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異世界恋護奇譚 〜聖女のオマケでバグ転移した私、15歳で天然最強騎士団長と偽装結婚しました〜  作者: 三多来定


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204/242

204.マリーの心配

 ミコトが目を覚ますと、そこは見慣れた聖女の部屋のベッドの上だった。


 また浦島太郎状態だよ、とミコトはベッドの上の天蓋を見つめながら思う。

 今回は場所まで移動していて、第2にいたのに、第1にいるのだ。


 周囲は明るい。

 一体どれくらい寝ていたのだろう。


 ミコトが体を起こすと、ソファで縫い物をしていたマリーと目が合った。


「ミコト、起きたのね」

 マリーは縫い物をソファに置くと、ミコトの方へ駆け寄る。


「うん……。私、今度はどのくらい寝てたの?」

「今、ソマイさんの治療をした翌日の午前9時よ。ミレイさんの時より短いわ」

 マリーは微笑む。


 ミコトは、なるほど、と納得していた。

 セイラはちょうど朝のお祈りの時間で不在ということだ。


「ソマイさんって、治ったのかな……」

「セイラが治ったって言ってたわよ」


 ミコトは「良かった……」と息を吐く。

 

「こっちに帰って来たのは、昨日の18時くらいだったわ。ロイもリントもそこから騎士団に直行よ。今日は朝から政務棟で立て続けに会議らしいわ」


 マリーはミコトが寝ている間の出来事を簡潔に話す。


「立て続けに会議……。リオさんのことかな……」

 ミコトは呟いて下を向いた。


「そうね。あともう一つはミコトの治癒能力を国で管理するそうよ。だから、その法律を急いで作るらしいわ」


 マリーの言葉に、ミコトは「ええっ!?」と声を上げる。

 国で管理って、どこかに幽閉されて、ひたすら病人を治し続けるとか?

 

 ミコトの表情が曇ったのを見て、マリーはふふっと笑う。


「この治癒能力は、ミコトの負担が大きいわ。使い続けるほど、ミコトは寝て過ごす事になるでしょう? それをさせないために、ミコトに直接交渉がいかないようにするそうよ。宣伝もしないし、患者も精査するって言ってたわ」


「あ、そういう意味ね。患者の精査……か。急病人の場合はどうするんだろう?」


 マリーはミコトの目を見つめた。


「ミコト、全員を救うことは出来ないし、やる必要もないし、それを気に病むことは絶対にしなくていいのよ」


「……うん」


「どちらかというと、私はミコトがずっと眠っていてお話できない方が嫌だわ」


「マリー……」


 ミコトは涙目になり、マリーに抱きつこうとして、踏みとどまった。

 赤ちゃんがお腹にいるのだ。

 ミコトの馬鹿力でタックルしてはいけない。


「マリー、体調はどう? ほら、妊娠すると吐いたりするでしょ?」

 ミコトはにわか知識でマリーを気遣う。


「まだそういう時期でもないのよ。本来ならこんな初期に妊娠が判明したりしないわ。セイラはそういうの分かるらしくてね」

 マリーはウフフと笑う。


 セイラは準神様だしね、とミコトは頷く。


 マリーがふと、表情を曇らせたのを見て、ミコトはハッとなる。


「何か心配事があったら、協力するよ! ほら、私も侍女の仕事手伝うし、セイラだってワガママ言わないよ!」


 ミコトの言葉に、マリーは微笑む。


「ありがとう。でもその辺りは何故かロイの指示で手配してくれるそうよ。侍女の増員と出産後の私の勤務までね」


「え、意外……。でもそれなら……」


「ちょっとね、お祖父様が心配なのよ。前にリオも言ってたけど、代表の仕事って特に何もなくても激務なのよ。今回いろいろありすぎて、さすがにフラフラしてたから……」


 そのいろいろは、ほぼミコトのせいなのでは……?

 ミコトはさすがにバツが悪くて下を向く。

 マリーは察したのかふふっと笑う。


「ミコトのせいじゃないわよ。でも次の代表を決めるにしても、ロイとミコトの事情をきちんと理解している人じゃないと出来ないでしょ?」


「……もしかして、マリー、代表やりたかった?」


 ミコトが尋ねると、マリーは「そんな器じゃないわ」と自嘲的に笑う。


「でも、名代制度を使って助けられるかもって思っていたところはあるの。付き合いだけの外交の席に笑顔で出席するくらいは出来るって……」


「うん、マリーがいるだけで外交が成立するよね!」

 ミコトは大きく頷く。


「まあ、そんな一時凌ぎより、次の代表を決めた方がいいのだけどね……」


 ミコトはアレンが代表でなくなることを、少し嫌だなと感じていた。

 アレンはロイのこともミコトのことも大切に思ってくれている。

 ミコトがオマケ転移して何とかやってこれたのは、アレンのおかげでもあるのだ。

 

 ミコトの表情を見て、マリーは微笑む。


「ミコトはお腹に何か入れた方がいいわね。パン粥でもつくるわ」


 マリーがベッド脇から立ち上がる。

 ミコトはマリーの服を掴んでそれを止めた。


「パン粥くらいなら私でも作れるよ! マリーは休んでいて!」

「え、でも、作り方……」

「パンにミルクをかければ出来上がりでしょ?」

「……うん。やっぱり私がつくるわ」


 部屋を出ていくマリーを見て、これは、料理から逃げている場合ではない!? とミコトは今までにない危機感を感じるのだった。

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