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異世界恋護奇譚 〜聖女のオマケでバグ転移した私、15歳で天然最強騎士団長と偽装結婚しました〜  作者: 三多来定


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201/242

201.ソマイの治療

 第2エラルダ国の国立宿泊所のセイラとマリーの部屋を出たロイとリントは、宿泊所1階の休憩スペースのソファに腰掛けていた。


 ロイの部屋ではミコトが寝ているし、リントはコランと同室だからだ。


「リント、嬉しくないの……?」


 今日何度目かの溜息をつくリントに、ロイは言う。

 リントは苦笑する。


「いえ、嬉しいは嬉しくて……。その事はマリーにも伝えてます。でも、マリーとの約束を違えてしまったので、そこが……」

「約束?」


 ロイが尋ねると、リントは「はい」と言った。


「マリーは聖女の侍女をやりきりたいんです。なので結婚は5年後と約束していたんです。なのに……」


 リントの言葉に、ロイは首を傾げる。


「別に結婚していても、赤ちゃんがいても、聖女の侍女をやればいいんじゃないの?」


「……え?」


「そりゃ、出産前後は休まないといけないけど、聖女の部屋に赤ちゃんがいたら、聖女もミコトも喜ぶでしょ。夜間は別の侍女でもいいし……」


「え、いや、でも仕事なのに……」


 リントが困惑しているので、ロイは真面目な表情をした。


「俺の母さんさ、一人きりで子育てしていて、ちょっと大変そうだったんだよ。山奥で誰にも頼らずに……。記憶を失くしている時に、母さんは心労で亡くなったと聞いて、俺は妙に納得していたんだ。大変だったからなって……」


「ロイさん……」


「だからさ、リントも仕事があってずっとマリーと赤ちゃんと一緒にはいられないし、マリーが一番(らく)で楽しい方法でいいんじゃないかな?」


 ロイがヘラッと笑うと、リントはハァーと息を吐いた。


「そうですね……。ロイさんって、時々ちゃんとしたこと言うんですね……」

「時々って……」


 ロイがリントを見ると、リントは微笑んでいる。


「ありがとうございます」

「うん。一応、上司だからね」


 ロイは自分で言った「一応上司」に見合う仕事をしなくちゃな、と思っていた。






 マリー妊娠発覚の翌日の午前10時。

 第2の国立宿泊所のロイとミコトの部屋には、昨日約束したソマイの女性を惚れさせてしまう能力の治療をやるために、ソマイとカーサが訪れていた。


 判定人として、セイラも室内にいる。


 昨日まではセイラがソマイの力を抑えていたが、治療の効果が分かりにくくなるため、今日は抑えていない。


 そのため、マリーやミレイは同席していない。

 もっとも、ミレイはソマイと関わったことがないので、特に思うこともないのだが。


 つまり、部屋には、ミコトとロイとセイラ、ソマイとカーサの5人のみなのだ。

 リオも政務の後処理に追われているため不在である。


「ミコトさん、なにか、嬉しそうですね?」

 ソマイはミコトの顔を見て、微笑む。


「えっ! そうですか? ちょっといい知らせがあったもので……」

 ミコトはエヘヘと笑う。


 そう、ミコトは朝食の席で、マリーから赤ちゃんが出来たと知らされたのだ。

 セイラの聖女パワー? で判明したというこの知らせに、自身の妊娠計画まであることを知らないミコトは、呑気に全力で喜んでいるのだ。


 そんな様子のミコトを見て、ロイは、聖女の計画はとても言えない、と溜息をつく。


 ふと見ると、セイラがロイに向かって口をパクパクとさせている。

 その口は、「しれっとやれ!」と動いていて、ロイはガックリと肩を落とす。


「聖女様もわざわざ申し訳ありません」

 ソマイはセイラを見て頭を下げる。


 セイラはハッとなり、ソマイとカーサに向き直り、聖女スマイルをつくる。


「治療が終わりましたら、ソマイちゃんの力が出ているか治っているか見させていただきますね。ちなみに今はバンバン出ちゃってます」


「バンバン……」

 ポカンとした表情でカーサは呟く。


 ソマイは本来の聖女を知っているので、笑顔を崩さず「よろしくお願いします」と言っている。


「それでは治療を始めますね」

 ミコトは笑顔でソマイの右手をとる。


 ソマイの手はかなり大きい。

 そういえば、腕相撲の話があったなぁとミコトは懐かしく思い、ふふっと笑う。


 ロイの手がミコトの両肩に置かれる。

 その手に力が入っているのに気付いて、ミコトはハッとなる。

 ロイに変な誤解をさせてはいけない!


 ミコトは目をつむり、まずはロイやミレイにやった疲労回復の要領で力をソマイの全身に送る。

 ソマイはロイより一回り大きいので、それだけでかなり力を使う。

 あとは、ミレイにやったように、全部を治すイメージで……。


 ああ、そういえば、お礼を言ってなかった。

 マリーのことで浮かれていて、またもや忘れていた。

 倒れてしまったら言えないし、今言っておこう。


「ソマイさん、あの時助けてくれて、ありがとうございました……」

 ミコトは言いながら、意識が遠のくのを感じていた。


 ミコトの手がソマイから離れて、完全に気を失う。

 ソマイは、今の今まで、ミコトが触れていた自分の手を見つめる。


「……ソマイちゃん、治ってるよ」

 セイラはぼんやりしているソマイに声をかける。


 ソマイは顔を上げる。

 ロイに抱えられ、ベッドに寝かされているミコトが視界に入る。


「ソマイちゃん、今日から女の子といっぱい喋れるよ。だからさ、泣かないでよ……」


 セイラの言葉に、ソマイは自分の頬を触る。

 頬が濡れている……。

 

「……そうですね。生まれ変わったと思って、精進します……」


 ソマイはそう呟くと、ロイとセイラに深々と頭を下げてから、カーサと部屋を出て行った。


 セイラもロイと口をきくこともなく、さっさと部屋から出ていく。


 ロイは、ソマイのミコトを思う気持ちが痛いほど分かり、ミコトが寝ているベッドに腰掛け、深い溜息をついた……。

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