59 消えた二人
魔力操作:魔力を直接動かす基礎。
魔力視覚:魔力の流れ・属性・濃度を視る。
魔力流動化:魔力を液体のように柔らかくする。
魔力刃:魔力を刃状に形成。
風属性:天嵐招来
効果:天を裂く暴風と雷鳴が降り注ぎ、広範囲に嵐を発生させる。
※魔力暴走制御:暴走寸前の魔力を抑える。
「よし、次は、魔力視覚だ。これは魔素の流れを見る事が出来るものだ。サクラにも半分位も出来ていないものだ」
「……ム・シア……」
こんな呪文なくても見えるんだが――あれ? 見え方がクリアだ。
そうか、呪文は魔素の効率が上がるんだ。ちゃんと発音出来さえすれば……
「どうだ?」
「はい、よく見えます」
「では次だ。見えている魔素を思い通りに流して見ろ。これで基礎は終わる」
「ム・フルエル!」
砂漠には、ほんの少しの魔素が漂っている。
地上から三メートルの位置にゆらゆらと泳ぐ細く筋状の魔素があり、俺の思い通りに渦を巻き始めた。
「おお。出来ている中々優秀だ。では次だ。これは危険だからあっちに向けて放てよ」
「ム・ブレイドゥス!」
魔力刃――見えないはずの刃が、俺には見えている。
シュバッという音がして砂が巻き上がった。
「よし最後だ。お前には厳しいかもしれんがやるだけやって見ろ。まずは魔素を動かし練るようにしてから放つんだ。やって見ろ」
「ム・マニピュラ……フィゲイル・ルミアーク!」
風の魔法。俺にとって唯一の大魔法。属性魔法だった。
風が渦を巻き、砂嵐になり、ゴオオーッという音を立てて周りを取り巻く。
俺を中心にすべてがなぎ払われ、いつまでも止まらない。
俺の意識が遠のいていく……。
※
「いかん!」
コタルㇽッロは、魔力調整が出来ずに魔素枯渇を起こしている。
デルードは慌てて、暴走寸前の魔力を抑える呪文を唱えた。
「ム・コエルṙṙケル!!!」
コタルㇽッロの魔力は強大で、デルードがいくら制御しようとしても収まらない。
そのうち、デルードまでが魔素枯渇を起こして倒れてしまった。
しばらくして、十人もの人影が二人を取り巻いた。
※
「あら、コタルㇽッロはどうしたの?」
ベルーダが出来上がった麻紙を抱え、執務室に戻ってきた。
サクラたちは固まって何やら話し合っている。
「一体どうしたの、あなたたち。写本は出来上がったのかしら」
「ベルーダ様。デルード主任とコタルㇽッロが、サンクチュアルから戻らないんです。もう六時間も経っているのに」
魔法の実演のため、サンクチュアルへ行ったのに帰ってこない。
何かあったのだろうか。
魔法の練習なら砂漠地帯だろう。そんなに時間が掛かるはずがないのだが。
ベルーダはサクラ数人と採集人を連れ、サンクチュアルヘ入った。
だが魔素を辿っても、歩き回って探しても二人は見つからない。
「まさか……コタルㇽッロは異界へ帰ったの? 私に何も言わずに」
「ベルーダ様。それはあり得ません。デルード主任がついているのです」
側に立っていたパパスは、他の採集人を連れ、二階層へ走って行った。
数時間して戻ったパパスは、
「どこにもいません。ただ……」
「なに! 早く言いなさい!」
「これが二階層に落ちていました」
ベルーダが受取って見ると、篭手だった。
それは、帝国スファルタン兵の着けている篭手だった。
「コタルㇽッロは、帝国兵に殺された?」
ぺぺが、呆然と呟く。
「何を馬鹿なことを! どこにも死体は無かった。絶対にあり得ない」
パパスが叫ぶが、ベルーダが深刻な顔で話し出した。
「帝国の王は、魔の力を欲して、サンクチュアルに何度も忍び込んできているわ。この頃不穏な話が出回っているの。王都に行ったサクラの消息が途絶えたと。魔核を盗むのを諦めて、魔女を拉致しているのではないか。調べた結果、分かったことがある。捉えられた魔女は、抵抗すると……舌を切り取られるそうよ」
「……なんてことを……魔法が出来なくなってしまうわ」
サクラが震えながら、小さな声で呟く。
ベルーダは走り出し、伝令のノビスに命じる。
「まだ、港にいるかも知れない。徹底的に船を調べさせて!」
第二部、ここで終了です。
コウタロウとデルードは、サンクチュアルから姿を消しました。
次の第三部では、二人が辿り着いたスパルタン帝国での物語が始まります。
引き続きお付き合いいただければ嬉しいです。




