120 エピローグ
毎日ベルーダの研究に付き合い、魔法陣を描く。
俺の書いた漢字の意味を細かく聞き出すベルーダに、つい前世のことを口走ってしまった。
「何ですって! あなた、違う世界がもっとあるというの?」
「う……生まれ変わってきて、そこがベルーダの言う異界だ。俺は文明がもっと進んだ世界に生きていた」
「その世界の言葉……そうなのね!」
「一概には言えない。違う言葉はもっとあった。たまたま俺の国で使っていた言葉だ」
「そう……でも、面白いわ。この複雑な形の中に複合された意味がこもっているなんて」
ベルーダは、治癒の波形について俺に聞いて意味を知りたがったため、熟語についても説明しなければならなくなったのだ。
――何で俺はこうも馬鹿なんだ。黙っていればバレなかったのに。
「あなたの世界の、前世のことを聞かせて」
俺は口を噤んだ。これだけは言ってはダメだ。
この世界の成長を歪めてしまう恐れがあるから。
「……」
「言いたくないのね。いいわ。でもいつか聞かせて。誰にも言わないから」
いや、ベルーダはそれを元に何かを見つけるだろう。
俺は死ぬまで言わないと決めた。
そこへパパスが飛び込んで来た。
「ベルーダ様!サンクチュアルが、また、変わってしまいました!」
俺たちは、サンクチュアルの門の前で立ち止まる。
「門が小さくなった? これが変化……」
「違うんです、中に入れば分かります」
二人並んでやっと入れる大きさになってしまった門をくぐると、石造りの通路になっていた。
ほんのりと光を発する通路。
どこまでも複雑に入り組み先に進むのは困難だ。
――これって……本当のダンジョンだ!
俺はダンジョンに毎日潜った。
これはいつかラヌビスに語って聞かせたゲームの造りに似ている。
――ラヌビスはここで生きているに違いない。
ダンジョンの最下層に行けば、ラヌビスに会える。絶対俺を呼んでいる。
ダンジョンには魔物が出てくる。
当たり前だ。ダンジョンなんだから。
だけど、その魔物は魔核を落す。小さな小さな魔核だ。
小指の爪ほどしかない。俺はそれを腰にぶら下げた巾着に入れ、先を目指す。
後ろにはぺぺがついてきて、紙に通路の地図を書いている。
パパスは盾を持って、魔物をさばいている。
ここの魔物は変わった。異能たちや魔法使いにも襲ってくるようになったのだ。
魔核も、今は卵とは違って、結晶のようにキラキラ輝いているのだ。
そして魔核には色がついている。
ベルーダが言うには、属性が付いているそうだ。
今、この宝石のような魔核の利用方法を研究している。
今までのように魔核を取り込めなくなったが、若しかすると、もっとすごいことになるかもしれないというのだ。
どんなすごいことになるのか、俺には想像もつかないが。
とにかく今は神殿では総力を挙げて研究をしている。
魔法陣の研究も進んでいるようだ。治癒だけでなく他の魔法にも利用出来ないかと、皆血眼になっている。
俺には興味がない。それより、 ヌエタラの方はどうなったのか。それが心配だった。
戻りたくてももう戻れない。チュム師に不義理をしてしまったし、黒い玉が変質してしまって、通り抜けることも叶わなくなった。
俺は気を取り直してダンジョンに潜る。ここは不思議に満ちている。
ここのダンジョンは何層にもなっていた。
最下層はまだまだ先のようだ。
「コタルルッロ」
「何だ、なにかいたか?」
「これなんだと思う?」
これは宝箱だ!
ラヌビスのヤツ。粋な真似をしやがって。
俺の話を聞いて、作ってくれたんだな。
俺には、ラヌビスがニヤリとしているのが感じられる。
「会ったら、問い詰めてやるからな!」
ヌエタラのことも、そして……。
完
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