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異世界恋護奇譚 〜聖女のオマケでバグ転移した私、15歳で天然最強騎士団長と偽装結婚しました〜  作者: 三多来定


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199.気乗りしない日もあるよね

 第2エラルダ国のミレイの家で、ロイの先祖は準神様だという衝撃の事実を、ミコトとロイとカーサとミレイとアサキはリオから聞いていた。


「え、本当にご存知なかったのですか? 国家特別人物同士で集まっても、セタさんとロイさんは別格扱いでしたよね」


 リオの言葉にロイは気まずそうに「強いからだと思ってました……」と言う。


「そもそも、その強さをおかしいと思わなかったのですか?」

「えーと、遺伝かなーって……」


 ミコトはリオとロイの不毛な会話を隣で聞きながら、妙に納得してしまっていた。

 だって、ロイの力はあまりにも規格外すぎるからだ。


「遺伝だとしても疑問に思いませんでしたか? 強さが桁外れなんですよ?」

「そ、そこまでは、考えたこともなくて……」


 リオは本当に頭の良い人なのだろう。

 読んだ蔵書の項目まで覚えているくらいなのだ。

 

 ちょっとロイが可哀想になってきたミコトは、「あの!」と手を挙げた。


「聖女様も準神様ってことですか?」


 リオはロイを問い詰めるのをやめてミコトを見る。


「ええ。でも、300年前の聖女様は、古代魔法の力を与えられた5人に殺されています。これは想像ですが、今の異世界から10年毎に召喚される聖女様は、亡くなられた聖女様の力を与えられている依代のような存在だと思うのです。もちろん、依代であっても特別な存在には変わりありませんが……」


「そ、そうなんですね」


 なんか、大体あっているような……?

 この世界のセイラは魂だけで、あの体は入れ物なのだから。


「じゃあパパは、お兄ちゃんを殺そうとしたということは、神殺しをしようとしたってことなの?」

 ミレイが、全員が言いにくいことをズバッと言う。

 

 リオは慌てて「いやいや!」と言う。


「セタさんやロイさんは、あくまで子孫であって、人間扱いなんだよ。神とも決別しているんだ」


 あ、それは神様が言っていたかも……。

 話しかけない約束をしてるって。


「だからって、そこまで知っていて、なんで人間扱いしてお兄ちゃんを殺そうと思うのよ! パパは一周回っておバカよ!」


 ミレイはベッドの上で叫ぶ。

 リオはミレイを凝視して、肩を落とした。


「ああ、本当に……、本当にそうだ……。何故レイの息子を殺そうと思ったんだ……」


 ミレイの部屋が再びしんと静まり返る。

 

 カーサはリオの肩に手を置いてさすっている。

 ミレイは唇を噛み締めている。


 ロイは静かに立ち上がった。


「あの、俺たちは失礼しますね。ソマイさんの治療は明日の午前10時に俺たちの部屋にきていただければ……」


 ミコトも慌てて立ち上がり、ペコリと頭を下げた。

 ロイはミコトをひょいと抱き上げると、ミレイの家から出て行く。


 ミコトは、歩けるのに……と思っていたが、特に何も言わず、抱っこされていた。

 

 辺りはすでに暗くなっており、ロイの表情はよく見えなかった……。






 第2の国立宿泊所のミコトとロイの部屋に入ると、ロイはミコトを抱きかかえたまま、ソファに腰を下ろした。


 何を言ったらいいのか分からず、ミコトはロイの横顔を見る。


「ミコトは、俺のこと、怖くない?」

 ロイはポツリと呟く。


「怖くないよ」

 ミコトはロイの横顔を見つめたまま言う。


「ソマイの治療が終わって第1に帰ったら、聖女も一緒に神様のところへ行こうか」

 ロイは前を見たまま、淡々と言う。

 

 そうだ。

 神様のところへ一緒に行くって話してたんだ。

 セタの件もある……。


「なんか、いろいろありすぎて、後回しになってたね」

 ミコトはエヘヘと笑う。


 でもロイは笑わない。


 そうだよね。

 自分の母親のことや、リオのこと、心の中で整理出来るわけないよね……。


 普通なら、こういう時、そっとしておいてあげるのが、夫婦なのかもしれない。


 でも、ロイはミコトを抱きかかえている。

 ミコトは今、ロイに必要とされているのだ。


「ロイ、ソマイさんの治療に必要なことは何だと思う?」


 ミコトの言葉に、ロイはゆっくりミコトの方を見る。

 ミコトはニッコリ笑う。


「答えは、イチャイチャでしたー! ロイの力が空っぽなので、このままでは治療が出来ないのです!」


 ロイはふっと笑う。


「なんとロイは、疲れていても、気乗りしなくても、私とイチャイチャしなくちゃいけないのです!」


 自分で言っておいてなんだが、気乗りしない時にイチャイチャなんて嫌だろうな、とミコトは目を逸らす。


「で、でも、お話するだけでも力は入るし、添い寝も有効だし、本当はロイのことを考えるだけでも、まあ、入るから、無理しなくていいんだけど……」


 だんだん自信がなくなり、ミコトはしどろもどろになる。


「考えるだけで入るのは初耳だな……」

 ロイはミコトの頬を触る。


「うん……。この間ね、ロイのことを思って胸がきゅーって苦しくて、その時に入ってるなぁって……。もちろん、ロイが近くにいないとダメなんだけど……」

 

 これはロイに教えたくはなかったが、ロイにも気乗りしない日はあるのだ。

 仕方がない、とミコトは頷く。


「もう、イチャイチャしないと力が入らないことにしようよ」

 ロイはミコトの目を真っ直ぐ見つめる。


「えー? 気乗りしない日はどうするの?」

 ミコトは少し目を逸らす。


「俺、気乗りしない日なんてないよ」

「え? だって今日は……」

「俺、ミコトとずっとくっついていたいんだよ。アリアンの特性? かもしれないね」


 アリアンの特性と言われると、確かにそうなのかもしれない。

 

「そっか。良かった。気乗りしないって言われて一人で寝るのも寂しいなって……」

「むしろ、寝かせてあげられないかも……」


 ロイはそう言うと、ミコトを抱えたまま立ち上がり、お風呂場に行く。

 湯船から、湯気が出ている?

 なんと、お風呂が沸いている!?


「ネルさんに沸かしておいてって頼んでおいたんだよ」

 ロイはニッコリ笑う。


「ええっ!?」

「だって、ミコトの侍女なんでしょ? ほら、夜着もあるよ。おお、これは、結構大胆な……」


 え!? 準備万端!?


「ミコトから誘ってくれて嬉しかったなー」


 どういうことー!?

 ソマイの治療の件があろうがなかろうが、リオの話が何だろうが、もう、イチャイチャすることは決定してたの!?


 ロイの、あの、物憂げな表情は何だったのー!!


 ミコトは再び心の中で、ぎゃー! と叫んでいた。

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