22 式典
俺は王宮の大きな広場に立っていた。ここは練兵場だ。
大きな儀礼や式典なんかが行われる特別な場所だという。
今日は、兵達が日頃鍛えた成果を披露する模擬戦が行われる。
王族も、特別に設けられた席にお座りになりご覧になるという。
「王の護衛は誰がやるんだ?」
俺はぽつりと独りごちる。
というのは、俺はクナイの最高司令官の護衛だ。
この国では一番位が高い戦士の護衛となる。
では――王の護衛は一体誰がやる? 素朴な疑問が湧く。
隣にしゃっちこばって立っていた先輩は、前を見たまま、答えてくれた。
「クナイ・コンレイ。特別階級、俺達とは枝分かれしている」
そうか。クナイ・コンレイというのは、近衛兵的な地位なのだろう。
クナイ・トムとは同列の位、ということなのだと納得した。
こんな事が気になるのは、俺はすでにクナイ・トムの正式な位に任ぜられていたからだ。
年を誤魔化しているので、おおっぴらにはできないが、給料はそれなりに支払われている。
――父ちゃんさえ受取ってくれるのなら、幾らでも仕送りできるのに……。
今は、金は使うことなく、ただ貯まっていくばかりだ。
というか、これまでも使う機会がな刈った。クナイの時は、俺が十一歳で幼すぎて誘ってくれなかった。
クナイ・トムになってからは、兵舎の外へは行かせてもらえない。
先輩たちは外へ行けるのに――俺の年がバレない為の用心なのか?
あれからもう一度、あの親切な船員に頼んで持って行って貰ったが、やはり父ちゃんからそのまま返されてきたのだ。
「その内、村に帰ったら、大金をまとめて持って行ってやるさ!」
外に出してもらえないのに、村へ行けるのか……俺が側近になれた、という違和感が俺を不安にさせた。
俺の斜め前にはソク・タラが座り、そのすこし離れた特別席に王族たちが座った。
王族たちの周りを取り囲むように。クナイ・コンレイたちが、白と銀色の制服姿で立っていた。
練兵場では鍛え上げられた戦士たちが、模擬戦を繰り広げている。
団体戦や、個人戦。各十組、総勢二百人が出場していた。
その中で最も良い成績を残した者達だけが、王の御前に立つことを許されるのだ。
その様子を端から俺は冷静に見たいた。
「この兵達は、対人戦には長けている。でもこの国には攻めてくる国など聞いたこともない。一体何に対して気構えている?」
俺は、魔物など見たこともない。
活性化した穴から魔物が出るといわれているけど。
俺の村からすぐにあった穴――それなのに、魔物が押し寄せたことはなかったのだから。
魔物の被害を受けたのは、戦士だけだった。
サンバラ国から、穴は遠く離れているから、都には被害はない。
王は、何の為にこれほどの手間を賭けているのだろう。
模擬戦が終わり表彰式も終わった。
最後に王のお言葉があった。
「我らには、神より授かった貴い使命がある。それに備え、日頃研鑽を積む其方等、あっぱれである。この後も国の柱となれ。励め」
会場全体からオーーーッという雄叫びが上がり、空気が震えた。
式典も滞りなく終わり、日常が戻ってきた。
冬が間近に、足音を立てずに近づいてくる。
サンバラは南国だが、それでも冬は来る。
過ごしやすくなる、と言えばいいのか。
天祖国の俺の村では冬が過ぎて春が来ると、たまに餓死者が出るのだ。
だがここではそんなことはないだろう。
この冬が開ければ、また新たな一年が始まる。
――どうか、父ちゃん母ちゃん無事に冬を越してくれ。
俺は信じてもいない神に祈った。




