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87 新しいサンクチュアル

俺は呆気にとられ遺跡を歩き回る。あの小さく固まった石のような穴はどこにも見当たらない。元、穴があった場所には大きな門が聳えている。

「俺が出てきたのは……ヌアタラなのか?」

門をまじまじと見上げ「そういうことか……」と力なく呟く。


穴はダンジョンに変化して、エルタゴスと繋がった。

だが、多分俺しか通り抜けられないのではないだろうか?

サンクチュアルにある黒い穴の中に入れるのは、俺だけだろう。

ベリーダなら、入る事は出来るかもしれない。

しかし以前ベルーダから「修復が終わるといつの間にか、押し出されて外に放りだされる」と聞いたことがある。

俺でも足を踏ん張ってやっと通れたのだ。非力な人には難しいだろう。


「でも、これって良いことではないのか。魔物を外へ出さないサンクチュアルのようなものが出来た。そういうことだろう」



しばらく考え込んでいたが、こうしてはいられなかったんだと気が付き、急いで遺跡から出た。


「父ちゃんやチュム師は、生きているだろうか。一体何年経った?」


遺跡の前には以前と同じように堀があり、逆茂木も設置されたままだった。その先には、くさびのような塀が点々と交互に続いていた。

俺は途中から駆け足になり砦を目指した。

砦には数人の兵士が見廻りをしていたが、その中に見知った顔はなかった。

俺の心臓がドクドクと音を立てる。


「何十年も経ってしまったのでは……」


後ろからラヌビスが必死に走ってついてくる。

俺は砦の門番に声を掛けた――叫んでいたかもしれない。


「ちゅ、チュム師は! チュム師はご健在か」

門番は怪訝な顔で答えた。

「チュム師? もしかして御領主さまのことかな」

そうだった、領主だった。つい以前の階級を叫んでいた。

「ソク・タラ様は――御領主様は元気でいるのか?」


門番の兵士は槍を斜めに抱え直し、俺を威嚇しながら答えた。


「当たり前だ! お前、天祖国の間者か!」

「違います。俺はコウタロウって言います。以前、チュ……御領主様の伝令をしていました。心配していると思います。俺が戻った事を伝えてくれませんか?」

「本当か? そこで待っていろ。確認してくる」


俺は門から少し離れ、傍にいたラヌビスをしゃがんで撫でた。

水を魔法で出してラヌビスに飲ませていると、砦の方から走ってくる者がいた。

パヤン先輩だ! よかった、先輩は前と変わらない。


「コウタロウ! よかった、よく戻った。今御領主様は砦にはいないんだ。領都の屋敷におられる。さあ、一緒に行こう」


俺はその場にへたり込みそうになるのを堪え、馬に乗ったパヤン先輩の後に続いた。

ラヌビスは背負うことにする。一刻も早くチュム師の元へ行きたかったからだ。


走りながら周りを見まわす。まったく変化が感じられない。

一体何年経った? それほど変わらないということは、どういうことだ。

サンクチュアルの変化に伴い、時間軸のズレがまた大きく揺らいだ。

もしかして、同じ時間軸になれたのか。エルタゴスとヌアタラの時間が変わらないのなら、これからは気軽に行き来できるのではないか。


チュム師の屋敷にはその日の夕方に着いた。

俺はパヤン先輩を追い越し、ここまで走って来た。

数時間しか、かからなかっただろう。

馬で走れば半日の距離だが、今の俺にはまったく気にならない距離だ。

門番に名前を告げると、しばらくしてチュム師が走り降りてきた。


「コウタロウ! そうか戻ったか。よし、執務室へこい。話がある。」


以前と変わらぬチュム師を見て泣きそうになる。

この分なら、父ちゃんもまだ元気に違いない。



「あの門を見て、お前はどう思った?」

「はい、あれはエルタゴスにあるサンクチュアルと同じものです。中に入ってみられましたか」


「いや、今のところは安定しているようなのでな。お前は見てきたのか」

「あの中には亡霊のような魔物がいます。そして卵がたくさん落ちています。これです」


俺が拾ってきた魔核を差し出すと、チュム師の目の色が変わった。


「何と、あの中に卵が落ちているというのか。宝の山と変わったか」


チュム師は異能たちを集め、エルタゴスの採集人と同じ事をさせることに決めたようだ。

俺が語る魔法世界の仕組みに感心しながら、腕組みをしてじっと聞き入った。


「これからは、ここに魔法戦士を増やす。そして隣国やサンバラ国の横やりを押さえる」


そうチュム師は計画を立てたようだった。

俺がいなかった時間は二年と十ヶ月。計算が難しい。

門が出来たおかげで、途中から時間軸がピッタリになったということなのか?それともこちらがゆっくりになったのか……。

その三年の間、サンバラ国からも、天祖国からもここが狙われ始めた。

土が肥え作物がよく育つ。港の位置も丁度いい場所にあるし、なにより気候が穏やかだ。

天祖国は元は自分の土地だと主張し、サンバラは豊かな領地を欲しがる。

サンバラ王は、以前の取り決めを後悔し始めた。

そのためチュム師は、兵士達を多く雇うことになったと、話して聞かせた。









第三部 完

ここで第三部は終了です。このあと第四部に入ります。

四部構成なので、最終章になります。

よろしかったら、引き続き応援、御願いいたします。

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