表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

44/124

42 もう一つの呪文

『ヴィタ・ṙṙルナ』

この呪文を俺は偶然知った。

驚いたことにパパスが「知っている魔法がある」と言って教えてくれたのだ。

俺がサンクチュアルの最奥で倒れていたとき、ベルーダが唱えた呪文で、覚えていただそうだ。


パパスには意味が分からなかったけど、呪文の発声だけは記憶していた。

俺がいつまでも魔法ができないことを哀れんだのか、それとも違う思惑があったのか……。


ベルーダがその呪文を唱えた後に黒い球に吸い込まれたそうだ。

不思議だが、俺には意味が分かったような気がした。

状況からみて、浸透、とか浸潤、みたいな意味の言葉だろう。

ベルーダは、あの塊の中へ入っていける。

その呪文ができたら、俺も入っていけるのでは?

入れたら、ヌアタラへ帰れるかもしれない。


それにこれまで聞いてきて、ヴィタ――から始まる言葉は、俺には相性がいい気がする。

ヴィṙタ・ブリṙṙオ、ヴィṙタ・ベロṙṙス、どちらも身体に関係する言葉だった。


身体に関係する魔法は、発声しなくても元々できた魔法だ。

では、ヴィタ・ṙṙルナはどうだろう。

発声はやはりできないけど、できる気がする。

浸透できるように身体を何とかする魔法だろう。


だが、試すとしてもいつ? どこで? 

それに、万が一魔法が不完全で、身体の半分しか入れなくて……考えただけでも恐ろしい。

基本は大事だ。地道に巻き舌を練習する。それしかない。


夏も終わりの頃、俺はめでたく十四歳になった。

「やっと十四歳、だって? お前また大きくなってないか?」

確かに今では、百九十センチ近くまで成長してしまった。

いつまで伸びるんだろう。


俺のような背丈の奴は、この神殿にもいる。男の司祭は大柄な人が多かった。

だけど十四歳でこの背丈はいないようだ。


この間聞いたところによると、ここの奴らは、卵を一回しか飲まないそうだ。

俺は三回半飲んだ。それが原因かも知れない。

一個目で力がついて、はねるように飛べたし怪我も治ったけど。

その後は目に見えた変化は感じられない。

強いて言えば魔素が感じられるようになったくらいか?

確かあれは二個目の時からだった。


では、パヤン先輩と卵を分けっこして半分飲んだときは?

三個目の時はどうだった?

分からない。二個目と三個目の時の卵は魔素が詰まった卵だった。

それなのに効果がないということは、卵は何度飲んでもそれ以上は効果がない――ということなのかも知れない。

考えていたら頭が痛くなってきた。もう考えるのは止めよう。



パパスは、ベルーダに言われて呪文をコタルㇽッロに教えた。

なぜ司祭様は、コタルㇽッロを贔屓するのだろう。

俺には教えてくれないのに。

「パパス、コタルㇽッロをちゃんと見ていなさい。どんな異常な魔法を使うか。知りたいのよ」


そう言われているので、この頃はコタルㇽッロにへばり付くように行動を共にしている。

サンクチュアルへ行く時も、おいらの隣を走らせているのだ。

コタルルッロは、怪しい奴だ。だから俺は気を抜かないようにしている。顔は変だし以前は言葉も変だった。妙に人なつっこい部分も気に食わない。

すぐに馴染んでしまって、皆の仲間に入り込んでしまう。

人見知りのおいらには、悔しいが真似出来ない。


休憩時にはそれとなく、コタルㇽッロに司祭様から聞いた受け売りを話す。


「魔の力には、受入れる器が必要なんだ。人によっては受入れられない奴もいる。感応できなければ魔の力が出ない。ベルーダ様は闇と無属性に強く感応されるんだ。この間来た男の司祭は、火と水に……適性……親和性? あれ、感応だったかな……があるんだと」


「ふーん、そう言うことだったのか」

コタルㇽッロはすぐに理解したようだが、おいらは自分で言っていることの半分も理解できない。


「お前、分かるのか?」

「え、まあ、何となく?」


その後は四階層で魔核採取をした。

相変わらずコタルㇽッロはすごい数の魔核を採集している。

じっと観察すると、迷わず歩いて魔核を手に取る。

そして立ち上がり首を廻らす。

その後、目を一点に据え、その方向に飛ぶように走って行く。


普通は何回も黒い水を被るのに、コタルㇽッロはそれが全くないのだ。

これはなにか隠している証拠ではないのか。とんでもない裏技があるのに態と隠して、俺たちになにか危険な事をを企んでいるに違いない。

――早速ベルーダ様に報告だ。


サンクチュアルから戻り、さっきのコタルㇽッロの様子を早速報告する。

「だからあいつは危険だっておいらは思うん――」

ベルーダ様はおいらの話を半分だけ聞いて驚き、突然、椅子から立ち上がった。


「なんていうこと……魔素感知能力があるの! コタルルッロ!」






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ