミノさんとタリスさん、似てきましたねー」

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