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異世界恋護奇譚 〜聖女のオマケでバグ転移した私、15歳で天然最強騎士団長と偽装結婚しました〜  作者: 三多来定


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212.セタの気持ち

「セタ……」

 第4エラルダ国のセタの実家の暖炉の部屋で、シェナは途方に暮れた様に呟いた。


 シェナの向かい側に座っているミコトもリタも、セタの車椅子のハンドルを持つロイも、口を挟めないでいた。


「シェナの気持ちを分かった上で、俺はシェナを利用していたんだよ。シェナは依存者ではなくて、俺の被害者だよ」


「被害……者……?」


 セタの言葉に、シェナはかすれた声を出す。


 セタは何を言っているのだろう、とミコトは呆然としていた。

 シェナとセタは恋人同士ではなかったのだろうか。

 依存とか、利用とか、被害者とか、そんな関係には見えなかったのに……。


「母さんがシェナの存在に救われているのは分かっていたからね。通い続けてくれるシェナを拒絶しなかった。先日、ロイに全てを話した後、俺の役目は終わったとはっきり感じた。シェナを解放して命を絶たないと……とずっと思っていた」


 リタはガタッと席を立つ。


「死ぬ……つもりだったの!?」


 リタの震える声に、セタは少し首を動かした。


「これ以上迷惑はかけられないから……」

「息子と暮らすことの、何が迷惑なのよ!?」


 リタはセタの話を遮って叫ぶ。

 ロイはセタとリタの間に入った。


「リタさん、セタ兄の話を聞いてくれませんか?」

「ロイ……、分かったわよ!」


 リタはドスっと椅子に座る。


「母さん、シェナ、俺とロイは、傷の治りが早かったり、触らなくても相手を倒せたり、その他にも、いろいろ、普通の人には出来ない事が出来る。昔、神から力を貰った人物……アリアンの子孫なんだよ」


『神……!?』

 リタとシェナは同時に声を上げる。


 ミコトはセタの言葉に、ただ頷いた。


「ミコトちゃんはその事を知っている。ロイに愛された者だからね。俺たちアリアンは、生涯に1人、愛する人を定め繋がる事でさらに力を出すことが出来る。ロイはミコトちゃんで、俺は先代聖女なんだ」


「……先代聖女と恋人同士だったことは、第1からの説明で知ってるわ……」

 

 セタの説明に、リタは低めの小さな声で言う。

 シェナも小さく頷く。


「細かい経緯は省くけど、聖女を失った反動で俺はこうなった。これは、俺とロイが背負う宿命のようなもので……」

「ま、待って! じゃあ、ロイはミコトちゃんを失ったらセタと同じ様な状態になるってことなの!?」


 リタはもう一度立ち上がって、セタとロイを交互に見る。

 ロイは苦笑した。


「俺はセタ兄と違って耐えられないかもしれないなぁ……」


「そんな……」

 シェナはミコトを見て呟く。


 ミコトは目を伏せる。

 その前に、アリアンを辞めて欲しいという話を早くしなければいけない。

 

「そういうことだったのね。だからグレンさんは自害……」

 リタは呟きながら座る。


「……つまり、俺のこの状態は病気ではなく、このままこうしていても治る見込みはないんだよ。正気に戻った後、俺はかなり衰弱していたから、ロイにアリアンの事を伝えて、その後はアリアンを辞めて、そのまま死ぬつもりだった……」


 リタとシェナはうつむいて押し黙っている。


「でも、母さんはいつも無駄に明るいし、オルバさんは母さんが何を言っても穏やかで、シェナは冷たくしても、離れていかなかった……」


「……ちょっとセタ? 私にだけ当たりが強くない?」

 リタはセタを睨むように見る。


 セタはふふっと笑う。


「俺はいつの間にか、死にたくないと思うようになっていたんだよ。正気じゃない時も、正気に戻った時も、あんなに死にたかったのに、アリアンなのにこんな事を思う日が来るのだなぁと、でもこのままでもいけないなと……。そして今日、ロイとミコトちゃんが来たんだ」


「セタさん……!」

 ミコトは思わず立ち上がった。


「うん。ミコトちゃんの治療を受けるよ」

 セタは目線をミコトに向けて微笑む。


「ハイ! 私、頑張ります!」

「ちょっと! 全然分からないわよ! ミコトちゃんが治療ってどういうこと!?」


 リタは立ち上がって、ミコトの両肩に手を置く。


「あ、それは今から説明します」

 

 ロイは、ミコトの治癒能力の事を、リタとシェナに説明した。

 

 かなり簡単な説明だったが、リタとシェナは、驚きを隠せない様子だ。


「すごいわ、ミコトちゃん……! それってつまり、魔法よね?」


 シェナの言葉に、ミコトは目を逸らす。

 残念ながら、魔法じゃなくて、脳筋の技なんだよね……。


「魔法じゃないんです。半分はロイの力なので、やっぱりすごいのはロイなんだと思います」


 ミコトの言葉に、リタはパンと手を叩いた。


「よく分からないけど、セタは治るのよね? だったら、何でもいいわよ!」


 リタはかなりざっくりした性格のようだ。

 息子を治す力が、何でもいいのだから。


「それで! いつやるの? 何か準備がいるのなら……」


 リタの「準備」という言葉に、ミコトは「あっ」と声を上げる。

 しかし、いつものように、ミコトが何か言う前に、ロイが堂々と発言したのだった。


「準備は、俺の力を入れるために、かなりイチャイチャします! この村に宿屋はないので、一旦麓の町まで戻ります! 明日の朝戻ります!」


 暖炉の部屋が、シンと静まり返る。

 ミコトは顔を両手で覆った。


「え、えーと、つまり、明日の朝に治療するってことね? その、イチャイチャってどこまでなのかしら? 別にここでも……」

「リタさん! 具体的な質問はダメよ! ミコトちゃんが泣いてるわ!」


 シェナは慌ててリタを止める。

 リタは「あ!」と言い、咳払いをする。


「わ、分かった。麓の町で最後までやってきなさい」


 具体的に言った!?

 

 ロイがミコトをひょいと抱き上げた時だった。


 入り口のドアがノックされ、オルバが入ってきた。


「リタ、詰め所まで来てくれたんだってね。あ、ロイ君とミコトさん! 久しぶり……」

「オルバ、悪いけど今はのんびり挨拶してる場合じゃないの」


 リタはオルバの挨拶を両手で制して止める。


「ロイとミコトちゃんは、セタの治療をするために、準備があるのよ。さ、ロイ、しっかりやってきなさい!」

 リタは説明は任せて! というように、ロイにサインを送る。


「ありがとうございます! しっかりやってきます!」

 ロイはサインにしっかり頷き、恥ずかしすぎて半泣きのミコトを抱えて走り去った。


「え? セタ君の治療って……、いや、ミコトさん泣いてなかった? 何かあったのか?」


 リタは、任せてとサインを送ったものの、どう説明したらいいものか、と少し悩んでから、オルバを見た。


「明朝、セタをミコトちゃんが魔法みたいな能力で治すんだって。で、ロイとミコトちゃんは準備……まあ、エッチしに行ったのよ」


 リタの身も蓋もない説明に、オルバは目を丸くする。


「母さん……」

「リタさん……」


 セタとシェナは呟くと、目を見合わせて笑い合ったのだった。

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