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47 コウタロウの帰還

魔素の流れに沿って出口を目指して飛び込んだ。

靄が薄れて、周りを見ると魔物がいっぱいいる。


「やっぱりだ。ここは遺跡で、今、穴が開いたってところかな」


向こうから、チュム師がゆっくり近づいてくる。

懐かしい顔だ。チュム師は少し老けて見える。


「何年経ったんだ? 二十年は経っていないはずだ。だってチュム師が生きているんだもの」


俺の前で立ち止まったチュム師に、嬉しくなって大声で挨拶をする。

「チュム師! お久しぶりです――」


チュム師は俺に切り込んできた。


――おっと、あっぶねぇ……また魔物と勘違いされた!


おっかない顔をしたチュム師から、あちこち逃げ回っているうちに、

遺跡の周りから靄が穴に吸い込まれていく。

そして、魔物たちが消えていった。


それで俺は、もう一度大声で叫んだ。


「俺です、コウタロウです。戻って参りましたぁー」


チュム師は一時、静止画のように動かなくなった。

俺は懐かしすぎて、にこにこ笑っていたらしい。


チュム師はつかつかと歩み寄り、バコンと俺の頭を叩いた。

「馬鹿もん。驚かせおって! ニタニタ笑うな!」

「はい……」

叩くことはないだろう。

でも痛くない。俺の頭が堅いのか、チュム師が手加減してくれたのか。


「穴は、塞がったようだな――よし、コウタロウ、今までのことを聞きたい。ついてきなさい」



「魔法世界だと――本当の事なのか?」

「はい本当です、見ますか? 俺、魔法出来る様になれたんです」


俺は砦の裏に行き、チュム師に魔法を披露する。

「デルㇽㇽㇽ……」

俺の手に小っさい火がポッと灯る。


「これをどうするんだ? カンテラの方が明るいのだが……」

「えと、油入らず……です」

「……まあ、よい。役には立たんが、魔法と言われればそうかも知れん」


俺はチュム師についていって、新しくできた街へ行った。

チュム師は馬に乗り、俺はその隣を走る。

半日ほど走ると、港がある街に着いた。


「ここって、以前来た港ですか?」

「ああ、そうだ。ここは私の領になったんだ。そして今私は、チュムではない。だから領主かソク・タラと呼ぶように」


チュム師をソク・タラとは言えないし、領主様って何となく馴染めない。

俺にとってはチュム師、なんだけどな……。


チュム師はまだ仕事があるというので、一人で街の中を見て回る。

結構賑やかな街だ。サンバラほど大きくはないけど、皆生き生きしている。


街には大きな通りがあるけど、真っ直ぐではなく、緩く蛇行する道だった。

「これはなぜカーブしている?」

近くにいた店主が答えてくれる。

「魔物を討伐しやすくしているんでさ」


そうなんだ。チュム師はずいぶん考えて街造りをしたと分かった。

港には大きな船が停泊していて、たくさんの荷物を積み込んでいた。

――ここにも産業が芽生えたんだな。


さっきチュム師は、俺がいなくなってから五年経ったと教えてくれた。

たった五年で、こうも変わるものかと驚く。

街を出て、南を見ると、田んぼが一面に見えた。

河が流れ、水が引きやすい良い場所だ。

今は植え付け前なので、水が張られて田んぼが鏡のように輝いて見える。

どこまでも広がっているように見えたが、よく見ると田んぼの中に住居があった。


「農奴……がいるんだ……」

側に立っていた門番が、俺の言葉を聞きかじって、こうまくし立てた。


「とんでもねぇ、ここには農奴はいないんだ。皆自由民だ。きちんと税を払う、れっきとした領民だ」

「そうか! 悪かった。ここは凄く良い領だな。俺も、多分ここの領民になれる……はずだ」


俺は自分で言っておきながら、不安になった。

五年も行方不明になって、今、サンバラの戦士だと帰っても、首を刎ねられてしまう? 脱走兵だと言われてしまうかも知れない。


俺はチュム師のところへ、急いで走って行った。




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