220.同じ気持ち
第1に帰れ、とセタから言われたロイとミコトは、その翌日の早朝にセタの実家を出発した。
出発前夜は、ロイはセタの部屋に泊まり、兄弟でじっくり話が出来たようだった。
第2エラルダ国の森に入ったところで、行きと同じように、ロイはミコトを膝に乗せて切り株に座り、一息ついていた。
「あの、ロイ……」
ミコトは遠慮がちに口を開く。
「ん?」
「えーと、その……」
セイラの言うとおり、赤ちゃんをって考えてますか……?
うん、言いづらい!
「あの、セタさんに第1でやってもらいたい事って何なのかなぁって……」
これも気になっていたことだ、とミコトは頷く。
「ああ、まだいつになるか分からないんだけど、セタ兄に、第1の代表をやってもらいたいなぁと……」
「ええっ!? そうなの!?」
ミコトは驚いて、ロイの方へ振り向く。
ロイはふっと笑うと、ミコトの体の向きを変えて、向かい合わせに膝に乗せる。
「こっち向きの方がいいね!」
「いや、えと、代表って……」
ミコトはロイの顔が近くなったことで赤面する。
「セタ兄が代表になるためには、功績は十分なんだけど、ちょっと他部署の経験が少ないんだって。だから少し他部署を回って、それからアレンさんと引き継ぎをしながら名代を何回かやって……」
「もうそこまで話が進んでるの!?」
ミコトの驚きに、ロイは「内緒にしてね」と微笑む。
そっかぁ……。
セタ代表は、ちょっと怖そうかも……? とミコトはふふっと笑う。
「あ、でも、シェナさんとは、お別れなのかな……」
ミコトが呟くと、ロイはミコトをギュッと抱きしめた。
「また人の事ばかり心配してるね。多分大丈夫だよ。2人とも長い付き合いなんだしさ……」
確かにそうだよね……。
幼少期の7年と再会してから5年。
お互いその間に他の人もいたのだし、15歳のミコトが心配する必要も意味もない……。
「あ、そうだ。帰りに隣町に寄って、指輪を引き取ろうと思ってるんだけど、それでいい?」
ロイの言葉に、ミコトはハッとした。
そうだった!
注文したまま、取りに行っていなかった!
「忘れてた?」
ロイは至近距離でミコトを覗き込む。
「わ、忘れてないよ! 夢に出てきたもん! 結婚式の……」
「それ、起きた時に言ってたやつ? どんな夢だった?」
ミコトは自宅でガーデンウェディングをする夢の内容をロイに話した。
「それでね、お料理が何故か唐揚げとトンカツしか思い浮かばなくて、変だなって目が覚めて……ロイ?」
ミコトは何か考え込んでいるロイを見て首を傾げた。
「ん? あ、いや、自宅に招待客が入りきるかなぁって……」
「えっ? 夢の話だよー?」
ミコトはアハハと笑う。
ロイはもう一度ミコトを抱きしめた。
「結婚式、もう一度やろうよ。お世話になった人を招待して、料理とケーキをたくさん出して、ちゃんとお礼をしよう。それで、これからも俺たちをお世話してもらおう」
ロイの言い方に、ミコトは吹き出した。
「途中まではいい話だったのに、お世話してもらう話になったよ?」
「うん。俺さ、今回ミコトが起きなくて、どうしたらいいか分からなくなったんだ。そしたらシーマさんが来て、シーマさんはアレンさんとリントに言われたから来たって言っていて……。その他にも、いろいろ……」
ミコトはロイに抱きしめられながら、ロイの言っていることがすごくよく分かる、と思っていた。
これまでいろんな人に助けられて生きてきた。
そしてこれからも、治癒能力を身につけて、国家特別人物になったとしても、きっと助けられて生きていく。
ロイは神様に近い能力なのに、ロイも同じことを思っているのだ。
「ごめん、ちょっと上手く言えないんだけど、みんなにありがとうと、これからもよろしくお願いしますって感じ……?」
「同じ……」
ミコトはロイの胸に顔を押しつける。
「ん?」
「同じ気持ちで嬉しいの……」
「そっか。良かった……」
ロイは安心したように微笑むと、ミコトを背中に移動させた。
「じゃあ今日は、隣町で一泊だね!」
再び走り始めようとしたロイの何気ない言葉に、ミコトは「え?」と声を上げる。
「隣町からなら、15分くらいで帰れるよね? セタさんからも早く帰れって言われてるし……」
「俺、その頃には多分クタクタで……」
ロイが長時間走ってクタクタな状態を見たことがない!
「クタクタなら、イチャイチャも出来ないね?」
ミコトは意地悪く言う。
「あれ、ミコトも知ってるよね? 俺はミコトとイチャイチャした方が体力が回復するんだよ」
「あれ、回復じゃないよね? 力が出るだけだよね?」
ミコトは「アリアンの記録」を読破しているのだ。
イチャイチャすると力が引き出されるだけで、回復はやはり食事と睡眠なのだ!
アリアンの知識で、ロイには負けない!
「ま、殆ど同じだよ、多分……」
ロイは適当に返事をして、走り始めた。
ミコトはロイが走っている時には、話しかけないようにしている。
スピードがスピードなので、舌を噛んだりしないようにとミコトが独自に守っているルールなのだが……。
「んー!」
ミコトはロイの背中で、不満げに唸るのだった……。




