210.ロイの計画の破綻
ミコトとロイは、セタに会うために、第4エラルダ国のセタの実家に向かっていた。
もちろん、ミコトがロイの背中に乗り、ロイはひたすら走るという、いつもの規格外の方法だ。
2回目の休憩時に、ロイはリオの処遇について教えてくれた。
ちなみに、2回目の休憩も、ロイはミコトを膝に乗せて、切り株に座るというスタイルである。
リオは、ソマイにミコトを助けるように仕向けたことや、今回のミコト殺害命令に直接関わっていなかったことが考慮され、国家特別人物の資格喪失、代表の解任、罰金と2年の監視が付くことで収まったそうだ。
実行犯や指示を出した側近は懲役刑が言い渡されるとのことだ。
「リオは、代表を解任されたとはいえ、他に代表をやれる人がいないから、結局同じような仕事量をこなす事になるそうだよ」
「お給金下げられて同じ仕事をする罰って感じだね」
「そうだね。ある意味、労働を課せられる懲役刑と変わらないかも。あ、でも、カーサさんと一緒にはいられるかな……」
そう、ロイの言うとおり、カーサはリオと離婚せず、一緒に罪を償う選択をしたのだ。
リオとカーサは、ミコトが思うよりもずっと仲が良かった。
2番目か3番目の奥様にリオが夢中だと勝手に思っていてすみません! とミコトは心の中でカーサに謝る。
「そういえば、リオさんは3番目の奥様と離婚していたけど、自分が捕まりそうだったから、逃がしてあげたってことなのかな……?」
ミコトが首を傾げると、ロイは「あー」と笑った。
「キダンさんが興味で調べたんだけど、3番目の奥様は、2番目の秘密に気付いて、バラされたくなかったら結婚しろってリオを脅迫したんだって。離婚するための相手の不利な情報を集めるのに時間がかかって、あの時期の離婚になったみたいだよ」
「そ、そうだったんだ。リオさんってモテるんだね」
ミコトの解釈に、ロイは首を傾げる。
「お金目当てじゃないのかな? 国家特別人物の妻は金貨もらえるよね?」
ミコトはハッとする。
ミコトへの金貨30枚は、今でも騎士団から護衛を雇う事に使用されているため、金貨をもらっている感覚が全くなかったのだ。
リオがモテるというキレイな話ではなかった。
「あー、ミコトは可愛いなぁ……」
ロイはミコトを抱きしめる。
「ちょっとバカにしてるよね?」
ミコトは頬を膨らませる。
「あ、その顔もいいね」
「もういいよ! それで、セタさんの家には今日行くの?」
実は2回目の休憩をとっているこの森は、すでに第4エラルダ国なのだ。
時間は13時。
ロイの足の速さなら、14時にはセタの家に行けてしまうのだ。
「行けちゃうんだけど、セタ兄の治療をする事になったら、ほら、俺の力が入ってないとダメだよね。ミコトは人様のお家が苦手だから、第4の宿屋に泊まって……」
「ちょっと待った! ずっとロイの背中に乗ってたし、休憩も膝の上だし、力は入ってるよ!」
ミコトがロイの言葉を遮ると、ロイは真剣な表情をした。
「セタ兄の治療は、おそらく今まで一番大変だと思うんだ。念には念を入れないとダメなんだよ」
この人、また真面目な顔してイチャイチャしようって言ってるよ!?
「……嫌?」
ロイは少しシュンとした顔でミコトを見つめる。
ミコトはロイのこの顔に弱い。
というか、どの顔にも弱いんだけどね!
「い……やじゃない……」
ミコトは顔を赤らめて小声で呟く。
ロイは笑顔で「良かった」と言うと、ミコトを背負って再び走り始めたのだった。
第4エラルダ国のセタの実家にほど近い山の麓の町で、ロイとミコトは宿屋を探しながら歩いていた。
「ロイ! ミコトちゃん!?」
『リタさん!?』
突然の女性の声に振り向いた2人は、驚いて同時に大声を出す。
そう、後ろにいたのは、セタの母親のリタだった。
「こっちに来る手紙をもらってたけど、今日だったのね! 2人とも元気だった?」
「はい元気です! リタさんもお元気そうで良かったです!」
リタとミコトは抱き合って喜び合う。
ロイはリタが大荷物を抱えていることに気付く。
「リタさん、1人ですか?」
ロイは周りを見回した。
「1人よ。オルバは仕事があるもの」
「えっ!? あの山道をこの荷物を持って登るんですか? 魔物も出るし……」
リタの1人宣言に、ミコトは驚く。
リタはアハハと笑う。
「いつもこれくらいやってるわよ。魔物も数体なら問題ないわ」
リタは腰の短剣を見せながら言う。
そうでした。
彼女もまた、筋力と体力で選ばれたアリアンの妻でした。
とはいえ、とミコトはロイをチラッと見る。
ロイは微笑んで頷く。
「リタさん、俺が荷物を持ちますよ。一緒に帰りましょう」
「私が魔物を倒します!」
ロイはリタの荷物を持ち、ミコトはリタの真似をして、腰の短剣を見せる。
「ありがとう! 持つべきものは優しい息子と娘ね!」
リタは本当に嬉しそうに言う。
荷物を持ったロイの前方を、楽しそうに会話しながら歩くミコトとリタを見て、ロイは「イチャイチャ計画が……」と呟いていた。
後ろでロイが深い溜息をついていたのを、ミコトとリタは全く気付いていなかった。




