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異世界恋護奇譚 〜聖女のオマケでバグ転移した私、15歳で天然最強騎士団長と偽装結婚しました〜  作者: 三多来定


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215.目覚めない

 第4エラルダ国のセタの実家で、ミコトがセタの治療を(おこな)ってから、2日が経とうとしていた。


 セタは無事にアリアンを辞めることが出来たが、筋力の衰えが激しく、力の配分を変えることも出来なくなったため、アリアンだった頃よりも声も小さく、生活の全てに補助が必要になった。


 ただ、一見悪化したように見えるこの状態も、リハビリを続ければ、今までとは違い快方に向かうのだ。


 セタを第1に連れて行って、リハビリの専門チームをつくり……という案もあったのだが、セタとリタ、シェナとオルバの意思もあり、第4でゆっくりリハビリを行うことになった。


 ロイは、母親のレイと妹のミレイの事をリタとセタに説明したり、シーマから預かっていた「リハビリノート」の通りにセタのリハビリを行ったり、麓の町まで買い出しに行ったり、オルバと共に、魔物退治をしたりと、忙しく動いていた。


 そうでもしていないと、不安で押しつぶされそうだった。


 そう、ミコトが目覚めないのだーー。


 ミレイの時のこともあるので、1日くらい目覚めないことは覚悟していた。


 でも、2日だ。


 これ以上目覚めなかったら、体が衰弱してしまう。

 ロイの力を入れるためには、ミコトが起きていないと無理なのだ。


 

 リタとシェナは、暖炉の部屋の椅子に座り、うつむくロイを見て、顔を見合わせる。


「あの、ロイ、今日はセタのお医者様がみえる日なの。事情を話して、ミコトちゃんも診てもらいましょうよ」

 意を決して、リタはロイに声をかける。


「そう、ですね……。ありがとうございます」


「ロイ君も何か食べた方がいいと思うよ。セタ用のパン粥だけど、ミコトちゃんにも起きたらふるまうつもりだから、味見して欲しいな?」


 シェナはロイの前に、パン粥が入ったスープ皿を置く。

 

 そういえば、昨日から、何かを食べた記憶があまりない……とロイはハッとする。


「ありがとうございます」


 ロイは素直にパン粥を口に運ぶ。


「ん、うま……、美味しいです」


「良かった……」

 シェナは微笑むと、パン粥を持ってセタの部屋に入っていった。


 ちょうどその時、入り口のドアをノックする音が聞こえた。


「あ、お医者さまよ。今日は少し早いわ……」

 リタは急ぎ足で入り口に向かう。


 ロイは食べながら、気配から、医者は2人なのか……とぼんやり思っていた。


 入ってきた医者の1人を見て、ロイは驚いて席を立った。


「シーマさん!?」


「団長、顔色が悪いですよ。心配したとおりですね」

 シーマは大荷物を床に置きながら微笑む。


「第1騎士団のお医者様なんですってね。ロイ、こちらがセタの主治医のヨナミ先生よ」


 リタにヨナミと紹介された、シーマと同じくらいの年齢の男は、ペコリと頭を下げる。

 ロイも慌てて頭を下げる。


「詳しいお話はシーマさんから伺いました。私は早速セタさんを診察しますね」

 ヨナミは挨拶もそこそこに、リタと共にセタの部屋へ入っていった。


「シーマさん、来るなんて一言も……」

 ロイは驚きが隠せず、立ち尽くしたまま、シーマを見る。


「はい。ヨナミさんにミコトさんの治療の詳細の手紙だけ送ってこちらには来ないつもりだったのですが、代表も副団長もかなり心配していまして、私に何回もセタさんの話をしてくるんですよ。それならいっそ、と来てしまいました」


 シーマはふふっと笑うと、大荷物の中から、何やら医療器具を取り出す。


「アレンさんとリントが……。ああ、見透かされてますね……」

 ロイは苦笑する。


「そもそもミコトさんの治癒能力は国家管理下に置かれています。本当は医師も同行しなくてはいけないのですよ。なにぶん初めてのことなので、皆さん上手く動けないのですよね」


 シーマはそう言うと、液体の入った袋と、チューブと注射針をセットする。

 ロイは「それは……?」と呟く。


「ミコトさんは目覚めないのですよね? これは血液に直接栄養を届ける点滴です。まだ2日なら栄養面はそんなに心配はいりませんが水分は必要ですので……。それに団長の安心材料にもなりますしね」


 シーマの言葉に、ロイは呆然とする。


「すごい……。何で全部わかるんですか? ミコトが目覚めないことも、俺の心配も……」


 シーマは荷物から、サッとノートを取り出す。


「私はミコトさんの治癒能力を、小隊長の治療という最初から全て詳細に記載しているのですよ! 併せてミコトさんの診察もしています。セタさんの症状は存じてましたので、今回はもしかしたら……と案じていたのです」


 シーマが開いたノートに、細かい字と人体の図が記されている。

 ロイは「細かっ!?」と目を見開く。


「そして、団長の性格も存じています。まあ、これに関しては、代表と副団長には敵いませんが……」

 シーマは微笑むと、ノートを閉じる。


「体制が整っていなくて、今回はバタバタでしたが、団長もミコトさんも、何も2人だけでやらなくてもいいのですよ」


 シーマの言葉に、ロイは、ハァーと息を吐く。


「本当ですね……。俺たち、これからもみんなに助けて貰わないと……」


「はい。みんな団長たちを助けますので、重い愛情をこじらせて、遠いところで2人きりで暮らそう、などとミコトさんに言うのはやめて下さいね」


 シーマはニッコリ微笑むと、「この部屋ですか?」とミコトが寝かされているリタの部屋に入っていく。


「……え、なんで知ってるの……?」


 ロイはシーマの背中を見ながら、赤面して呟いたのだった……。

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