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19 不思議な卵

拠点の港に着いたソク・タラは、副官らを集め帰還の指示を出す。


バタバタと忙しなく準備をする兵達を見て、副隊長と話し合っていた。


「あの、少年、コウタロウといったか。あれは年はいくつだ?」

「えーと、新兵であれば十五歳くらいではないでしょうか。身体は大きいですな」

「あれを私の側近に取り立てる。配置転換の手続を早急にして置け」

「……はっ!」


副隊長が離れていき、ソク・タラは一人考え込んだ。


――あれは、異常だ。遺跡には誰も入ることが叶わないのに、なぜあの少年は入っていけたのだ。気を付けて見ていなくてはならん。もし、魔物の擬態だとしたら……。


※ 


俺は、また漕ぎ手要員に戻された。

先輩と同じように櫂坐に座る。


今回の俺は、いっぱしの漕ぎ要員だ。俺の前に先輩が座り、交代の漕ぎ手は力の足りない兵の側で控えていた。


以前と同じようにかけ声に合わせ漕ぎ出すが、すぐに「漕ぎ方やめー!」と声がかかる。


「何かあったの?」

「追い風が、いい具合なんだろうさ。帰りは楽ができそうだ」


往路は三日かかったのに復路は二日だった。

風がいい仕事をしてくれたようだ。

俺の仕事は川を遡るときまで閑だったくらいだ。


港に着くと、先輩に教わりながらオールの手入れをする。


オールを甲板に運び日陰に乾かす。

ひびや割れがないか確認し、油をすり込む。

このオールにすり込む油が、天祖国から輸入していると聞き、遠くの故郷を思い出した。


エゴマ油というらしい。


エゴマは寒冷地に強い ため 北国で自然に生えるそうだ。

安価で大量に採れ、貧しい天祖国の大切な産業だ。

エゴマ油は、油が膜を張って海水を吸収するのを防ぎ、乾燥による割れを防ぐ。

オールに使われている楠はよくしなる。そのしなりを保ってもくれるのだ。

そして、虫除けにもなる、優れものだった。


丹念に布ですり込んでいると、楠のすっきりした香りが鼻に抜ける。

やや樟脳に似ているが、嫌な臭いではなかった。


俺は兵舎に帰り、荷物の整理をした。

ずた袋には、雷鳥もどきの卵が入っている。


小腹が空いたので、卵に人差し指で、こんこんとたたき、穴を開けた。


普通の卵なら、割れてしまうが、これは雷鳥もどきの卵だ。丈夫なのだろう。


穴に以前のように小刀を差し込み、ぐるぐるする。「コキッ」と音がすれば、飲み頃だ。


卵を逆さに持ち上げゴクリとひと飲み。

喉をシュワシュワ通り抜ける心地よさが溜まらない。


「コーラみたいな刺激が溜まらん!」


部屋に同室の見習いが入ってきたので、勧めてみた。

そいつは、少し匂いをかんだだけで逃げて行ってしまった。


俺は、クンクンと嗅いでみたが、気になるほどでもない。

頭をかしげながら、そのまま飲みきった。


次の日、何も変わった感じはなかった。

俺のおかしな状態は、あの卵のせいかもと思っていたが違うようだ。

何となく気が抜けて――やっぱチートなんだろうな、と考え直した。


一つだけ、あれから暫くして気が付いたことがある。

北の、あの遺跡の位置がハッキリと感じられるようになったことだった。

「これが新しい力? 役に立ちそうもないな……」


毎日がまた単調に過ぎていった。

同室の奴らは、月に一度の休みに街へ繰り出す。だけど俺には声がかからなかった。

「お前まだ子供だからな、ちょっと……誘えねぇ」

そう言うのだ。俺は首をかしげて――酒も飲めないからな。

だから少しばかりの給料は、貯まる一方だった。


俺は、それから一週間後また配置転換することになった。

今度は、ソク・タラの側近だという。

「側近……なにをする仕事だ?」




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