〔第69話〕列車で、けいちゅうっ!
今回は連合側の話です。
———————————————#####
ツグネとフブがトワイライト5000にて合流する更に前、連合の旧首相がベクター500機超を導入した大攻勢の最中、ダグラス•モニカは連合列車で頭を抱えていた。
旧世界を走行中の巨大列車、通称“連合列車”。
その中で3人が会議室で一つの机を囲む様にして座っていた。
「どぉーしたん最高軍事司令部総帥のダグラス•モニカさんやぁ〜。アンタから直々に呼び出しなんか珍しい〜やん。」
小さな体、細い腕グッと強く握れば折れてしまいそうだ。
頭に大きなボンボンを二つぶら下げたツインテールが特徴的だ。
服は白いチャイナ服を着ている。
この少女の様な女の名は“メイトン”連合の軍事的主力だ。
「せっかくひっさびさに列車に帰ってきたってのによぉ。ゆっくりさせてくれ。」
偉そうな態度で椅子に座る男の名は“ベック•ベック•ミル•ベック”。
ボサボサな髪の毛がやけにキマっているが、特にセットなどはしていないらしい。
いつも態度が悪い。
しかし、単独で周回移動都市の六防を相手できる程の強さを誇る連合でもトップレベルのチカラを持つ猛者だ。
『傾注…。』
そう言い放ったその男はサラサラな直毛の髪にセンター分けの髪型、目の下にクマをぶら下げ、スーツの様な軍服の胸に様々な勲章か下げられている。
名は“ダグラス•モニカ”。
連合という国で首相の次に偉い立場の人間だ。
——————バッ。
“傾注”ダグラス•モニカのその一言でメイトンとベックはダルそうに腰掛けていた椅子から立ち上がり背筋を伸ばして敬礼した。
——————シーン…。
しばらくの沈黙が続いた。
『…冗談だ。』
メイトンもベックも所詮、軍人だ。
ダグラス•モニカ程の地位の人間に指示されれば従わねばならない。
それが法治国家の序列だ。
敬礼を求められたならば、背筋を伸ばして敬礼をしなければならない。
例えそれが“休みの日であっても”だ…。
「チッ…。ほんまだるいわ〜…。」
「先輩、コイツボコしますか?」
メイトンとベックは敬礼を崩し、ダルそうに椅子へ腰掛けなおした。
『あぁ、悪い。メイトン。それにベックも。今はプライベートと何ら変わらん。あくまでも今は対等だと思ってくれて構わない。』
ダグラス•モニカはメイトンとその隣に座る不機嫌な男を見る。
「悪いと思うんならメイトン先輩に茶ぐらいだせやぁ。あぁあん?」
『これからお前らには周回移動都市に乗り込んでもらう。』
「ハッ無視かよ。」
「まぁベック落ち着きーな。あのダグラス•モニカの話やで?聞くだけ聞いといて損はないんちゃう?」
「先輩がそーいうんなら…。」
『連合はこの大攻勢で歴史的大敗をきす。そして恐らくその尻拭いを俺がさせられる事になる。それを見越してお前らには少し先の未来の話をしておく。』
「未来って…アンタ預言者かなんかなん?」
『俺にそんな大層な能力は無い。』
「ハッ、んじゃぁどーゆーギア持ってんだよ。テメェ。」
「ちょっと〜、ベック。一様目の前のコイツは司令部総帥なんやで〜。もっと態度ぉ気をつけんとぉ〜。」
「うっす、先輩がそういうんなら気をつけます。」
「えー冗談やん。」
「あ、うす。」
『ん゛ん゛…。お前らも知っている通り、俺にギアは無い。純人間だ。そして話の続きだが、ベックお前には運送業者の真似事をしてもらう。』
「いきなり何言いやがるんだ…。俺のギアはそんな万能じゃねぇよ。それぐらいお前なら知ってんだろ?」
『具体的には“超”弩級戦艦連合をトワイライト5000へ転移させろ。』
「…は?待て待て。待てよ。俺はビル一棟分転移させる事もできるがそーいうんは大体、雑な瓦礫の爆弾として使う時であって…」
「ほぉ〜ん、ダグラス•モニカ。アンタ、トワイライト5000に瓦礫の爆弾でも落とすん?」
『違う。お前にはビルの数百倍はある“超”弩級戦艦をトワイライト5000で運用できる様に転移させて貰う。』
「…んなもん、できる訳ねぇだろ馬鹿かテメェ。」
『できる。』
「だ、か、ら、馬鹿か?」
『ならば、何が揃えばお前はそれができると思う。』
「あ?あ〜…そりゃ転移させた時、座標が多少ずれてても戦艦が壊れねぇ様にクッションとして海とかありゃいいんじゃねぇか?戦艦なら多少浮いても沈んでも海面に浮き上がるからな。」
『なら、問題ない。』
「は?周回移動都市のトワイライト5000に海が出来るってか?馬鹿じゃねぇのかテメェ。」
『問題ない。その為のメイトンだ。』
「ん?うち?ほぉ〜ん…天才の言う事はよくわからんなぁ。もっとちゃんと説明してくれてもええんちゃう?」
『メイトン、お前をトワイライト5000へ送り込む事によって、その対処をヴェルサイユの四騎にさせる。恐らくそのメンバーの中には“エウレカ”が含まれる。そしてそのエウレカは必ず“英雄旗聖天”を使う。それが戦艦を受け止める海になる。』
「ん〜。聞いてもよくわからんなぁ〜。」
「…そもそもトワイライト5000にそんな空間あんのかよ。」
『あぁ、空間はできる。仮に予定よりも狭かった場合はメイトン、お前が掘って広げればいい。』
「嫌やわ〜。うちこの歳になって穴掘りしなあかんの?」
『いざという時だけだ。恐らくその時は来ない。何故ならミルが…。まぁいい。ここら辺はお前らに説明しても意味のない事だ。』
「は?先輩。コイツ、ボコしますか?」
「ちょっと待ちぃや〜。気持ちはわかるけどなぁ。一様司令部総帥やで〜コイツ。」
『メイトン、お前をトワイライト5000へ送り込む事によって、表向きは222と周回移動都市の漁夫の利を狙う様に見せる。いわゆるブラフだ。』
「あぁ〜。んで、本命は戦艦を受け止める海を作らせる為のエウレカをおびき寄せるって事かぁ〜。」
「もし戦艦が入りきらない場合先輩が空間を広げる…ってのも…なんか納得いかねぇな。」
『俺は今回で周回移動都市を壊滅させる。漁夫の利なんて甘い行動で終わらせるつもりはない。』
「んで、“超”弩級戦艦に何乗せていくつもりなん?戦艦自体の戦力を加味してもベクターは数百機積んでおきたいけどなぁ〜。あ、それか大量の爆薬でも積むん?自爆するのも一手やと思うでぇ〜?キャッキャッキャッキャッ。」
『今回、首相が先導して行った周回移動都市への大攻勢、何機ベクターが戻ってくるのかが問題だ。5分の1の100機帰ってくれば万々歳だろう。』
「は?それはねぇだろ。奇襲だぜ?しかも今回の奇襲ってのは最後まで戦い切る事じゃねぇんだぞ。適当な打撃与えて帰ってくるだけなのになんでそんな。」
『お前は旧世界のユーラシア大陸を焼き払ったエヴァンテを甘く見ているな。』
「は?エヴァンテだぁ?」
『5000年の時の大半、4000年という悠久の時、国を統治し続けたバケモノだぞ。こんなチンケな連合の奇襲で滅びに向かうわけがないだろ。』
「ぐッ…。」
「それもそうやね。エヴァンテか〜。うちも1回ぐらい会ってみたいわ〜。」
ダグラス•モニカはその場から立ち上がり会議室の隅にある冷蔵庫から紅茶を取り出した。
そしてティーカップを2つ用意し、メイトンとベックそれぞれの前に置いた。
——————カチャンッ…。
——————トポトポトポトポッ…。
『表向きは漁夫の利を狙ってる様に見せかける。後は、わかったな。』
「もぉ〜しゃーないなぁ。その代わりうちらが成功したらご褒美頂戴なぁ〜。」
「ハッ、俺はやりたくねぇな。」
「どぉ〜したんよベック。」
「先輩…。いや、そもそも数の多い“弩級戦艦”ならまだしも数の少ない“超弩級戦艦”を転移させるなんて俺にはできねぇよ。」
「えらい弱気なんやなぁ。」
『できないではない。やるんだ。ベック。』
「やっぱり、俺のギアじゃそんなデケェもん転移させれねぇよ。」
『なら、こうしよう。』
そしてダグラス•モニカはメイトンを指差して言った。
『成功したら“メイトン級”をやる。』
その言葉に真っ先に反応したのはメイトンだった。
「は?ちょっと待ってぇな。メイトン級ってなにぃ。」
『俺が今決めた地位もとい称号だ。』
「どっから突っ込めばいいかわからんなぁほんま、とりあえず恥ずかしいからうちの名前使うんはよしてくれへんかぁ〜?」
「せ、先輩の…称号…ッ!」
「ちょっとアンタ…何変なスイッチ入ってんの…。」
「先輩のッ“称”ッ“号”ッ!!!」
『大丈夫だベック、失敗しても“超”弩級戦艦連合が沈むだけだ。』
「それもなかなかやけどな…。」
「ダグラス•モニカさん。いや、ダグラス•モニカ様。俺の全てを賭けて作戦を成功に導こうではありませんか。」
「アンタ絆されやすすぎやろ…。」
『ベック。お前はできる。わかったな?』
「あぁ、任せろ。」
「男ってわからんなぁ〜…。(あのダグラス•モニカの事や。それだけ成功するっていう確信があるんやろな。」
——————ガチャッ。
すると突然、ノックなしで会議室の扉が開かれた。
そこに1人の少女が立っていた。
メイトンより少し背の高いその少女はジト目で会議室の中の3人を見た。
その後、少女はズカズカと会議室に入り込んで部屋全体を見回した。
「ふ〜ん。メイトンにベック…それにダグラス•モニカまで。連合の実力派が揃ってる…。一体何を企んでいるのかな。」
『…貴様ッ、鍵を掛けていたはずだ。どうやって入ってきたドレス•ロード。』
その女の名は“ドレス•ロード”。
連合列車に乗り合わせている数少ないヴェルサイユ陣営の人間だ。
連合は地上に国土を持たない。
その代わり巨大な連合列車の中を領土としている。
その中でドレス•ロードは周回移動都市の大使としてこの連合列車で生活をしている。
「持ち手握ったら壊し…壊れた。多分、メイトンのせい。メイトンが元々壊してて私に濡れ衣を着せるつもり。」
「はぁ?うちはゴリラちゃうんやぞ。んなギャグ漫画みたいにドアノブ壊したりせんわボケェ。」
ドレス•ロードの左手には壊されたドアノブが握られていた。
『ドレス•ロード貴様、たかがヴェルサイユ大使が連合に内政干渉するつもりか。国際法違反で処刑するぞ。』
「ふん。私を殺せると思っているの?なんてファンシーな頭なのかダグラス•モニカ。逆に要求する。私も三食のご飯が欲しい。一食じゃ足りない。」
『貴様は食わずともそのギアで消費カロリー分を賄えるだろ。』
「確かに私は食わずとも生きていける。けど、私は美食家。味が欲しい。口が寂しい。」
『無駄な消費は抑えなければならない。そうでなければ列車は行きつかない。』
「でも、この列車、囚人に三食食べさせてる…。私は一食しか貰えてないのに。」
その時、ベックがドレス•ロードの前に瞬間移動し、格闘家がやる様なフェイストゥフェイスを始めた。
「俺は今ここでお前を殺ってもいいんだぜ…。」
「ふん。ベックに私を殺せるとは思えないけどね。」
「ちょっと2人ともやめーや。列車の中なんやから。」
「ふん。大丈夫。この列車はデカい私とベックが喧嘩した程度で壊れたりはしない。」
「あ゛???オメェ俺を甘くみてんのかぁ?あ゛?」
「ふん。メイトンならまだしも、ベック如きに私が苦戦するとは思えない。」
その言葉の直後、ベックの眼光が青く揺らいだ。
「だったらやってみろよ…。」
それに対し、ドレス•ロードは余裕の表情を見せている。
ダグラス•モニカはそれを見てため息を吐き、肘を机に突っ伏し頬杖する。
ダグラス•モニカの目線はドレス•ロードとメイトンの頭の上に向く。
2人の頭上に透明な歯車が現れそれぞれのギアを回し始めた。
——————「これやからガキは…。」
メイトンはその場から立ち上がりゆっくりとドレス•ロードとベックの間に割って入った。
メイトンの赤い瞳が2人の間でギラつく。
「ベック…ガキ相手に激情すんの恥ずかしいからやめぇや。」
メイトンの髪が揺らぎ、ベックの表情を怯えさせた。
「せ、先輩…俺ッ、そんなつもりじゃ…。」
「なぁ、ドレス•ロード。アンタもいい加減、会議室無断で入る時はノックする事覚えーや。お前調子乗ってたらシンプルに殺すぞ。」
「ふん。なんで私がヴェルサイユの大使に選ばれたと思う?それは私が単独で連合列車を制圧できるからとエヴァンテに見込まれたからだよ。」
「うちはガキと違ってガキの挑発に乗れへんからな。残念やったな〜。後、“ふん。”って言うのうざいし、ダサいからやめーや。」
「ふん。私ならではの余裕の表現。…これ、うざいの…。」
そこでダグラス•モニカが割って入った。
『メイトン。ベック。お前達に話したい事は大体話せた。それとドレス•ロードその要望は列車への貢献度で検討する物とする。』
「ふん。」
「はいはい、解散解散。うちは部屋に帰らせてもらうで。せっかく久々に列車に帰ってきたばっかりやのにほんま苦労するわぁ〜。」
「先輩ッ!お疲れ様でした!」
メイトンは文句を言いながら会議室から出ていった。
その次にドレス•ロードがメイトンの後ろをつけて行き、「ねぇ、うざかったの?ふんって奴…。」と問いただしながら会議室から消えていった。
「ダグラス•モニカ。」
『何だ。何か質問か。』
「質問じゃねぇんだけどよ。多分“メイトン級”ってメイトンレベルで強ぇって事だよな。」
『あぁ。』
「俺にそんな強さは…」
もの静かになった会議室、わずかに揺れる連合列車。
『俺が考えている“メイトン級”は小国を単独で破壊できるチカラを持つ者の事だ。』
「じゃぁ…」
『単独で敵国へ侵入し、全ての航空包囲網を掻い潜って“超弩級戦艦”を都市中枢部へ転移、国家の重要拠点を破壊蹂躙した後、超弩級戦艦を帰還転移させる。もし、これが可能となればベック。お前はメイトンよりも強力な駒となる。』
「…それはそうだけどよ。メイトン先輩は超弩級戦艦なしの単独で国家の中枢部を破壊できるじゃねぇのか…?」
『メイトンの破壊力はメイトンを中心としたものでしかない。超弩級戦艦ほどの広範囲の火力は持ち合わせていない。それにメイトンにはベクターを乗せられない。』
「…なんかそれで先輩よりも有用ってのはなんか納得いかねぇけど、なんか自己肯定感上がった。あんがとよ…。」
『気楽にやれ。失敗しても成功しても俺が周回移動都市を滅ぼしてやる。』
「…ハッ。マジの顔で言ってんのが怖ぇーよ。」
『問題無い。』
———————————————#####
『今回、首相が先導して行った周回移動都市への大攻勢、何機ベクターが戻ってくるのかが問題だ。5分の1の100機帰ってくれば万々歳だろう。』
→結果…数十機。
首相のあまりの無能さに内心めちゃくちゃブチギレてました。




