15 兵舎
兵舎は、八棟縦一列に列んで建っていた。木造で、箱形。
昭和の小学校みたな建物だった。
一棟に百人ほどが寝泊まりできるらしく、一階に食堂や倉庫、水場が集中している。
二階と三階は、兵士の寝所のようだ。
俺達は三階に連れて行かれた。
階段を上がると、両側にずらりとドアがある真ん中の廊下を奥へ進んだ。
奥からドアを開け、一部屋に六人ずつ入れられる。
俺の部屋は、奥から三番目のドアだった。
部屋の中は十畳くらいで、両端は三段ベッドが据えられている。
つまり、六人寝れるということだ。
真ん中には細く通り道になって行き当たりは、小さな跳ね上げ式の木の窓になっている。窓側に小さな机と椅子が二脚ずつ置かれてれている。
俺は、いち早く自分の寝床を確保した。
一番下の段が良いと思ったのだが、他の子らは上段がよかったみたいだ。
喧嘩もなくあっさりと決まってしまった。
「お前達、今着ているぼろを脱ぐんだ。”戦ごろも”を支給する」
俺達が今来ているのは、確かに襤褸だった。
継ぎ接ぎだらけで、滅多に洗濯しないから匂いも相当な物だろう。
鼻が慣れてしまった俺には感じられないが。
然も、ノミやシラミが、縫い目や中綿に潜んでいる。
荷物は風呂敷一つだけ。中身は大事な金と、着替えだけだったが、金以外の着替えも剥取られてしまった。
「オマエ等、これから身体も育つ。これは処分する」
上官のクナイは、俺達の荷物をまとめて廊下に放り投げた。
「不衛生だと病気が蔓延する。集団生活にとって流行病は一番厄介なことなんだぞ。だから、すべて寄越せ」
渋々、荷物を差し出し、俺達は着替えさせられた。その後 水浴び場へ連れて行かれ、身体を洗うように命じられた。
この国は暖かい。というか昼近くになる頃は暑いくらいだった。
だから、水は冷たく気持ちいい。
上官に手渡された堅い石けんを、頭や身体にこすりつけ、何度も洗い流した。
初めは泡など立たず、数回洗ううち泡立ってきた。
足下には茶色くなった水が流れていった。
「おまえら、明日丸坊主にする。オマエ等の髪には、虫がまだいそうだからな。分ったか!」
「……」
村の生活では気にならなかったが、確かに不衛生だった。
俺は、前世の生活からずいぶんとかけ離れていたんだろう。
村の生活にすっかり馴染み、不快だと考えなかった自分に、いまさらながら気が付いた。
※
丸坊主になった俺達が連れて行かれた先は武器庫だった。
壁際には、百八十センチはある棒が数百本立てかけられている。
両端にドアカバーみたいなクッションが付いていた。
その棒を一本ずつ手渡される。
身長によって長さが違うみたいだ。
俺には長めな棒が渡された。
「これはサンティ棒、まあ、訓練棒だな」
上官はそう言うと、軽く構えて見せた。
「だが、これでも使い方によっては殺傷力があるんだ」
上官がそう言いながら模擬武闘をしてみせた。
サンティ棒はビュンという風切り音がして、子らの鼻先をかすめる。
思わず俺達はのけぞった。
「は、は、は、さあ、訓練場まで駆け足だ。サンティ棒は肩に斜めに担げ。後ろの奴に当てないよう気を付けろ!」
訓練が始まった。
魔物との対決に備えるためだと説明される。
――魔物、どこにいるんだ?




