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50 静かな決意①

父ちゃんたちを送り届けた帰り道、ゆっくり歩きながら俺は考え込んでいた。


「父ちゃんも母ちゃんも、年取ったんだな」


幼い時は父ちゃんの背中は大きく感じていた。

だけど今、改めて見た父ちゃんは、縮んだように感じる。

「父ちゃんは何歳になった?」


母ちゃんと一緒になったのは十三歳の年で、次の次の年に俺が産まれたと聞いている。

今俺は十四歳。じゃあ、三十歳か? いや二十九歳か?


前世の俺が死んだ年とそれほど違わない年齢のはずだ。

農民だったせいか、食いもんが粗末なせいか……。

父ちゃんたちはどれくらい生きられるんだろう。


それからは休みの度に、家に帰るようにした。

宿舎に戻ると途端に寂しくなる。

会えないときは忘れていたこともあったのに、会えるようになってからの方が寂しくなるなんて――おかしな話だ。


「チュム師は何歳になられましたか?」

「何だ、突然――五十歳は過ぎたな。なぜその様なことを聞く?」

「農民は何歳まで生きられるのかなと、そう考えて……」

「まあ、農民というのは早死にする傾向があると聞く。だが人によりけりだ。親のことが心配なのだろうが、皆、何れはあの世へ行くのだ。君も私も……」



遺跡は相変わらず不活性期が続いている。

ヌアタラ領内は賑わいを見せ、農家からの荷車が引っ切り無しに街道を通って行く。


俺の帰還から一年と少し経つ。

十五歳を過ぎた俺の身長は、伸びが止まったようだ。

「よかった、これ以上大きくなったら困ってしまう」


気を緩めると“梁”に頭をぶつけてしまい、俺の宿舎の梁は、ひび割れてしまっている。

「頭に傷はつかないが、部屋が壊れてしまっては、申し訳が立たない」

今、俺は一人で部屋を使わせてもらえている。

だから、壊したのは俺だとすぐにバレてしまう。


チュム師に呼ばれて伝令もこなす。

簡単な仕事だ。

この頃俺は魔法世界で知り合った、ベルーダのことを思い出す。


『また魔素が漏れ出したら帰って来るのよ』

そう言われていた。

どうすれば良い? 帰れば良いのか、このままここにいれば良いのか。


身体能力は、群を抜いていたが、魔法はまだまだ未熟だ。

これからチュム師は卵を飲ませる年齢を十五歳にすると言っている。


その少年たちは、力を手に入れるだろう。

だが、誰が教える事が出来る?

俺しか魔法の国へ行けないとしたら、俺が教えなければダメなのでは?


覚えきれなかった魔法の国の文字。覚えている部分だけ書き起こしてみる。

魔法の国の文字は、まるで英語のようだ。

少ない基本の文字を組み合わせて、単語を作り意味を持たせる。

単語と言葉と物を照らし合わせないと意味が理解できないのだ。


俺にとってはむずかしい言葉だった。


「……前世も英語は苦手だったしな……」


穴の活性期は、六年、五年と一年ずつ短くなったと考えて良さそうだ。

チュム師は、遺跡の周りに堀を巡らせ、少し下がった場所には、逆茂木まで取りつけ始めた。


「今度こそ万全なはずだ。魔王さえ出てこなければな」

そう言って俺を見る――いや、俺は魔王じゃないって知ってるくせに。


「まあ、冗談だ。今まで魔王だと思っていたのが、魔法の国の魔女だったとはな。しかも敵ですらない。修復してくれるありがたい存在だと知ったのだ。君のお陰でな」


「彼方にとっても深刻な問題のようでした。魔素が抜けるのは、困ることなんだそうです」


「……そうだろうな。魔法文明を支える核だ。私でも今、卵の有用性に心を奪われているのだから」


「有用性?」

「ああ、異能が増えればこの先このヌアタラは無敵になるだろう。サンバラや、天祖国はこの豊かな地をこのままにはして置かないはずだ」


チュム師の話が一気に不穏になった。父ちゃんたちは大丈夫だろうか。

「心配するな。私がちゃんと下地を作る。この領は豊かだ。サンバラ王にも税は免除された。だがいつまでこの状態が続くとは思えん。だから戦士を集め鍛える。異能が増えれば、数の不利が覆るだろう」

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