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21 文字の勉強

ここに来て数ヶ月経つ頃には、文字も読み書きできるようになった。

頭の悪い俺でもこんなに早く仕上がったのは、前世の文字とシンクロしていたからだ。

単語は違うが、文法は同じ。

そして、漢字などというシチ面倒くさいものはなかった。


例えるなら、すべてひらがなか、カタカナで書かれているような物だった。

五十音字さえ覚えてしまえば、後は”音字”だけだったのだ。


文字も読めるようになったし、汚い文字だが書けるようにもなれた。

俺はるんるん気分のまま、その夏十二歳になったと側近仲間に話して聞かせた。

それで、ちょっとした騒ぎになった。


ソク・タラの側近長に呼び出された。

滅多にこの執務室には呼ばれない俺だ。

夕食を運び入れたり、皆より早く起き出して部屋の掃除をするとき以外は側近部屋で待機だった。


話し声はかすかに聞こえるのだが、俺ができるような仕事がなかった。

上司たちが仕事している時間にここへ入ったのは初めてだった。

だから、今執務机の前に立たされて、緊張しまくった。

目の前にはソク・タラと側近長が、おっかない顔で俺を睨んでいた。


――俺、何かしたか?


なにもさせられていないのだから、心当たりなどあろうはずもないのだが。


「コウタロウ、君はなぜ今まで黙っていた。何か魂胆でもあるのか?」

「軍の決まりでは、確か、側近になれるのは十五歳からだ。お前はここに何のもくろみがあって入り込んだ!」


二人して詰め寄られても、俺には答えられない。

だって、呼ばれたから来たのであって、自分から入りたくて来たのではないのだから。


「お、俺は、チャム師に、年を聞かれなかった……です」


「……」

ソク・タラは言葉に詰った。

側近長がそれを横目で見ていたが、何も突っ込めないでいる。

「と、兎に角今後は大事な事は、逐一報告するように。戻っていいぞ」

側近長が機転を利かせたのか、そう言ってくれたので、俺はつい、言ってしまった。


「あの、元の兵舎へ帰っても良い、ということですか?」

「……いや、このままここにいて貰おう。下がりなさい」

重々しく、ソク・タラが許可を出した。

俺にとっては言いがかりをつけられて不満はあったが、取り敢えず撤退する事にした。


その後、側近長に内密で呼ばれ、

「対外的には十五歳として皆に接するように、分ったな!」


ということで俺は、年を三つさばを読むことになった。

まあ、身体は馬鹿みたいに大きいから、十二歳と言っても誰も本気にはしなかっただろうが。


俺はまた背が伸びた。

一体どれほど伸びるのか。前世の百九十センチくらいで止って欲しいと、この頃、とみに思うのだった。



仕事らしい仕事ができた!

 ソク・タラが、クナイの総訓練の視察することになり、その護衛として俺も付き添うことになった。


先輩から正式な戦ごろもを渡される。めちゃくちゃ格好いい。

とんがり帽子は相変わらずだが、肩の部分が反り返った独特な形の鎧。

腰の辺りにはスカートをピンと張らせたような甲冑の変化版を着せられた。

先端が反り上がったブーツも、篭手も皆新品だった。


短めの剣を腰につけ、クルリと回ってポーズを決める。

それを――まだまだガキだなという顔で、先輩は見るけど気にならない。

初めて身につける半儀礼装は、あまりにも豪華に見えた。


「お前、ずいぶん浮かれているが、チャム師が危険に陥ったら――身体を呈して守る、それが仕事だ。分っているのか?」

「ウン、任せて」


俺は、防具なしでも何となく”行ける”と感じていた。

ハッキリとした根拠はない。だけど、俺の身体はチートだから。


胸を張っている俺を、「仕方のやい奴だな」と先輩は諦めているようだった。

この頃、先輩たちにも可愛がられるようになった。

側近は十八歳から上の年齢だ。俺の年は、この側近たちは知っているので、弟扱いになった様だ。

身体が一番大きな、”犬っころ”みたいに見えるのだろう。





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