71 行動
「あ、そうだデルード、さん」
「もう、いいよデルṙṙドで。さんなんて付けなくっても」
「へ、へ……つい。で、魔核の不良品が密輸されているみたいなんです。知ってましたか?」
「ああ、あれは不良品ではないよ。ちゃんとした物だ。ただ魔核を飲む人間が問題だ。皆、力の有る年寄りばかりだからね。若くないと効果は限定的だし。折角の効果も、ここでは試せない。サンクチュアルがないからね」
「そうだったんだ」
「ああ、態と少し流しているようだ。盗掘者が多くて、採集人が危険に晒されていたから。詳しい使い方を知らせないでね。我が月の神殿も意地が悪い。ふ。ふ」
――確かに、ベルーダなら高い金をふんだくっていそうだしな。
そのあと、サクラたちの居場所を聞き俺は青くなった。
「何で司祭をそんなところに!」
「……仕方がないんだ。この国は女性が軽視されすぎている。女性と言うだけでそういう扱いを受ける。そして逆らった者は舌を切られた。必然的に、そこへ送られた。だけど今は大丈夫だ、私が王に条件を出して客は取っていない」
これは急がないとダメだ。俺はとって返してメルカ神官に暇乞いをした。
「ずいぶん急だね、どうした?」
「ごめんなさい。俺、思い出したんです、俺には大切な人が待っているって言うことを」
今こそ、記憶喪失の設定が生きる。ちょっとだけ嘘を交えたが、メルカ神官は同情してくれた。
「そうか、記憶が戻ってよかったではないか……よし許そう」
※
護衛たちの宿坊に入り、挨拶も済ませ、俺は神殿を出た。
振り返って門を見上げ、両側に列んで建つ石像を改めて眺めた。
「鷲の顔と、人の身体。こんなのばかりがいる世界……か」
そりゃ戸惑っただろうな。
彼らはこの世界をどう言う目で見ていたんだろう。自分達とあまりにも違う見た目に、考え方。そして生活水準や社会形態。
彼らは自分達が住みやすいように、スファルタン帝国を作り上げてきたのかも知れない。
だが、俺の前世でも似たような社会形態だった時代があったし、違いはほんの少しだった。
これが、人が考えつく限界なんだろう。
同じようにしか変化できない……というのは。
俺は、スファルの街に入り、ケムの家へ帰った。
ケムは仕事へ出かけていないようだ。
奴隷のセトが、食事の支度を急いでし始める。
「旦那様、少しだけお待ちください」
「いいよ、ゆっくりで。突然帰ってきたのは俺なんだから」
「……はい。すぐですので」
彼は片足を引きずりながら、厨房へ入っていった。
セトの足は、多分リュウマチみたいなものなんだろう。
もしくは昔の怪我か……。
足を引きずる奴隷だったため安く買えた。
だけど、サボらず無口で、よく働くいい男だ。
年齢は三十代後半くらいか。
程なくして,厨房からいい匂いがしてくる。スパイシーな香りが鼻を刺激し、腹がぐーっと鳴った。
俺が食事をしていると、ケムが帰ってきた。俺を見て驚いている。
「どうした,何か問題でもあったか!」
「いや、問題は起こしてないけど……辞めてきた。他にやることが出来たんだ」
「ほほう、何をやる? 我にも手伝えることか」
「ああ、是非手伝って欲しいことがある。南区の歓楽街ってどこか分かる?」
「……ああ……そんなところで、何を?」
「助け出したい人達がいる。そしてエルタゴスへ帰す」
次の日、ケムに連れられ歓楽街にやってきた。
ここはあまり治安がよくない場所だった。
子ども達が裏通りに固まって残飯を漁っていたり、抜け道を通って自分たちのねぐらへ何かを運んでいたりしていた。
子供たちの服装は下穿き一枚に裸足だ。
暑い気候のここでは寒さに震えることはないだろうが、足に怪我でもしたら、命取りになりそうだ。
「何だってこんなところに、コトゥルの知り合いがいる?」
「エルタゴスから攫われた女性がいるらしい」
「……もしかして、魔女か! でも魔女をなぜ……」
「逆らって、舌を切られて、ここに落された。舌を切られれば魔法は発動出来なくなる。使い道がなかったんだろう……」
「そうか、そうだな。可哀想な事になっていたんだな」
中盤に入り、物語は新しい局面へ向かいます。
あなたのペースで、続きを楽しんでいただけたら嬉しいです。




