49 新しい我が家
家から担いできた荷物は、気が付けばすごい量になった。
宿舎の狭い庭いっぱいに積み上がった荷物を見た先輩は、
「ガラクタばかり集めて、商売でもするのか? 売れねぇぞ、こんなの」
「俺の家で使っていた物だ。ガラクタじゃない」
農家にとっては、毎日使う大事な物だ。
農奴だから大した物はないけど、自分達で買いそろえた道具なのだから。
そのままチュム師に帰還の報告をして、両親からのお礼も伝えた。
「ただの制度だ。礼をされる謂れはない。君の家や土地はこの書類にまとめてある。家族が来たら連れて行ってやりなさい」
次の休みの日、新しい土地を見に行った。
街からは少し遠かったが、俺の足ならゆっくり歩いても半日ほどだ。
近くに裏山があり、小川が流れ西に広く平地が広がる良い場所だった。
そこには五戸、真新しい農家が立っていた。
「家まで建ててもらえたんだな。以前より大きい」
それから程なくして、家族を乗せた商船が港入りした。
俺はワクワクしながら埠頭で待つ。
襤褸を纏った集団が、続々と渡し板を伝い降りてきた。
「父ちゃーん! こっちこっち」
「おお、迎えに来てくれたのか」
「父ちゃんたちの土地は、ここから離れているんだ。一日野宿になるかも」
村から一緒に来た農民たちも一緒に連れて行かなければならない。
五家族。皆疲れているようだったが、宿を取る金は無さそうだ。
一旦食い物を仕入れるためにあちこち移動し、ヌアタラの街から出る。
野宿に適した場所を見つけそこで休ませた。
「ここからまた二日歩けば着く。すごく良い土地だよ」
移住地に着いた途端、皆が目を丸くした。
「家が、立派だねぇ」
「良い土地だ。まずは大根を植えるか」
「そうだね、田んぼにするにはまだまだ時間がかかるね」
などと、口々にこの先の予定を立て始めた。
彼らは何も持っていない。身一つで移住してきた。
俺の家だけが農具を持って来られたのだ。
うしろめたくなった俺は、皆に持っている金を分け与え、
「これで、当面必要なものを買え」
「……コウタロウ、気を遣うな。おいらたちには支度金が渡されたんだ。これは今後返す事にはなるが、この土地ならすぐに返せるようになる」
そう言って金は受け取ってもらえなかった。
移住してきた村人は全部で十八人。助け合って生きていくことだろう。
俺は安心して宿舎へと戻ることにした。
※
「ここは気候も良い。おいらたちはサンバラ国民って事になるのか?」
「そうなるだろうね。天祖国に未練はないけど、何となくおかしな気分だ」
ここに移住者を募集しに来た役人は、サンバラ国の役人だった。
村長と金のやりとりをして、移住者を決めていた。
売られた、ということだ。
農奴なら仕方のないことだと諦めてはいたが、まさか、農奴から解放されるとは思わなかった。
「これからはここが……本当に自分の土地になる。そういうこってすかい」
「夢のような話だ」
隣村にも聞いたが、皆同じ扱いだそうだ。騙されていた訳でもないと知り、皆は胸をなで下ろしたのだった。




