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異世界恋護奇譚 〜聖女のオマケでバグ転移した私、15歳で天然最強騎士団長と偽装結婚しました〜  作者: 三多来定


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216/242

216.好きな香り?

 第4エラルダのセタの実家の暖炉の部屋で、セタの今後のリハビリと、ミコトの目覚めについて、話し合いが行われていた。


 4人掛けのテーブルセットに、リタとシェナ、シーマとヨナミが座り、補助椅子に仕事を終えてきたオルバが座り、ロイはオルバの横に立っていた。


 セタは自身の部屋で眠っており、ミコトは点滴を受けながらリタの部屋で眠っている。


「セタさんは一見悪化したように見えますが、ずっと診てきた私からすると、かなり良い状態です。食事後に顔の赤みが増す、リハビリ後は息が上がる、睡眠後体力が回復するなどです」


 ヨナミの説明に、リタとシェナは顔を見合わせて笑顔になる。

 ロイとオルバもほっと胸をなでおろす。


「特に食事がいいですね。さすがシェナさんです。リハビリはシーマさんの案より少し進めても……」

「私もそう感じました。セタさんの元々の素質かもしれませんが、このページからでも……」


 医者であるヨナミとシーマはセタのリハビリについて話し合う。

 リタはシェナの手を握って「ありがとう」と言っている。


「ええと、それで、ミコトさんの状態なのですが……」

 

 シーマが言い淀むと、ヨナミは「眠っている状態ですよね?」と言う。


「はい、まさに自身の体力回復のために眠っているだけなのですが、ミコトさんの場合、起こして団長に力を入れていただいた方が回復が早いと思うのです」


 シーマの言葉に、ヨナミは「ほう……」と興味深そうに頷く。

 リタは小声で「体力ない時にするのはまずいんじゃない?」とシェナに話しかけてシェナを困らせている。


「あの、起こすって、どうやるのがいいんですか? 先日、馬車移動時も目を覚まさなかったんですよ」

 ロイはシーマとヨナミを見る。


 元々ミコトは、一度寝るとなかなか起きないのだ。


「軽い半昏睡状態ですので、無理矢理起こすのは私は反対です」

 ヨナミはシーマに言う。


「もちろんです。やはり基本は声掛けですね。団長がミコトさんの耳元で愛をささやくというのはどうでしょうか?」

「それ、昨日一晩中やってたんですけど、起きなかったんですよ」

「ああ、そうですか。良い手だと思ったんですが……」


 シーマとロイの会話に、リタとシェナとオルバとヨナミは「一晩中……」と呟く。


 昨晩は、リタはセタの部屋に布団を敷いて寝て、ロイがミコトと一緒に寝たのだが、どうやらロイは一晩中愛をささやいていたらしい。

 第1の医者と真顔でその話をするあたり、これはいつもの事なのだろう、とリタと他3人は目配せをする。


「あっ、私の患者で、好きな香りで目を覚ました方がいましたよ!」

 ヨナミは思い出したようにシーマに言う。


 シーマは「なるほど、香り……」と呟く。


「ええ、女性ですので、好きな花や香水などはありませんか?」

 ヨナミは立っているロイに問いかける。


 ロイはうーんと首を捻った。


「香りって匂いですよね……。ミコトが好きな匂い……、ケーキ、唐揚げ、トンカツ……」


「全部食べ物じゃない!」

 リタは呆れたようにロイを見る。


「あ、俺の匂いも好きだって言ってました!」


「ノロケをぶっ込んでこなくていいわよ! 大体ロイの匂いでも愛のささやきでも、ミコトちゃんは起きてないのよ!」


 リタの指摘に、ロイは「そうでした……」とその場にしゃがみ込んだ。


「リ、リタ言い過ぎ……」

「私、ケーキと唐揚げとトンカツ、全部作ります!」


 オルバの言葉を遮って、シェナは突然立ち上がって宣言する。


「ミコトちゃんは、セタのために頑張ってくれたんです! 私も出来る事は何でもやりたいんです!」

 シェナはそう言うと「材料そろえてきます!」とバタバタと出ていった。


 暖炉の部屋にいた全員は、これでミコトが目覚めたら、愛が食べ物に負けたことになるのでは……と微妙な気持ちになっていた……。





 材料をそろえてからのシェナはすごかった。

 

 あっという間に、というと言い過ぎだが、2時間もかからないうちに、アップルパイとチーズケーキ、唐揚げを山盛り、トンカツ6枚を暖炉の部屋のテーブルに並べた。


「ケーキは、香りの強いものにしてみたの。唐揚げとトンカツはそのまま夕飯にしようと思って、サラダとスープとパンも用意してあります!」


「す、すごい……!」

 ロイは、ミコトの大好物が並ぶ食卓を見て、呆気にとられていた。


 村の往診に行っていたシーマとヨナミ、夕方の見回りに行っていたオルバも、帰ってくるなり驚いている。


「思わぬごちそうになっちゃったわね!」

 リタはアハハと笑う。


「でも、これは、香り? が混ざってしまうのでは……?」

 オルバは、苦笑しながらロイを見て言う。


「ああ、大丈夫です。ミコトは嗅ぎ分けも得意なんですよ」

 ロイは得意げに答える。

 

「自分の奥さんを犬みたいに言うのはどうなのよ……」

 リタは呆れながらも、ミコトが眠っているリタの部屋のドアを開ける。


「でも、こうやってドアを開けておいて、みんなが楽しそうに食べていたら、その雰囲気で目を覚ますかもしれないわね。冷めちゃう前に、食べましょう」


 リタの提案にロイ以外の全員は、それもそうだと席についた。


 ロイはリタの部屋に入り、ミコトの眠っているベッドに腰掛けて、ミコトの手を握った。


「ミコトの大好きなものがたくさんあるよ。だからさ、早く起きてよ……、ミコト……」

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