41 ご褒美のお裾分け
魔女のおばさんからもらった、蜜がタップリ染み込んだ巣。
「これ、俺一人で喰ってしまっても良いのか?」
ぺぺが、物欲しそうな顔で見ているので分け合って食べる。
「うんめぇなぁ!」
「ウン甘い」
手が蜜でベタベタする。手から舐め取って口の周りもペロリとする。
「半分残しておいて、みんなにもあげようか?」
「おまえって、良い奴だな」
一人で食べてしまってもよかったが、今後のこともある。
パパスにもごまをすっておいた方が良いだろう。
俺には下心がたっぷりあるんだ。良い奴なんかではないな。
この採集係の家は、三人部屋になっていて、個室とまでは行かないがそれぞれのスペースはあった。
そして食堂は広い空間が設けられている。
そこへ集まった皆に蜜を出して見せた。
皆は、歓声を上げて食べ始めたがパパスだけは、食べない。
そっぽを向いて剣の手入れをしていた。
ぺぺは俺の耳元で、コッソリ教えてくれる。
「あいつはベルーダ様の信者だから。焼き餅焼いてんだ。気にすんな」
「へえ、あのおばあさんが好きなのか」
部屋に入ってから、またぺぺが教えてくれる。
「俺たちはみんな孤児だ。街の孤児院で司祭様に選ばれてここへ連れてこられて、感謝している。特にパパスは、ベルーダ様を親のように慕っているんだ」
そうだったのか。俺には両親が揃っていて、そんな境遇の人の気持ちが分からなかった。
他人のおばさんでも、親みたいに感じてしまうんだな――ただ、そう思った。
※
数日経った頃、ベルーダとは違う司祭がきた。
珍しい男の司祭だ。
ベルーダより一段低い司祭だとぺぺが耳元で教えてくれる。
「良いか、君達。君達のような境遇には滅多に教えてやれないような貴重な魔法だ。一度しか言わんから、よーく聞け!」
偉そうな奴だった。彼が教えてくれる魔法は「火」を吹き出させる物と「水を」出す魔法だそうだ。
火はともかく、水は覚えておいた方が良い。あの砂漠はヤバい。
サンクチュアルに入るためにも必要な魔法だ。
「でも何で教えてくれる気になったか……だな」
ぺぺが何気ない調子で疑問を口にする。
「採集人が減ったからさ。これ以上減ったら、困るのは神殿だ」
ぼそりとパパスが答えた。
滅多に神殿を批判するようなことを言わないパパス。
何かあったのだろうかと勘ぐってしまった。
「こら! そこ、ちゃんと聞いてるのか。教えてやらんぞ!」
「「「「フグṙレンバルṙṙṙ・エルṙṙディア」」」」
「……ふぐれんばる・えろであ」
「「「「アフロṙスセレṙṙ・エルṙṙディṙア」」」」
「あふろすせれ・えるだー」
「「「「フグṙレンバルṙṙṙ・エルṙṙディア」」」」
「……ふぐれんばる・えろであ」
「「「「アフロṙスセレṙṙ・エルṙṙディṙア」」」」
「あふろすせれ・えるだー」
「おい、平たい顔! めちゃくちゃだな。フグṙレンバルṙṙṙ、だぞ、ルṙṙṙ!」
「ふぐれんばるるろ、るろ?」
「チッ、巻き舌ができんのなら、魔法は無理だな。魔法は発声が第一なんだぞ!」
クッソー。何で俺の舌、巻けないんだ!
自分の舌なのに思い通りにならない。
俺の他の採集人たちは皆、火を出したり、水を出したりし始めた。
俺だけ出来ていない……。
部屋でも自主練した。
ぺぺに見本を聞かせてもらってもどうにもならなかった。
「コタルㇽッロは、まず、自分の名前を正確に言えるようになってからだな」
……俺の名前はコウタロウだ。
お前こそ俺の名前を正確に言えよ。




