表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

88/124

85 ラヌビスの正体

俺は、サンクチュアルに入った。

今は夜だ。サクラの司祭と長いこと話し込んで夜がふけてしまった。

だけど、これでいい。みんな寝てしまった頃だろう。

急がず、慌てず、ゆっくり進む。


この頃は盗掘者がいないため、見張りもいないが、いつ誰が見ているか分からない。

気配を消してもよかったが、何となくそれは止めておいた。

周りは魔女だらけだ。今までだって俺の気配に気付かれていたかもしれない。

下手に魔法を使えば、返って感づかれてしまう。

魔法を習い、ある程度分かってしまった今は、魔法を使えば相手にも感知されると言うことが分かった。

今まで俺がやってきたことは、危ない橋を渡っていたことになる。


「魔女たちは、知らないふりをしてくれていた?」

深読みかもしれないが、用心する。

誰か着いてくる!

俺は振り返った。そこにいたのは、ラヌビスだった。


「何だよ、驚かせるなよ」

「わ・・・し・・・も・・・い・・・く」

「お前も? ダメだ。お前にはサンクチュアルを通れない。四階層も危険なんだ。だからノビスの集落へ帰れ」

「み・・・ず・・・あ・・・わ・・・な・・い」


こいつ、水が飲みたくて俺について来るって言うのか。

確かにここの水は硬水だ。

飲めば腹を壊すだろうし、ワインで薄めた水もラヌビスは飲まなかった。


「お前、以前はスパルタンの人に飼われていたのではないのか? あそこの水もかなり硬かった。どうしていた?」

「か・・・が・・・く・・・て・・・き・・・しょ・・り」

「かがっくて、きっしょーり? かがんで勝利した?」


よく分からなかった。とにかく、あっちでは飲めていたって事だろう。

まあ、四階層に入れば着いて来れなくなる。そうなれば諦めてくれ砂漠地帯を抜けようとした頃、ラヌビスが倒れてしまった。


気を失ってしまったようだ。熱中症って奴か?

仕方なくサンクチュアルの外へ戻り、置いてこようと抱き上げた。

その時ラヌビスの考えが頭に染み込んで来た。

【儂は、スパルタンの皇だぞ! 魔女の巣窟に置いて行かれては溜まらん】

俺は、はたと立ち止まり、腕の中の犬を、まじまじと見た。


――皇は、生きていた。犬の姿に擬態して。


このままエスタルゴスには置いておけなくなった。

神殿にはデルードがいる。

この犬になってしまった皇は、未だにデルードを狙っているのか。


こいつをここで、殺してしまった方がいい!


だが、一緒にいる間、愛着が湧いてしまって、俺の手は震え、手に掛けることは出来なかった。


「いいさ、まずは魔核をこいつに飲ませて、サンクチュアルの黒い玉に入れるかどうか試そう。こいつが通れるとは思えないが、それならそのままにして置けば良い」


だけど、それで良いのか?

こいつのせいで異界のヌエタラがおかしくならないだろうか。

魔核を飲ませたら、ベスタを倒せてしまう。

そうなれば、サンクチュアルを出ていって、

デルードにまた執着し始めるかもしれない。


俺はそこで、にっちもさっちもいかなくなってしまった。


まずはラヌビスの話を聞くしかない。

ラヌビスの頭に手を添え、詳しく調べてみることにする。

気を失っている今がチャンスだ。

俺は心を無にしてラヌビスの頭の中を覗いた。


【もう機器が壊れてしまった。次元に穴は開けられない。

故郷へは戻れない……残り少ない命このまま朽ち果てるのみ……

せめて水が、美味しい水を飲んで死にたい……】


――ヌアビス……めちゃくちゃ弱ってるじゃん。

これではあまりにも、かわいそすぎる。

仕方がないやるだけやってダメなら殺す。

今のこいつは残り少ない寿命しかないらしいし、力も無くなったのだろう。

しかし、機器? こいつも異世界から来たのか。

しかも科学文明が発達した世界から。








評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ