表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

73/124

70 囚われ人 

デルードが出て行って一時間。まだ間に合う。

神殿の門を抜け、走り出そうとした瞬間、声を掛けられた。

デルードだった。


「来ると思ったよコタルㇽッロ。よく無事でいてくれたな」

「デルード……さん。今の話はどういうことですか」

「まあ、少し大変な事になっていてね、私も困っている……少し歩きながら話そう」


俺たちは川の畔に向かって歩き出した。

歩きながらデルードは今まであったことを端的に語った。


彼は、攫われて船に乗せられ、俺より先に港に下ろされていた。

そのまま真っ直ぐに宮殿に連れて行かれ、そこで異形の王と謁見した。


「王は私を見て喜んだよ。今まで、サクラ神官を攫っては来たがすべて女性だった。その為、力がない魔の使い手だと思い込んでいたようだ……本当は女性の方が力が有るのにね」

「では、攫われた人は他にもいるということか!」

「ああ、私も話には聞いていたが、五、六人消息が途絶えたとは聞いていた。まさか自分も攫われるとは思ってもみなかったよ」


「俺たちを担いで船までよく運んだな。俺、気を失ってほとんど覚えていなかったけど」

「私は途中で気が付いた。男が十人いたが、薬を塗った針を刺された。君にもだ。その後は……船で目が覚めた」


あの船の中で少しだけデルードと話をしたけど、その後の記憶がないところを見ると、薬を盛られていたのかも知れない。


「俺には治癒があるのに……どんな薬だったんだろう」


「治癒か。珍しいスキルだね。まだほとんど知られていないものだ。大司祭様が使えるけど、他にはいないんじゃないかな。この地には、毒とは言えない薬があるのだろう。私は知らないものだ」


デルードは始めサクラたちを救出するつもりだったが、王の考えを知るにつれ、諦めざるを得なくなったという。


「王がこれからしようとしていることは、この国を去ること、だそうだ」

「去る? 自分の国から?」

「王は――この世界の外から、突然落されてきた異物だ。王の他にも四人いたそうだが、今では死に絶え、彼一人になってしまった。この世界では彼はあまりにも異質すぎる。帰りたいと思う気持ちは分かるが、私達とは相容れない考え方をする生き物だ」

そう言って河の彼方を見たデルードは、悲しそうな目をしていた。


「王は犬みたいな見た目?」

「君、いつ見たの?」

「謁見の時、影が映ったんだ。だからそうではないかと思った。彼の世界では皆あんななのかな」

「そうみたいだよ。だからここに落されたときは戸惑っただろうね。でも、王は不思議な力を持っている。魔素とは少し違う……私には分からない力だ」


獣人の世界か。長く生きる孤独。異世界で独りぼっち……苦しいだろう。

それでも、この世界を蔑ろにしてまで自分を通すということは、この世界の人を踏み台にしても構わないと考える生き物、ということなんだろう。


王たち――以前は五人いた異形の生き物は、力を持ってこの国を制圧してきた。

今は、ただ一人残された異形の皇。そして彼は、故郷へ帰ろうとしている。


その為にこの地の魔素を吸い上げ、異界の扉を開けようとしているのだろう。


「異界の扉……デルード。僕の異界は、この星の中にあるのだろうか」

「星? 世界は真っ平らで星とは天に輝く物だよ」


ん? なんだか変だ。

もしかして魔法の世界の認識はずいぶん遅れているのか……それともこの世界は本当に真っ平らなのか……

頭の悪い俺には理解できない。


でも、ここはサンバラ国と同じ星にある世界だと仮定したら、歩けばたどり着けるのか???

穴はただの転位陣、転移ホール? だったのか?


頭の中がグルグルして痛くなってきた。もう止めよう。考えてもどうしようもないことだ。


「ピラミッドなんてもう放っておいて、デルード。サクラを救出してさっさと帰ろう。それが一番だ」

「ぴら……? なんだかよく分からないが、君に言われるとそう思えるから不思議だ」


だが、デルードには大きな問題があった。

王から不思議な術を掛けられて、逃げ出すことができないのだという。


「君に託したい。どうかサクラたちを救い出して一緒に逃げて欲しい。私はここに残るよりほかない……どうせ王がここからいなくなれば、術は解けるのだから」

「デルードにも外せない術って……」

「成り立ちが根本から違うようだ。月の満ち欠けから力を受ける我らの魔。そして日の光を根源にした不思議な紋……」


難しすぎて分からない。

今は、俺に出来ることをするしかなさそうだ。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ