81 ラ・ヌビス③
儂は、ラ・ヌビス。この地に落とされた、異次元の知的生命体だ。
異次元の儂らは五体、いや五人いた。
一人はすぐにこの地の生命体に消されてしまったが、残った者たちでこの地を変革し、儂らの生きる場所を作り上げてきた。
儂らには本来、名などなかったが、それぞれ名を付けこの地の神として君臨することができた。
しかし、この地の生き物は高速で動き、高速で話す。
それに対処をするために機器を開発し、儂らの姿を変え、何とかなってきたのだ。
儂らは、本来の次元へ帰りたいと切望した。
海を挟んだ向こうに、この世界の者どもが”魔素”と呼ぶ、エネルギーが噴き出す地を見つけた。
儂らは、さっそくそこを手に入れようとしたが、そこに住む”魔女”という生き物に敗れ、這々の体で逃げ出した。
恐ろしい、未知なる力をその者どもは有していたのだ。
やがて年月と共に同胞が次々と消え、今では儂だけとなってしまった。
何とか魔女に対抗しようと、魔素を含有するという塊を何とか手に入れて、エネルギーに変換してみたが、効果が薄い。
だが……この塊は気味が悪い。あまり触りたくはない物だった。
悩んだ末、巨大な施設を作り上げる事にしたのだ。
この地に広く、薄く滲んでいる地力を吸い取り電磁波に変換すれば、巨大なエネルギーが手に入る。
国家の一大事業。
神の側に行くという触れ込みで作り上げた。皇の墳墓。
この地の生き物は高速で動き回りあっと言う間に作り上げた。
何と言う早さ。恐ろしい。儂は怖気を振るいながらも、平静を装う。
魔女を捕まえてはみたが、あまりにも五月蠅すぎて、儂は耳を塞ぎたくなる。
「これを黙らせよ。ここから連れ去れ」
この地には”ブルーロータス”という青睡蓮を使った、しびれ薬がある。
ほんの数滴で、大型の獣でも痺れて動けなくするのだ。
魔女にもよく効く。
機器を通して指示を出す。
儂の身体は、人間に擬態しているはずなのだが、周りの人は恐れ、遠のいていく。
「どうやら、以前擬態した”殻”が残ってしまっているようだ」
どうにもならない。これ以上はエネルギーを使いすぎて形態を維持できなくなる。
また、魔の力の使い手を捕まえたとの報告があった。
今度のは雄の魔法使いだ。
この声色なら儂も我慢ができそうだ。
この雄を触媒とすれば、次元に大きな穴を穿てる。
――これでやっと元の次元へ戻れる――そう喜んだのだが。
アアーッ! 大切な触媒が遠のいていく。待て、待ってくれ。
何としても取り戻さねば――その瞬間、儂が乗る船体が横転し、ぐるぐると回転し、叩きつけられ、粉みじんに壊れてしまった。
儂は危険な塩水に浸かってしまい、力が消えた。
身につけていた機器が、機能を停止してしまったのだ。
残されたのは、眼窩に仕込んだエネルギー保管庫のみだ。
しばらく恐ろしい海に漂っていたが、 儂は助けられたようだ。
だが周りには魔女がうようよいた。
なんと、運の悪いことだ。
儂の身体は、どうやらここでは不自然ではないようだ。
初めて擬態した身体に戻ったためのようだ。
水を与えられたが、まずくて飲めん!
この様なものを飲んだら、儂の寿命が縮んでしまうではないか!
若い雄が、儂に清浄な水を与える。
この者に付いていかねばならない。周りは危険な塩水。
どこへも行けなくなってしまった……。
ここには補給できるほど雷がない。雷さえあれば、エネルギーを補給できるのに。儂がいた、暑い砂漠には沢山落ちていたのに……。
若い雄が、儂を置いて行ってしまう。
儂は残り少なくなったエネルギーを使って追いかけた。
「コウタロウ!」
と叫んで……。




