84 無属性
“同調”という魔法の話は結局聞けなかった。
ベルーダが考え込んでしまい、話しかけられなくなってしまった。
俺は採集人の居住区へ戻ろうとすると、あの舌を切られたサクラの一人が駆け寄ってくる。
今では彼女たちはすっかり元通りになったようだ。
心なしかふっくらとし、言葉も話せるようになった。
大司祭様の魔法はすごい。
俺なんかは恐れ多くて近づくことができないほど、上位の司祭だ。
「コタルルッロ! 写本ができたの」
朗報だ! これでいつでも帰る事ができる。
このサクラは、確か、力ある司祭だ。
エルタゴーの街の神殿では上位だったと聞いたことがある。
俺は彼女に聞いて見ることにした。
「司祭様。魔法について聞きたいんだが」
「ええ、私に分かることだったら何でも教えて上げるわ。あなたは命の恩人ですもの」
「ベルーダ司祭様の力ってどんなもの?」
「ああ、彼女は珍しく闇の力に親和性がある方よ。滅多に見ない闇の親和性。確か二人か三人くらいしかいなかったと思う」
「では、言葉を頭に流し込むというのは誰でもできることではないのか?」
「無理ね、それ自体できる人はいないと思う。でも、あなたはできたと言っていた。ベルーダ様とあなたに繋がりがあったせいだと聞いたわ」
これでは、繋がりがないと無理だ、そういうことなのか?
だけど、今の話を聞いて俺は、ベルーダと俺が繋がった原因に思い至る。
ベルーダは以前教えてくれた言葉が蘇る。
「黒い玉に魔素を吸収させるとき、あなたの魔素も一緒に取り込んだ。だからあなたは魔素切れになった」
あの時、ベルーダの中に俺の魔素の一部も吸収されたのではないだろうか。
では、滅多に出来ないと言う同調は、俺は出来ると言う事になるのでは。
スパルタンの闘技場で、俺は相手の頭の中に同調した。
ではどうやれば、相手に俺の頭の中を流し込める?
方向を変えれば良いだけではないだろうか。
「司祭様、ヴィダからはじまる魔法は闇?」
「あら、違うわ。無属性に分類されている。闇とも被る部分もあるけど……それがなにか?」
俺の読みは間違いだった。俺の親和性は無属性だ。それが今ハッキリした。
どうなっているんだ。
もう一度魔法の本を読み返さないとダメだ。
俺は悩んだ。このまま帰るか。もう一度ベルーダに効くか。
魔法の本を読んだが、イマイチ不確かだった。
あのサクラにもう一度だけ聞き、それから結論を出そう。
彼女は俺が知らなかったことを丁寧に教えてくれた。
「親和性というのは魔核を取り込んだときに決まるの。その人が持っている特性に引きずられるようよ。例えば、大司祭様は、元々その傾向があったから光の魔法が得意になられた。他の魔法も使えるけどそれほどではない。採集人たちも身体強化を使えるけど、彼らの場合魔素の保有が少なくて他の魔法の威力はそれほどではない。でもやはり得意なものは親和性に引きずられるわ」
「俺は? 俺の親和性は、無属性ではないのか?」
「まあ、コタルルッロ。無属性は今まで見つかったことはない。理論上はいるはずなんだけども……なぜあなたはそう思うの?」
「呪文を唱えなくてもヴィダ系の力が使える」
「ま、そ、そうなの? すごいわね。確かに火や水に親和性があれば呪文を唱えなくてもできる人はいるけど……ヴィダ系を? 聞いたことがないわ。他に使えるのはある?」
「風は、呪文を使えば極大魔法が出た」
「あの時の魔法はあなただったの!」
彼女は驚いて俺をまじまじと見たが、なにが驚くことがある?
呪文を唱えれば、みんな火や水なんか俺よりすごいのに。
「これは急いでベルーダ様に話さなければ。あなた、ここにまだいるわよね。若しかしたらコタルルッロは……」
そう言ってサクラの司祭は急いで神殿へ駆けていった。
あの研究熱心なベルーダに掴まれば、しばらく帰れなくなるのでは?
もうこれ以上は無理なようだ。言葉を入れ込む魔法、というのは諦めるしかない。
俺は荷物をまとめ、サンクチュアルヘ入った。




