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75 白い墳墓

この頃、ケムが忙しい。

殆ど家にいない。だけど、仕事ではないようだ。


俺が神殿を勝手に辞めてきたせいで、ケムはメルカ神官のところへ謝りに行った。

そしてメルカ神官から用事を言い使ったようだ。

「ケムに悪いことをしてしまった……」

サクラ司祭たちを避難させ、今はすることもなくなった。


俺は皇宮の周りを、毎日歩き回ってデルードの消息を探っている。

彼はここにはいないのだろうか。

ピラミッドの仕事を請け負っていたんだから、そっちを探して方がいいかもしれない。


「デルードが”媒体”って、何のことか聞くのも忘れていたし……」


言葉の響きが不穏だ。

まるで人柱のようだ。もしくは生け贄……

俺はビクリとはね、ざわざわする二の腕をこすった。


「そんなことをさせるのか? もしそうなら、ここの王様は頭がおかしい」


いても立ってもいられず、俺は大量の食いもんを集めて袋に詰め、ピラミッドまで出かけようと立ち上がった。

そこへケムが戻ってきた。


「コトゥル、どこへ行く?」

「ああ、ケム! 俺、デルードが心配で溜まらなくって……それで……」

「ああ、分かっている。少し落ち着け」


ケムが忙しくしていたのは、メルカ神官と計画を練っていたためだそうだ。


メルカ神官は、この国の行く末を案じて立ち上がった。

懇意にしていた砂漠の民ケムに、協力を要請したそうだ。

ケムは以前から神官と交流があったが、部族同士の諍いに破れ奴隷となってしまった。

その後、闘技場から俺と抜け出して自由になれた。

その後、神官の元へ報告へ行ったのだ。


俺が見つけてきた玻璃グラスも助けになったという。

何度か行き来しているうちに俺の仕事の世話もしてくれた。

だが、神官が砂漠の民と親しいとは、初めて知った。


「でな、メルカ神官は王に反旗を翻すと仰った。その手伝いのために、我は忙しかったのだ」

「反旗? どうやって」

「まあ、我に任せておけ。それより、お前の知り合いを先に連れ出せ。最後の仕上げだそうだぞ。急いだ方がいい」


「でも、どこにいるか……デルードが皇宮のどこにいるか分からないんだ」


「今は皇宮にはいない。巨大な王の墳墓へいけばすぐに見つかる。行ってこい。そして近くの小さな港へ行け。そこに小舟を舫っておいた。舟で湾に出て岸伝いに東へ行けば、お前を待っている人がいる。いいか、明日の日が昇るまでだぞ。絶対に戻ってきてはいけない。何があってもな」


ケムは早口でそれだけ言って、また出かけてしまった。

俺は言われた通りにするしかない。

荷物を背負い、ここから半日かかるという王の墳墓、ピラミッドまで走った。


目の前にピラミッドが聳えていた。

大河からもそれほど離れてはいない。

俺がいた神殿からは見えなかった。

こんなに大きいのに俺には見つけられなかった。


ピラミッドの表面は白くつややかに輝いている。

天辺の、ピカピカ光る三角が周りに存在を誇示しているように見えた。

ピラミッドに近づく。大勢の人々が最後の仕上げをしている。

俺は気配を消してデルードを探し回った。


こんなに巨大な建物なのに、人が住むようには作られていない。

王の墳墓というのは本当なのか?

直線的な細い通路が斜めに作られていた。

階段でもない、狭い四角のつるつるの通路。上る人のことは考えられていないようだ。


デルードは、ピラミッドの中で見つかった。

狭い通路を下に滑り降りていくと小部屋があり、そこに一人座っている。


「デルード!」

「コタルルッロ! なぜここへ……」

「助けに来た。さあ、行こう!」

「……ダメだ。私はここにいなければならない」

「いいから早く!」


デルードがあまりにも抵抗するので、俺は頭にきて彼に手刀を軽く当て気絶させた。

持ってきた荷物からロープを取り出し、俺の身体とデルードをまとめて縛った。

通路は斜めに伸びている、この狭い穴を通り抜けるのはギリギリだ。

俺はサンダルを脱いだ。

そしてヤモリのように壁に手足をピタリと貼り付け、斜めの通路を上っていく。たまにデルードの頭が通路にこすられているようだが、気にしている暇はない。そして、ようやく出口に着いた。

一旦止まり、小さな出口からこっそり外を覗く。


「今なら誰もいない!」


俺はデルードを担ぎながら風のように、川岸目指して走り出した。

走っている間にデルードの頭がのけぞるので、押さえてやる。

すると、彼の言葉が俺の頭に響く。

【私はみんなのために、犠牲にならなければならない】

――やっぱりな。気絶している人の頭の声が聞こえるんだ。同調って奴だな。


それ以上は聞かないようにして、ひたすら俺は走った。

ケムが言っていたように小さな小舟が見つかった。

俺は、デルードを舟に乗せ一生懸命オールを漕ぐ。

以前もやった漕ぎ手の経験が、ここで生かされた。

小舟はまるでイルカのようにすいすい水を切って進んだ。








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