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24 穴の活性化

次の年の、冬もまだ明けぬその日。

爽やかな風が吹き抜ける執務室に、突然兵士が飛び込んできた。


――穴、活性化の兆しあり。


兵士からもたらされた報告が、ソク・タラや側近たちの心を揺るがした。


「前回討伐より、まだ六年しか経っていないのだぞ!」

「見間違いではないのか?」


あまりにも思いがけない衝撃。

そして、またあの悲劇が繰り返されるという不安が、皆の心をざわつかせた。


ソク・タラは、側近全員を集めた。

今後の魔物の発生予測、討伐隊の割り振り――決めるべきことは山積みだった。


「今回の、第一次討伐隊には。コウタロウ、お前も加われ」

「……はい!」


ソク・タラの過去の経験によれば、今はまだ、じわりと魔物が湧きだしている程度のはずだ。

討伐隊は、その魔物たちを協力して屠れば、問題なく対処出来る時期でもある。


この後、時間を掛けて魔物が増えていくはずなのだ。

今のうちであれば、何か分るかも知れない。

王が明かした、”丸い球”についても。



俺は討伐隊に参加することが決まった。

あの遺跡を見たときから、俺の心は決まっていたのかも知れない。


急いで、貯め込んでいた金をまとめ、信頼できる奴に預けようとした。

だが、結構な大金――数年分の給料まるごと。一体誰に託せば良いのか。


「金を両親に預けたいんだ。誰に頼めば良いか教えてくれ」

「……金? 自分で持っていれば良いじゃないか。他の奴に預けるなんてどうなってしまうか、分らないぞ」


「でも、もし帰れなくなったら、俺の両親に持っていけない……」

「……こんなこと、俺じゃ判断できない。分った側近長に聞いてやる」


側近長は笑いながら言った。

「コウタロウ。第一次討伐隊の目的は調査と調整だ。拠点を構築するためのな。活性化初期は魔物自体、少数しか出ないと聞く。心配しすぎだ」


結局、金の話は聞き入れてもらえなかった。

仕方なく、俺はその大金を身体に縛り付けて持って行くことにした。

「あの遺跡の場所からなら、俺の足で二時間かからず村へ戻れる。隙を見て、父ちゃんに渡せるかも知れない……」


以前、金を持っていってもらった船員は、今、船の上だ。間が悪すぎた。


バタバタと遠征の準備に取りかかり二日後には軍船で出発することになった。


今回も、前回の視察隊同様にランちゃんで行く。いや、ランチョンで行く。

後から平底船で荷物を運び込むという。

陸からは徒歩隊が二百人で移動してくる。

今後の穴との戦いに備え、拠点をつくり、順次兵を入れ替えるのだそうだ。

これだけの準備や予定を、ソク・タラは、あっと言う間に構築した。


徒歩の雑兵たちは、農奴から徴兵した者達だ。

その中には俺の同郷もたくさんいるし、同じ村出身もいる。

数年前までは俺も同じ雑兵だった。

それが、トントン拍子に出世街道まっしぐらだ。


何でこうなってしまったか。


前回の視察隊で、下手に目立ってしまったせいだ。

穴を見たくて、ソク・タラに俺は自分からアピールしまくったからだ。

身体が人一倍デカいことも要因の一つだろう。

何にしても、全部自分が引き起こした結果だ。



俺は、前回と同じくランチョンに乗り込む。

ランチョンは、幅四メートル、全長二十メートルしかない。

喫水も浅く一メートル半しかない。

だから船は不安定で心細いが、その分速度も出るし、浅瀬にも強い。

それが、港に三艘浮かんでいる。その中の装飾が一番凝ったランチョンに、俺は乗る。

だが、今回は漕ぎ手ではなく、ソク・タラの側近として船尾に陣取っている。


乗組員の内十人は漕ぎ手。

指揮官一人。副官一人。舵取り一人。見張り一人。

側近と護衛(俺ここ)三人。戦闘要員四人。

総乗組員二十一名。

小さな船だからこんなもんだ。だがスピードが違う。平底の大型船の倍の速さで進むことができる。


要するに俺達は先行隊。

調査や偵察。細々とした取り決めを考える役なんだ。


漕ぎ手には前回一緒に漕ぎ手として乗り込んだ、パヤン先輩がいた。

先輩は気軽に俺に声を掛けようとして、クナイ・トム・チェンを見て、そして俺の側近の制服を見た。


先輩は、上げ掛けた手を静かに下ろして目を背けた……。

俺は真っ直ぐ前を見て気付かない振りをする。

懇意にしてもらった先輩に対するせめてもの……気遣いだった。


だけど、俺は出世したと言えるのか? 確かに給料は良い。


「金で命は買えない」――父ちゃんが言った言葉が、今頃になって重くのしかかってくる。







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