44 秋の深まる頃
三十二人のアコライトと共に実技を受ける。
俺とマーカス以外はすべて女性だ。
しかも十四歳から十七歳までの若い少女たちばかり。
皆、黒髪で栗色の目をしている。背の高いのも低いのもいるけど、俺はここでは浮いている。
顔がみんなとは違うし、背が飛び抜けて高いからだ。
このごろは筋肉もついてきて、大男だ。
そのせいで、俺の不器用さが余計に浮き立ってしまっている。
周りは一メートルもある火柱を作り上げ、バケツ数杯分もあるような水の玉を浮かばせているのだ。
「コタルㇽッロ。デリṙṙ、だぞ!」
「デリュ」
周りから、クスクスと可愛らしく笑う声がする。
マーカスは、笑いたいのを我慢して顔を赤くして踏ん張っていた。
そして、偉そうな主任がまた叫ぶんだ。
「フーッ。何度やっても、お前にはできなさそうだな」
「デルㇽㇽㇽ……」
その時、小さなろうそくほどの火が中指に灯った。
「っ! 出た、出たんだけど」
「……まあ、出たことは出たな。だが、違う呪文だ……」
呪文が違う。でも出た。
俺はこの後も「デルㇽㇽㇽ」で水を出した。
コップ一杯ほどの水だけど、火と同じ呪文で出た。
コツは「デ」の後に小さく「ルㇽㇽㇽ」と言えば良い。
結論! 要するに、心で”水よ出ろ”と思い「デルㇽㇽㇽ」と唱えれば出るということだ。
俺は魔法を使えるようになれた。心が浮き立ち、足は軽い。
るんるん気分でベルーダの元へ行く。
「司祭様! 俺、魔法が使えるようになりました」
そう言って、さっきできた魔法を出して見せた。
「……」
ベルーダは、可哀想な子を見るような目で俺を見たが、気にしない。
彼女のサンバラ語の理解はほぼ出来る様になっている。
すごく頭がいいんだなと感心するが――発音はまだまだだな。
そんな日々を過ごすうちに秋も深まってきた。
ノビスたちは忙しそうに駆け回り、冬支度の真っ最中だ。
それを横目で見ながら、俺はベルーダのもとへ向かう。
この頃は毎日通うように言われている。
もう、俺には階級があってないようなものだった。
ここでは文字を集中的に覚えさせられている。
未だにまったくできる気がしない。
だって書いている文字を呼んで聞かせるとき、巻き舌でベルーダが教えるため、何が何だか訳が分からなくなるのだ。
ベルーダは、この間俺にこう言った。
「あなたは、異界から渡ってきたのだと思う。異界の人間は、魔法の概念がない。そうよね。貴方を見ていれば分かるから、嘘は言わないで。そして、あなただけが、独自に魔法を使っている。さらにあなたは、他にもなんらかの異能を隠し持っているようだわ」
「隠してなんかいない。ちょっとだけ魔素が見えて、自分に治癒ができて、気配を消すことが出来る。それだけだ」
「……治癒までできるの……」
「え、と、自分のだけだよ。他の人のは試したことはない」
「そうなの……でも、治癒の魔法は光。私には適性がないから教えて上げられないわ。大司祭様だけね、できるのは」
「大司祭様はいいや。偉すぎて腰が引ける」
「ふ、ふ、そうね。習いたくても無理よ。それで、どうしたらそんなに能力がついたか、自分で分かる?」
「多分、魔素が多く入った卵を二つ飲んだからだと思う」
「まあ、二つも飲んだのね……私達には希少すぎて実験できないわ。残念ね。成長期が過ぎてしまった者では意味がないし。でも、参考になったわ」
ベルーダは、こうも言った。
「まだあなたも知らない隠された能力が、きっとある。私が見つけてみせる」
ベルーダには文字を習ってはいるが、ここの文字は俺には無理だと思う。
彼女の不思議な術で、俺は会話ができているけど、文字はどうしても理解できないでいる。
そうして日々は流れ、冬が深まってきた頃、パパスが飛び込んで来た。
「司祭様! また魔核が消えました」
「分かったわ。すぐに対処します」




