ラタナ・テセン
ヌエタラの空には、星が瞬いていた。
「コウタロウはどうしているか」
魔法の世界で、楽しく過ごしているだろうか。
ソク・タラ亡き後、私がヌエタラを率い、十年になる。
ヌエタラは、サンバラとの戦いで、痛手を負ったが、すぐに持ち直した。
ソク・タラは、開戦の折、敵の流れ弾に当ってなくなってしまい、一時は最悪の事態を覚悟したが、なんとか和平に持ち込めたのだ。
私の家族は、私が生きていたことを喜んだ。
しかし、サンバラ王は家族を人質に降伏を迫った。
私はコウタロウや、ソク・タラに誓いを立てたのだ。母上や親族には申し訳なく思うが、降伏は出来なかった。
その後、彼らはサンバラ王によって処刑されてしまった……。
魔法兵による小回りの利くゲリラ戦が功を奏して、サンバラには勝つことが出来たのだ。
折しもサンバラが飢饉が続き、国内も荒れていたことも助けになったのかもしれない。
その後、サンバラ王は、家臣によって暗殺されたという。
私は一切関与していなかったが、クナイ・トムの中には、苦々しく思っていた者が少なくなかった、ということだろう。
コウタロウがいなくなったあと、天祖穴は変化した。
魔物が溢れ出ることはなくなったが、魔法兵でも襲われるようになってしまった。
当初は酷く落ち込んだ。「やはり私では力不足だ」と。
だが、魔物は資源となることが判明したのだ。
これからのヌエタラは、益々発展して行くことだろう。
「コウタロウ。もう一度帰ってこい。私は待っているぞ」
……私は、あの戦いの痛みを抱えたまま、今日も空を見上げている。




