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115 魔法陣の発見

ベルーダは、研究にのめり込んでしまった。


「コタルルッロ! あなた、ここの神殿に泊まりなさい。どこへも行かないで。もしまた勝手にいなくなったら、今度こそ許さないから、分かった?」

「はいっ」


その後、ベルーダは俺を置いたまま部屋に籠もってしまった。

俺のことは眼中にないようだったが、恐ろしいので大人しくしている。


「やはり、魔女は怖いのう……」


ラヌビスもベルーダの剣幕にビビりまくったようだ。

あの時、こいつは、ぺたんと床に伏せてブルブル震えていたのだ。


「お前、次元の外から来たすごい生命体何だから、そんなに怖がらなくってもいいじゃないか。お前の力が認められて、こうなったんだぞ」

「おっかないものはおっかないのじゃ。あの魔女の力は不可解なのでな。儂には分析できん……」


魔素と電磁波では、まるきり違うらしい。

だが、俺はない頭で考えた。


――本当にそんなに違うものなのか?


振動、波形、音。

これらによって、俺たちの身体が癒やせるのなら、そんなにかけ離れていないのではないのかと。

一部屋を与えられて、俺たちは一緒に寝起きするようになった。

ラヌビスは、一日の最後に、木の姿に戻り充電する。

俺はその姿を見ながら、前世のことをラヌビスに語るのだ。


「俺の以前の世界は、科学が発達していた。科学なんて、過去の科学者が錬金術と呼んだものから発達してきたんだ。もしかすると、科学者は魔法使いで……魔法が、元はあったのかなぁ」


【どうだろうな。……儂の世界……ではただ知識を……溜め込む。……それが……すべて……であった】


時には犬の姿のラヌビスが、俺に前世の物語をねだる。


「迷宮は、ゲームの意味が強いかな。迷路みたいな空間に魔物という架空の生き物がいて、それを倒していく。そうすると、成長していったり、宝箱を見つけたりできて、ワクワクしたな」

「宝箱、とな。どのようなものじゃ」

「不思議な剣や、何でも入ってしまう鞄、怪我が一瞬で完治するポーション。そんなのが入っている。それを見つけるまでが面白い」


「ほほう、確かにな。面白そうじゃ」


そんな時間を過ごして一ヶ月が過ぎた。

その間、神殿の中庭と部屋以外はどこにも出なかった。


「コタルルッロ! できたわ。みて」


とうとう、ベルーダの研究が終わったようだ。

ベルーダによれば、紙の素材によって、耐久値が変わるのだという。

一番耐久テストに耐えられたのは羊皮紙だった。

次が俺が使っていた紙。麻紙は一番耐久値が弱く使えなかったそうだ。


「書き物には問題ないのだけど、魔法陣には使えないわね」

「魔法陣?」

「ええ、私が勝手に付けた名前。紙に図形を書いて魔素を流せば魔法が数倍の力を持つ。そしてまそのこうりるも格段に上がる」

「……それは技術革新……が起きたと言うこと?」

「いえ……そうではなくて、今までの魔法がもう一つの形を持ったと言う事かしら。魔法自体には変化はない。ただ使い方の幅が広がった……と言えばいいかしら」


俺は一瞬、またやってしまったかと恐れたが、革新ではないと言われてホッとした。


「これのいいところはね、属性がなくても治癒の魔法が使える、というところ。たくさんの怪我人や病気の人を治せるようになる。そういうことよ」


ベルーダは最初の被験者として、ナナを連れてきた。


「彼女の目が治せれば、これはもう月の神殿を揺るがすわ。光の属性が少なすぎて、助けられない人がたくさんいたのですもの……」


ベルーナは緑の髪の少女を見つめて話していたが、俺にはもっと遠くを見ているように感じた。

ベルーナがナナの目の前に波形が書かれた羊皮紙をかざす。

俺がやったように魔素だけを少しだけ紙を通してナナに当てた。

多分、ベルーダにも”終わった”と感じる瞬間があったのだろう。

ふっと力を抜き、紙を下ろす。

ナナの濁っていた目が、綺麗な緑色にきらめいたのが見えた。

ナナは緑色の綺麗な目を、目一杯開けてグルリと一周して周りを見まわす。


「ベル様! 見えます」


彼女の目は治った。そして、


「私、島へ帰ってもいいですか」

「ええ、これなら大丈夫。私も一緒にいって島の人達をもう一度治して上げたい。彼らは皮膚があばたになってしまって困っているもの」


俺には何のことか分からず、ただオロオロするだけだ。


「あの、島って?」

「ああ、スファル大陸に近い島がナナの故郷なの。帰りたいっていつも泣いていて……」


スファル大陸とはスファルタン帝国がある地だ。ラヌビスもピクリとするが、俺もピクリとした。

あそこには世話になったケムがいる。今頃どうしているか。



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