14 煌びやかな都
船旅も三日目になった。
俺を乗せたサンバラの船は、南へ南へと進んでいる。右手には絶えず陸地が見えているのは、沿岸に沿って進む航路なのだろう。
船員たちとも仲良くなり、船の構造や操作の仕方など簡単なものを教えてもらったりして、何もない海の上でも退屈とは無縁だ。
俺と一緒に乗船してきた子らも、すっかり日に焼け、当初の心細さも忘れているようだ。
船員たちは、上着を脱ぎ上半身は裸、ザックリしたベストを着て、のんびりつりをしたり、気ままに海に入ったりする。
「コウタロウは本当に十歳か? ずいぶんデカいぞ」
「……まあね、急に大きくなって俺も戸惑うくらいさ」
船尾でつりをしていた船員が、
「子供ってぇのはそんなもんさ。ちょっと見ねぇうちにおっきくなっちまう」
三十歳くらいの船員だ。彼には子供がいるんだろう。
父ちゃんの顔が浮かび、鼻の奥がジーンとなった。
船に乗って一週間が過ぎ、間もなくバドゥン港に着きそうな頃、船員たちが忙しくなった。
甲板を走り回る船員の邪魔をしないよう、子らは、またあの暗い船室に大人しく収まった。
俺は心配していた船酔いもなく、至って季候もよかったせいか、
「船員も楽しそうだな」
と船縁に身体を預けて近づく港をじっと見ていた。
船員たちが俺を子供扱いしないお陰で、こうして甲板で外を見ることが出来ている。
手伝いにはならないが、邪魔にもならない、と言うことなのだろう。
これから寄港するバドゥン港は大きい。
この距離から見ても大きさはハッキリ分った。
天祖国の港などまるで漁港だ、比べ物にならなかった。
「ここで下船するの?」
「いんや、ここでは荷下ろしだけだ。これからトゥラン大河を遡ってサンバラの首都へ行くんだ」
てっきりここで下船するものだと思っていたが、このまま五日かけて川を遡ると聞き、俺は驚いた。
けれど――まだ船旅が続けられる――と思うと、心が少し浮き立った。
「そうか、首都は内陸にあるのか……」
川を遡って船は進む。
海とは水の色がまったく変わって、茶色くなった。
三日目に入る頃から、川の流れが強くなり、岸では牛が太い綱を引く姿が見えるようになった。
大河を遡るには、こういう進み方もあるのだと初めて知った。
遠くの方に屋根が見えた。反り返った何段も重なる屋根だ。
「五重塔?」
屋根は太陽に照らされ、きらきらと光を反射している。
港を取り囲む家々は、木造で粗末な造りだった。
川岸に家々が立ち並んでいるのが目に入る。
護岸が、整備されて灰色の石積みがされていた。
所々に階段が在る。階段の側に、木の杭が数本見えた。
「あれは?」
「ああ、漁師たちが使うクネだ。舟をつける場所だな。もうすぐ首都サンバラ港に着くぞ」
※
港に着くと俺達は、すぐに迎えの”クナイ”二人に声を掛けられた。
クナイというのは、この国の戦士階級の名前だそうだ。
迎えのクナイは十代後半くらいの青年だった。
港からは、七メートル幅の石畳が真っすぐ伸びていた。
ここを一キロ進めば王宮があるらしい。
俺達は大通りを使わずに、クナイに導かれ脇道へ入った。
脇道に石畳は敷かれていない。
三メートルほどの土がむき出しの道は、所々泥濘んでいた。
村と変わらない周りの粗末な家々は、生活の匂いが感じられる。
家の間に渡された縄に洗濯物がぶら下がり、煮炊きの匂いが何処からか漂ってくる。
俺にとって、なじみ深い風景だった。
子らの歩調に合わせ、ゆっくりと三十分ほど歩くと広く仕切られたところに着いた。
生活の匂いが遠のき、どこか金臭い匂いがしてきた。
ここがクナイが住む区域だと言われた。




