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92 チュム師の選択

魔核を取り込む候補が、いつものように選出されていた。

今回、俺たちが採ってきた魔素が詰まった魔核の数は、今までになく多かった。そのため、前もって選出されていた者達はすべて摂取できた。

その上で魔核が少し残ってしまった。


「コウタロウ。お前のように複数の魔核を摂取すれば、魔法兵たちの力が増すのではないのか?」


確かに、俺の異能は群を抜いているように見えるだろう。

チュム師が、その力を持った兵士を欲しがるのも分かる。

だが、俺には不安に思っていることがあった。

それを今ここで告げるべきか、迷う。

俺の場合は特殊だ。摂取した年齢。複数の魔核を取り入れたこと。

何も知らないで、腹が減って飲んだ幼い日。

そして偶然見つけたとき。

その後もまったく知識などなく飲んでしまったのだ。


だが、俺は黒い玉と同調した。

これは、取り込まれているということではないか、と今は悩んでいる。

亡霊になった魔物は知識や記憶の残滓――魔物に触れた俺は、そう感じ取ってしまった。今の俺は、自分が一体何なのか判断できない。

魔法世界エルタゴスでは、希少な魔核は、二つ以上取ることなど考えられなかった。そのせいで、俺のような例は存在せず、魔核の研究はほとんど進んでいない。

結局のところ、俺の考えは予測でしかない。


「迷っているな。どうした、コウタロウ」

「……チュム師。俺は自分が人間だと思っています……」

「なにを、当然であろう。始め、お前を魔物の擬態だと勘違いしていたことを言っているのか?」


俺は自分の予想を話す決心をした。


「俺は最後に飲んだ魔核、あれも魔素が詰まった出来たてのものだった。だけど何も効果が感じられなかったんです。そ――」


「ああ、あの時のことか。私はお前の異能が変わったと感じた瞬間だな。お前は忘れているかもしれないが、お前が叫んだ瞬間、コップが割れた事がある。”共鳴”、では無いかと思ったよ」


「……あの時のことか……、てっきりチュム師が年を取って手が滑ったんだと……ヤベッ」

「……まあ、いい。お前から見れば、確かに年はいっている。私は、手も触れていなかったのだ。以前、高音の歌い手が似たような芸を披露したのを見たことがあったのでな。そう確信できた」


俺は黒い玉に入っていくときの心境をチュム師に話し、そして魔物に関しての俺なりの考えも同時に話した。


「そうか、そういうことならお前の心配も、杞憂ではないな……よし、ではこうしよう。年齢を二つ下げて一般の雑兵に飲ませてみよう。このままでは魔核が勿体ないのでな」


年齢を下げる……十二歳から十三歳くらいの少年に飲ませる。それならギリギリ、いいかもしれない。

魔素が詰まった魔核は効果が高いことが知られている。

今では魔法兵が五十名に増えたが、その中の半分は魔素が詰まった魔核を飲んだせいで力が高い。

少しだけ年齢を下げた魔法兵は、魔素が馴染んで力を発揮することだろう。


新兵に取り立てられて間もない少年たち三人が呼ばれてきた。

彼らはいずれも体格がよかった。

俺は彼らの自我がしっかりしているかどうか、事細かく聞き出し、数日間一緒に過ごしてみた。


「うん、大丈夫そうだ」


彼らは、魔法兵になれると喜んだ。

俺は七歳の時、魔核の卵を飲んだ。だけど俺は転生者だった。自我は出来ていたと思っている。

それでも、目の前の少年たちの方がよもどしっかりしている。

この世界の子供たちは早くから独立する。

だから自立心がつくんだと分かった。

彼らはすぐには魔素に馴染めないだろう。


身体の成長と共に大きく変わっていくはずだ。俺の経験がそう語っている。

だから鍛えるのもゆっくりでいい。長い目で見ていこう。

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