208.神様の話②
ミコトとロイとセイラは、神様と話をするために、真っ白な空間にいた。
(ミコトに、世界を変えたら存在を消すって言ったのは嘘だよ、とセイラから伝えて態度が豹変しても困るし、まあ、真面目だったことで信頼を得て上手くやっているようだったからね。それに、前回アリアンの力が入った時に、それとなく伝えたつもりではあるよ)
そ、そうだっけ? とミコトは目をつむる。
ロイは不満が残っているようだが、一応頷いている。
「あと、神様にお願いがあってさー」
セイラは相変わらずの軽い口調だ。
(ミコトの無事を両親に伝えたいんだよね?)
神様はミコトたちの考えていることが大体わかるのだ。
話が早くて助かる。
(それに関しては、こちらのミスだから何とかしてその希望は叶えるよ。ただ、今ちょっと、地球の神ともめていてね……)
神様同士って、もめるの? とミコトは首を傾げる。
ちきゅう? とロイも首を傾げる。
「どーせ、ミコちゃんを転移させちゃったからもめてるんでしょ?」
セイラの言葉に、神様は(その通り)と答える。
(どうにかしてミコトを地球に戻せないのかって詰め寄られてるんだよ)
ミコトをちきゅうに戻す……?
ミコトが元の世界に帰る……!?
ロイの心臓にドンッとした衝撃が走る。
「ぐっ……!」
ロイはうめき声をあげて、その場にかがみ込んだ。
「ロイ!?」
ミコトはロイの背中をさする。
(ああ、アリアンにはキツイ話だよね。愛する者がいなくなる想像だけでもかなり苦しいはず……)
「いなくならない! 私はずっとロイの側にいる! 私は地球には帰らない!」
ミコトはそう叫んで、自分の言葉に愕然とした。
今この瞬間、パパとママとセイラより、ロイを選んだのだ。
「うっ……、うう……」
ミコトはロイの横でポロポロと涙を流す。
「……ミコト……」
ロイはミコトを抱きしめる。
(ミコトは本当にクソ真面目だよね。この問題自体、ミコトに責任は全くないし、そもそも戻せないからミコトの意思も関係ないんだ。どちらを選ぶかで悩むなんて無意味だよ)
「む、無意味って、そこまで言わなくても……。しかも、またクソって言ったし……」
ミコトは抱きしめてくれているロイの背中をギュッと掴む。
「ミコト、痛い。痛い気がする!」
背中を掴まれたロイは体をよじる。
「ねぇ神様、私って『いい聖女』だよね?」
セイラは突然そう言うと、スッと立ち上がった。
ミコトとロイは「いい聖女?」と呟く。
「恋人やハーレムつくったりしないし、この世界のいろいろな事情に首突っ込んだりしないし、昼間は寝てるからお金も殆ど使わない」
セイラは、まるで何かのプレゼンのように両手を広げる。
「お祈りだけはちゃんとして、後は一切何もしない! こんなニートな聖女は他にいないと思うんだよねー」
カッコつけて言ったけど、ニートな聖女って「いい聖女」なの!?
ミコトもロイも、呆然とする。
(そういうことか……。わかったよ。それで地球の神と交渉してみるとするよ)
いや、全然わからないから!!
ミコトはひたすら首を捻っているロイの横で立ち上がる。
「あの、結局どういうことですか!?」
するとセイラがミコトの隣に来てニヤリと笑う。
「ミコちゃん、これで上手くいくかもしれないんだよ? ミコちゃんのパパとママにちゃんと伝えられるし、ミコちゃんも罪悪感で泣かなくてもよくなるよ? ミコちゃんたちは、セタお兄ちゃんのことだけ頑張ってこればいいんだよ」
「え、でも……」
(そういうこと。じゃあ地上にもどすよー)
ミコトが「待って」と言ったか言わないか、それくらいの時間で、周りの景色が見慣れた教会になる。
『ええーっ!?』
ミコトとロイは大声を上げる。
「うっわ、びっくりした!」
教会でゼノマと話していたリントも思わず大声を上げる。
「あら、戻ってきた、でいいのよね?」
マリーはニッコリと微笑む。
「うん! たっだいまー!」
セイラは元気にマリーに駆け寄る。
ミコトとロイは、呆然と辺りを見回す。
「3人は何の話してんの?」
セイラはゼノマとリントとマリーの顔を見る。
「結婚式をここでやれないかって話よ。ちょっと急だから……」
マリーの「結婚式」という言葉に、ミコトは瞬時に我に返った。
ロイから離れて、マリーの方へ駆け寄る。
「私、マリーにドレスを送るよ! 明日早速ウミノさんとネルさんに……」
「お前! しゃしゃり出てくるなよ!」
「仕方ないからリントのもついでに頼んであげるよ!」
「仕方ない……!? ロイさん! ミコトを何とかしてくださいよ!」
ロイは、ミコトとリントの言い合いを聞きながら、ふっと笑った。
神様との話は、不明点が残り、正直言って不完全燃焼といったところだが、ミコトが傷ついて泣かないのなら、それでいい。
それにミコトは、はっきりと「いなくならない! 私はずっとロイの側にいる! 私は地球には帰らない!」と言ったのだ。
あの言葉がどんなに嬉しかったか、ミコトには分からないだろう。
「ちょっと、ロイさん!」
リントの叫びに、「俺も何かお祝いするよ」とロイは笑顔で答えたのだった。




