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異世界恋護奇譚 〜聖女のオマケでバグ転移した私、15歳で天然最強騎士団長と偽装結婚しました〜  作者: 三多来定


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203/242

203.ミレイとの別れ

 ロイが第2エラルダ国のミレイの家を訪ねると、ミレイの大きな声が聞こえてきた。


「だから、自分でやれるってば! アサキさんは手を出さないで!」

「ああ、ミレイさん、元気になって本当に良かったです。でも何でしょう、この寂しさは……」


「あのー、今いいですか?」

 ロイは遠慮がちにドアの隙間から声をかける。


「お兄ちゃん!」

「ロイさん、もちろんいいですよ」


 アサキはドアを開けにくる。

 どうやら昼食中のようだ。

 メニューはおそらくアサキが作ったのであろうチーズのパングラタンだ。


「ミレイ、母さんに声がそっくりで驚いたよ」

 ロイは笑顔でミレイに話しかける。


「声じゃなくて、顔が似て欲しかったわ!」

 ミレイはムスッとする。


「なんか、機嫌悪い?」

 ロイはミレイとアサキを見比べる。


「機嫌も悪くなるわよ。お兄ちゃんからもアサキさんに言って! 何でもかんでも手伝おうとして、これじゃあ自立出来ないじゃない!」


「つい、今までの癖で食べさせようとしたら怒らせてしまい……」


 ミレイの言葉に、アサキは苦笑する。


「ああ、食べさせるの、いいですよね。あの、口をぱくっとさせる感じが……」

 ロイはミコトに第4の会食で食事を食べさせた時の事を思い出していた。


「お、ロイさんは話がわかりますね! そうなんですよ、口から少しこぼれるのもまた……」

「分かります! 俺は恥ずかしそうに口を開けるのが……」


 アサキとロイが盛り上がるのを、ミレイがゴミを見るかのような目で見ているのに気付き、2人は黙る。


「……ミコトさんはっ!?」

 さらに機嫌の悪くなったミレイがロイを睨む。


「ほら、ソマイ……さんの治療をしたから眠っていて……、そうそう、俺たちもう第1に帰ろうと思って、それを言いにきたんだよ」


 ロイの帰る宣言に、ミレイとアサキは『ええっ!』と声を上げる。


「寂しくなりますね。せっかくのご兄妹の再会でしたのに……」

 

 そう言ってアサキはミレイを見るが、ミレイは下を向いて黙っている。

 ロイもミレイをチラリと見てから「あの……」と言う。


「アサキさんたちは、これからどうするんですか? 良かったら第1に一緒に……」

「いえ、ミレイさんとも話し合ったのですが、私たちは第2に残ろうと思っています。もちろんここではなく、町中で暮らす事になりますが……」


 それは、なんとなく分かっていた。

 ミレイとリオの間には、家族の信頼関係があるからだ。

 病気の自分の面倒をみた父親を、見捨てたりはしないだろう。


「そうですか。でも、何かあったら、いや、なくても、頼って欲しいんです。ミコトもそう望んでいます」


 ロイはもう一度ミレイを見る。

 ミレイは視線に気付いたのか、顔を上げる。


「お兄ちゃんも、ミコトさんも、パパのこと恨んでないの? 嫌な事を言ったり、殺す算段を立てたりしたのよ?」


 ミレイの瞳は少し濡れている。

 ロイは「あー」と苦笑する。


「本音を言うと、俺はちょっと恨んでるよ。8歳の時死にかけたし、ミコトは殺されそうだったしね。でもミコトはさ、何故か全然恨んでないんだよね……」


「……そう」


 しばらく沈黙が続く。


「……ミレイさん」

 アサキが沈黙を破る。


「お兄ちゃんに、帰ってしまうと寂しいって言ってもいいんですよ?」

「なっ……!? 別に寂しくなんかない! お兄ちゃんの感覚がないって言ったでしょ!?」

 ミレイは真っ赤になって叫ぶ。

 

「俺は寂しいけどなぁ……。昔は俺の後をついてきてくれたのに……」

「全然ついていけなかったわよ!」


 ミレイは叫んで、ハッとした表情になる。


「やっぱり覚えてた……。俺と違って記憶力良さそうだもんね」

 ロイはミレイの座っているダイニングの正面の椅子に腰をおろす。

 

 ミレイはふいっと横を向く。


「本当にあまり覚えていないのよ。ママは優しかったなとか、お兄ちゃんの背中を追いかけてたな、くらいで……」

「うん。それでも、ありがとう、覚えていてくれて……」


 ロイの思い出した記憶の中のミレイが、ちゃんとここにいる。

 それだけで、欠けていたものが埋まるような、そんな気が、ロイはしていた。


 ロイは立ち上がると、アサキに向き直った。


「アサキさん、妹のこと、よろしくお願いします」


「もちろんです。結婚式にはお呼びしますね」


「けっこんしき!?」

 ミレイが大きな声を出す。


「ええ。ミレイさんが歩けるようになったらすぐに執り行いましょう。そうだ、お姉ちゃんは聖女のような存在ですので、誓いの言葉を読み上げてもらいましょう」


 スラスラ予定を話すアサキに、ミレイは口をパクパクさせている。


「ミコト、そういうのやりたがらないと思うけど……」

 ロイは、そんな大役やれないよ! と騒ぐミコトを想像する。


「もちろんタダとは言いませんよ。チーズケーキとアップルパイとぶどうのパウンドケーキを作りましょう」

 アサキは3種類のケーキの名前を羅列する。


「あー、やりそう……」

「どんだけ食いしん坊なのよ!?」


 ミレイの言葉に、ロイとアサキは思わず吹き出してしまっていた。

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