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異世界恋護奇譚 〜聖女のオマケでバグ転移した私、15歳で天然最強騎士団長と偽装結婚しました〜  作者: 三多来定


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211.シェナの気持ち

 第4エラルダ国の山の中腹の村にあるセタの実家で、ミコトはセタの幼馴染でおそらく恋人のシェナから、料理を教わっていた。


 セタに、アリアンを辞めないか……という、かなりデリケートで重大な話をしに来たのに、何故料理を教わっているのかというと、セタへの話は、まず、ロイとセタだけで話す事になったからだ。


 ロイは到着後、すぐにセタの部屋へ入った。

もし、セタがアリアンのままでいたいと言ったら、無理強いはしないことにしているが……。


「ミコトちゃん、包丁を持って考え事をすると危ないよ」


 シェナの声に、ミコトはハッとする。


「ご、ごめんなさい」

 ミコトは、包丁と皮をむこうとした芋を木のまな板に置く。


「……気になるよね。セタとロイ君の話……」

 シェナは柔らかく笑い、ミコトの置いた包丁と芋を手に取ると、スルスルと皮をむいていく。


「シェナさん、すごい!」


「そう? でも、ミコトちゃんはどうして急にお料理をしようと思ったの? ロイ君に何か言われた?」


 シェナの皮剥きスピードは速く、すでに2個目の芋をむいている。


「いえ、ロイは何も言わないです。ただ、私が妊娠中のマリーの手伝いをしたくて……、あ、マリーっていうのは、聖女の侍女の女性で……」

「知ってるわ。セタの嫁候補だった人よね。銀髪のとても綺麗な……」


 ミコトは「ん?」と首を傾げた。

 シェナとマリーの接点なんてあるのだろうか。

 セタがそういう話をしたのだろうか。


 ミコトの様子を見て、シェナはふふっと笑う。


「私ね、前の旦那と離婚した後、傷心旅行と称して第1に観光に行ったのよ。そしたら第1の首都ではセタの噂で持ちきりでね、恋人の聖女と美少女の嫁候補の侍女と三角関係だとかなんとか……」


「うわぁ……」


 まるで芸能人だ。

 マリーから聞いてはいたけど、セタ人気はミコトの想像より凄かったようだ。


「……マリーさんは妊娠中なのね。旦那様はどんな方なの?」


「第1の副騎士団長です。私にはイジワルだけど、仕事は出来るし、何よりマリーのことが大好きなんです!」


 ミコトは意気揚々に答える。

 実際はまだ旦那様ではないが、そんな説明は不要だろう。


 シェナは「そっか」と微笑むと、鍋を棚から出す。


「ミコトちゃんには、炒めるのをやってもらおうかな……」

 シェナの声が微かに震えている。


 え、泣いている!?

 ミコトは、きっとまた何かやらかしてしまったんだ、と咄嗟に理解した。


「あの、私、ごめんなさい! 私、ホントに、無神経っていうか……」

「違うの……! ミコトちゃんは何も……」


「ただいまー! ねえ、聞いてよ! オルバったら見回りから戻ってなくて……って、どうしたの!?」


 オルバを呼びに行っていたリタが、ミコトとシェナの様子を見て驚く。


「あ、あの、私が……」

 ミコトはどう説明したらいいのか分からず、口籠る。

 実際、どの言葉がダメだったのか、よく分からないのだ。


 シェナはミコトの方を見て、首を横に振った。

 そして、リタを見る。


「リタさん、ミコトちゃんは何も悪くないの。私もケジメをつける時が来たんだと思って、弱気になってしまったの……」


「ケジメ……?」

 リタは首を傾げる。


 シェナは弱々しい微笑みで頷く。


「セタから離れる……離れてちゃんと1人で歩くケジメ……かな」





 ミコトとリタとシェナは、台所から暖炉の部屋のテーブルに移動していた。

 むいた芋や鍋は、そのまま台所に放置されていた。


「それで、セタから離れるって、シェナはどこかに行くってこと?」

 リタは3人分の温かいお茶を淹れてテーブルに置くと、椅子に腰掛けながらシェナに尋ねた。


 シェナは「いえ……」と下を向く。


「私はこの村で最期まで暮らそうと思っていて……。行ってしまうのはセタなの」


「えっ!? どういう事?」

 リタは今日何度目かの驚いた声を上げる。


「ロイ君の話はきっと、セタを第1に連れて行く話じゃないかな?」


 シェナの言葉に、リタはミコトを見る。

 ミコトは咄嗟に首を横に振った。


「あの、連れて行く話ではないんです。ロイはセタさんを治したくて……」

『えっ!? 治るの!?』

 リタとシェナの声が重なる。


「あ、えと、それはまだ分からなくて……」

 

 セタの意思が最優先の話だ。

 ミコトが勝手に話していいことではない。


 ミコトの困った様子を見て、シェナは微笑む。


「やっぱり同じ意味だよ。治すためには第1に行くし、治ったら第1で働くんだもの」


「いえ、えっと、治すのに第1に行く必要はなくて……」

 ミコトはさらにしどろもどろになる。


 シェナは慌てて「違うの」と首を横に振る。


「嫌な言い方をしてごめんなさい。この事は私の中の問題なの。私はセタのお世話をするフリをして、セタに依存していたの。それをやめなくちゃって話なのよ」


「依存!? そんな事ないわよ! 少なくとも、私はシェナがいてくれてどんなに救われたか!」


 リタの言葉に、シェナは微笑む。


「リタさん、ありがとう。でも私は、セタのことを好きな女性たちより、自分が一番セタの近くにいるという事実で、自分の事を慰めていただけなの。セタはその事に気付いているのよ」


「シェナ……」


「だけど、セタを好きだった女性たちも、今はちゃんと別の道を歩いている。当たり前よね。もうあれから5年も経っているんだもの。私だけ、ずっと依存して……」

「相変わらず、シェナは自分ばかり責めるんだね」


 低い静かな男性の声がして、ミコトとリタとシェナは振り向く。


 茶色のドアの前に、車椅子に乗ったセタと、その車椅子をひくロイが立っていたーー。

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