40 不思議な異邦人
「今日一日でこんなに……」
ベルーダは、あの異邦人コタルㇽッロがこの殆どを探し出したと聞き、眉をひそめた。
――彼を詳しく鑑定してみないとダメね。
ベルーダにとっては異国の顔立ち。そして年齢に似合わない体格。
あまりにも異質な言語。隠れた能力があるかも知れない。
魔法の知識では他に類を見ないこの神殿ではあるが、魔法の体系が出来上がったとは言えない。
まだ、発見されていない力が有るかも知れないのだ。
”ヴィーダ”は魔核だ。
魔物、ベスタを生み出すが、魔素が少ないと消えてしまうもの。
卵のような見た目で、一年も生きられない不可思議なものだ。
出来たては魔素がたっぷり入っていて核が未熟。
核が成熟すると、自らベスタに変化するものもあるし、獣に取り付いて擬態したりもする。
どういう基準かは分かっていないが、変化せずに消えていくヴィーダもある。
その変化できなかった、ヴィーダを私達は利用するのだ。
その中でも、滅多に見つからない、魔素がたっぷり入った未成熟のヴィーダは希少だ。
それが、こんなに見つかるとは。
今回集められたヴィーダはまた特権階級へ卸されるだろう。
春の祭事に漏れてしまった子ども達の親が、騒いでいる。
丁度良い。彼らに恩を売っておけば、今後何かと助けてもらえる。
大司祭様も喜んでくれるだろう。
街の孤児院へ行き、採集人候補も見つけてこなければならない。
一人、一生に一度だけしか受取ることができないヴィーダ。
その幸運も巡ることなく過ぎていくものが殆どなのだ。
成長期が過ぎれば効果は限定され、大した力を発揮できない。
何という幸運に恵まれたのだ。今年の子ども達は。
今回の褒美を渡すと言う名目で、コタルㇽッロを部屋に招き入れた。
彼は緊張しているようだ。緊張を解くために、薬草茶を出して飲ませる。
コタルㇽッロが、ぼんやりし始めるのを待つ。
目の焦点が合わなくなり、薬が効き始めたのが分かった。
「少しだけ、見させてね」
「……?み……る……いいよ」
ベルーダは、鑑定を掛ける。
鑑定は、被験者の意識が邪魔をすれば見る事が叶わない、繊細なものだ。
こうして意識がばらけて緊張が解けた状態でないと効かない魔法だった。
コタルㇽッロの魔素には通じているベルーダ。
今回の鑑定はするりと馴染む感覚があった。
「魔素は……大きい。一体どうすればこんなに」
年齢の詐称はなかった。確かに十三歳だ。
夏に十四歳になるというのも本当だろう。
でも、妙に魔素が馴染みすぎている。
魔核を取り込んでから何年も経つ司祭と同じだ。
「まさか、この子は十歳以前に魔核を取り込んだの? なんていう危険な事を……」
子供は自我が確立していない。あまりに早く魔核を取り込めば、反対にベスタと変化する恐れがあるのだ。
鑑定は終わった。だが、かえって疑問が増えてしまった。
間もなく、コタルㇽッロの目が焦点を結び始めた。
「あれ、寝てたのか……す、済みませんっ!」
「良いのよ、疲れていたのでしょう。さあ、これはご褒美よ」
ベルーダは微笑み、木箱を差し出した。
滅多に口に入ることがない”蜜巣”。
十センチもある塊が木箱に入れられて手渡された。




