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異世界恋護奇譚 〜聖女のオマケでバグ転移した私、15歳で天然最強騎士団長と偽装結婚しました〜  作者: 三多来定


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219.第1に帰れ

 第4エラルダ国のセタの実家で、セタの治療を(おこな)ったミコトが目覚めた次の日。


 セタの主治医のヨナミと第1騎士団の医者のシーマは下山することになり、ミコトとロイ、リタとシェナは暖炉の部屋で別れの挨拶をしていた。


「今までは1週間毎でしたが、セタさんの経過を診るため、しばらくは3日毎に来ようと思います」

 ヨナミはリタとシェナに説明した後、ふとロイの隣に立つミコトを見る。


「あの状態から、ここまで回復するものなんですね。シーマさんの言った通り、起こして正解でした」


 ヨナミの言葉に、シーマはふふっと笑う。


「まあ、ミコトさんにしか適用できませんが……。普通の方なら寝かせておくのが正解でしょうね」


 そう、ヨナミの言葉通り、ミコトは完全回復、プラス、ロイの力で朝から元気いっぱいなのだ。

 元気すぎて、オルバの早朝の魔物退治について行ったぐらいだ。


「団長、先に帰りますが……、あの、大丈夫ですか?」

 シーマは、ミコトとは真逆で元気のないロイの顔を覗き込む。


「……大丈夫ですよ。ちょっとケーキを食べすぎて、夜中の添い寝の間、自制心と欲望が戦っていただけなので……」


 ロイの引きつった笑いに、シーマとヨナミは顔を見合わせて苦笑する。


「なら、ロイとミコトちゃんも、一緒に下山して、やってこればいいじゃない……」

「リタさんっ!」


 リタの言葉をシェナが慌てて止める。


「そうしていいなら、下山します!」

「ロイ! 治療しないのに必要ないよ!」


 今度はミコトがロイを止める。


「あの、ミコトちゃんの治療って、セタに何回もしてはダメなの? セタが言ったように、ロイ君の力の分だけなら、ミコトちゃんの負担もあまりないってことだよね?」


 その場にいた全員が、発言したシェナを見た。

 シェナはハッとなり下を向く。


「あ、ごめんなさい……! ミコトちゃんが大変……」

「いや、そうだよ! シェナさんの言うとおりだよ!」

 ロイは笑顔で叫ぶ。


「治療中、俺の力からミコト自身の体力に切り替わるタイミングでストップをかける練習をしなくちゃいけないんだよ! コレを知らない患者でやる訳にいかないよね?」


 ロイは早口で言うと、全員の顔を見て、最後にミコトを見た。

 うん、嫌な予感しかしない! とミコトは身構える。


「セタ兄は発案者だし、今も治療が必要だ! ミコト、一緒に頑張ろう!」

 ロイはそう言うと、ミコトをひょいと抱き上げる。


「だいぶ説明と説得を省いたよね!? ちょっ、足がもう行こうとしてる!?」

 ミコトは叫ぶ。


「団長、何時頃戻られますか?」

 シーマは、もう行く前提としてロイに尋ねる。


「え、明日の朝……」

「長いよ!? 今、朝だよ!?」

 ミコトは再び叫ぶ。


「長くないよ。ミコトの休憩も兼ねてるんだから……」

「明朝ですか……。見届けたかったですが、今回は帰りますか……」

 シーマは残念そうに息を吐いた。



 ロイとミコトとシーマの会話を聞きながら、シェナは、「ミコトちゃんごめん……」と呟いていた。







 結局、ミコトとロイは、主治医のヨナミが次に来るという3日間でセタの治療を2回行った。

 ロイの力からミコトの体力に切り替わるタイミングでストップをかける、という試みも、ロイが集中してミコトの力をみることで、うまくいった。


 2回の治療で、セタは普通に話せるようになり、10歩程歩けるようになったことで身の回りの事を何とか1人で出来るようになっていた。




「ミコトちゃん、ロイ、ここまで治療してもらって本当に感謝している。でも、ロイ、もう第1に帰るんだ」


 ヨナミの診察を終えたセタは、暖炉の部屋でリタとミコトとお茶を飲んでいるロイに、キッパリと言った。


 セタはヨナミとシェナに肩を貸してもらい、何とか立っている。


「セタ兄!」

 ロイは立ち上がると、ヨナミとシェナと交代して、セタに肩を貸す。


「椅子に座れる?」

「自分で座れる。それより、ロイ、第1に……」

「あと、2〜3回治療をすれば、もっと動けるように……」

「ロイ!!」


 セタの叱責に、暖炉の部屋が静まり返る。

 セタはリタの向かい側に座り、ハァと息を吐く。

 リタの隣に座っていたミコトは、咄嗟に姿勢をピシッと正した。


「何のために治癒能力に関する法律を作ったんだ! 自身や医術で治療できる者には、ミコトちゃんの治癒能力は使用しない決まりだろう? ここからは、自分自身で治る範囲だよ」


「いや、でも、家族だし……」

「家族でも同じことだ!」


 セタの強い言葉に、再び暖炉の部屋がしんとする。

 セタはアリアンを辞めたはずなのに、威圧感が以前と変わらない。


「それにロイもミコトちゃんも、第1でやらなければならないことが山程あるだろう?」


 う……、そうなんだよね。


 ロイ自身、騎士団は仕事が溜まっているし、ミコトは国家特別人物になるのなら、その講義を受けなくてはいけない。

 ミコトとロイは「やらなければならないこと」を思い出して、ずーんと下を向いた。


 セタは2人の様子を見て、苦笑する。


「大体ロイは、治療と称してミコトちゃんとベタベタしたいだけだろう? 自宅があるのだから、第1でも出来るじゃないか」


 あからさまに言った!? と、ミコトとリタとシェナとヨナミはセタを見る。


「そうなんだけど、第1では邪魔が入るっていうか……」


 アッサリ認めた! と全員がロイを見る。


 邪魔ってセイラのことだろうか、とミコトは首を捻る。


「あの、でも、最近のセイラは、ロイと自宅に行っても怒らないよね。離婚しろとも言わないし……」

「ああ、聖女はミコトを妊娠させろって……あ!」


 ロイはそこまで言って、自分の口を両手で塞いだ。

 ミコトは呆れた表情になる。


「そういうことか! なるほどね! どうせ、マリーの子どもと結婚させようとか言ってるんでしょ!?」

「すご……、よく分かったね……」

「分かるよ! 何年も一緒にいるんだから! いろいろ事情があるのに、セイラってばー!」


 ミコトは腕を組んで、頬を膨らませる。

 その様子を見たリタは、「聞いてもいい?」と挙手をする。


「ロイとミコトちゃんは、何か事情があって、子どもをつくらないようにしてるの?」


 リタの質問に、ミコトとロイは顔を見合わせる。

 アリアンの女児のことを言ってもいいのか分からないからだ。


 セタは「ああ!」と表情を変える。


「そのことなら、ミコトちゃんの治癒能力で解決するよね? 回復させつつ成長させて、その子が自分で考えられるようになったら、アリアンを辞めればいい。まあ、子孫までみた根本的な解決にはならないけど……」


 セタの言葉に、ロイとミコトはポカンと口を開けて、セタを見る。

 

「え、まさか、2人とも考えもしなかったのか? その能力、むしろそのためのものだろう?」


 ミコトはガタッと席を立つと、ロイの横に行き、ロイに抱きついた。


「良かった! 赤ちゃん出来ても死なないんだね! 良かったよー!」

「うん、良かった……。ミコト、ありがとう……」


 ロイもミコトを抱きしめる。


「な、なんかよく分からないけど、良かったわ……!」


 リタの言葉に、よく分からないのにもらい泣きをしているシェナは「良かったー」と言い、ヨナミもつられて「良かったです」と頷く。


 その光景を見たセタは、この2人が第1の国家特別人物でトップにいることがかなり心配になり、第1への迅速な復帰を決心するのだった……。

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