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異世界恋護奇譚 〜聖女のオマケでバグ転移した私、15歳で天然最強騎士団長と偽装結婚しました〜  作者: 三多来定


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206/242

206.「アリアンの記録」読破

 第2エラルダ国から帰国して1週間が経っていた。


 ロイは相変わらず忙しく、会議だ尋問だ闇組織残党狩りだと各地を走り回っている。


 ミコトはというと、「アリアンの記録」を読み終わらせるために、半日騎士団で勤務して、あとは聖女の部屋でひたすら読書という日々を送っていた。


 ミコトへの治癒能力の依頼は一切無く、ミコト自身も治癒能力の存在を忘れかけていた。





「読み終わったー!!」

 夕方の赤い光が差し込む聖女の部屋で、ミコトは「アリアンの記録」を閉じて、大きく伸びをした。


「あら、お疲れ様」

 向かい側に座っていたマリーは書き物の手を止めて、ミコトに微笑む。


「よくそんな本全部読めるねー。アイツの先祖のダラダラした自伝でしょ?」


 セイラの身も蓋もない言い方に、ミコトは吹き出す。


「た、確かにそういう人もいて、読むの遅くなっちゃったんだよね。私が書く時は、なるべく短く書こうかなー」


「ミコトが書くものなの?」

 マリーは首を傾げる。


「うん。ロイが書けるわけないじゃん」


 当然のように言うミコトに、セイラとマリーは顔を見合わせて小声で呟く。


「熟年夫婦のようになってきたわね」

「熟年離婚もありうるねー」


「あのさ、セイラ、本当に一緒に神様のところに来てくれるの?」

 ミコトは真面目な顔つきでセイラを見る。


 セイラはテーブルのところへ来て、ミコトの隣に腰掛けた。


「アイツとミコちゃんだけじゃ心配だし、まあ、約束したしね」


 セイラの言葉に、ミコトはホッとしていた。

 セイラとロイは、神様に近い存在なのだ。

 ミコトだけより断然心強い。


「今日の夜のお祈りの時に神様にきいてみるよ。ていうか、もう手っ取り早く、一緒に教会に来る?」

「そうだね、その方が……。ロイにも言っておくよ」


 セイラの提案に、ミコトは頷いて目を閉じた。


 (アリアンの本を読み終わったから、セイラの今日の夜のお祈りの時に一緒に教会に行きませんか? 忙しかったら無視でいいです)


 これで本当に伝わっているのか、といつも思う。

 電話みたいに、ロイの声も聞こえればいいのに。


「ミコトはロイの声は聞こえないのでしょう? 便利だけどちょっと不便ね」

 マリーは微笑む。


「これ、あくまで緊急用なんだと思う。雑談用じゃないんだよ」

 ミコトはアハハと笑う。


「闇組織の残党狩りもロイ一人でやっているのでしょう? 終わりそうなの?」

 マリーは席を立って、お茶を入れる準備をする。


「うん。闇組織は手練が多いから、ロイが捕まえた残党を尋問して情報を引き出して、また出かけるってのを繰り返していて……。それであとは、準メンバーだけらしくて、それは騎士団員でやれるみたい。あ、セイラに感謝してたよ。力の使い方が上手くなってきたって……」


「あっそ! 感謝はお菓子で返せって言っといて!」

 セイラはテーブルに頬杖をつく。


 お茶を持ってきたマリーが、4人分のカップをテーブルに置く。


「4つ? 3人でしょ? 1階のタリスさんも呼ぶの?」


 タリスはミコトの護衛として、ロイが迎えに来るまで毎日勤務してくれているのだ。

 ちなみに、セイラとマリーを怖がっているので、2階に来る事はない。


「タリスさんは呼んでも来ないでしょ? でもロイは、ミコトの声が聞こえたら用事がなんでも来るんじゃないかしら……」


 マリーが言い終わるか終わらないかで、階下からドタドタという音が聞こえてきた。

 直後、ドアがノックされる。


 マリーは確かめもせず「どうぞ」と言う。

 

「ミコト!」


 ドアが開いたと同時に、ロイはミコトを抱きしめる。

 いつものように、ロイの力が強くてミコトは「うぐっ」と唸る。


「声が聞こえて、嬉しくて来ちゃったよ! もっとさ、たくさん話しかけてもいいよ!」


 一方通行なのに、何を話しかけろというのだろう。


「ちょ、ロイ先輩! こっちに声かけてよ!」

 タリスが呆れたように入り口付近から声をかける。


「あ、ごめん。タリスは今日はもういいよ。たまにはウミノさんのところへ行ってあげなよ」

 ロイはミコトを抱きしめたまま、顔だけタリスの方へ向ける。


 ウミノとネルは、特別な依頼がない時は、第1の首都のヘアメイクサロンで働いている。

 第4のユーリのお店と同じで、服飾も取り扱っているお店だ。


「な、何言って……」

「あら、じゃあ、タリスさんも一緒にお茶しましょうか?」


 マリーがニッコリ微笑むと、タリスは真っ赤になり「おつかれっした!」と言って階下へ下りて行った。


「タリー君は素直だねぇ……」

 セイラはマリーの隣に席を移動しながら呟く。


 ロイは苦笑すると、ミコトを膝に乗せて座り直した。

 膝上抱っこでは、セイラが移動した意味がない! とミコトは赤面する。


「ロイ、お祖父様はどうかしら……」

 マリーも席に座り、真面目な表情でロイを見る。


 最近では、ロイがミコトを膝に乗せていても、誰も何もつっこまなくなっている。


「うん。政務官の一人が名代制度で仕事をやってくれてるよ。でも、その人も代表になるのは無理だって言っていて、アレンさんを休ませるための一時しのぎって感じなんだけど……」


「そう……」

 マリーはとりあえずホッとする。


「あ、リントも後から来るって言ってたよ」

 ロイはお茶のカップをミコトに渡しながら言う。


「リントも心配性なんだから……。それならみんなで教会に行こうかしらね」


 マリーの提案に、ミコトとセイラは「そうしよう!」と嬉しそうだ。


「神様と話す時に、ミコトは俺の力がいるんだよね?」

 ロイは、お茶を飲み終えたミコトのカップを受け取りテーブルに置く。


 確かに、ミコトには力がないから普段は話せないと、神様はそう言っていた。

 しかし、この流れは……。

 いや、時間もないし、そもそもセイラの前でイチャイチャなんか……。


 ミコトがセイラをチラリと見ると、セイラはハァーと溜息をついた。


「ま、その通りだし、しれっとやってきていいよー」

「しれっとやるって何!? セイラ!?」


 セイラの言葉に、ミコトがつっこむと同時に、ミコトを抱えたロイは席を立った。


「じゃ、7時に教会で」

「え、ホントに!?」


 ロイは困惑するミコトを抱きかかえて、軽い足どりで聖女の部屋を後にしたのだった。

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