〔第61話〕弩級駆逐艦瀬音夏
ド級と弩級の書き分けはパッションとキャラによって変えてます。
———それはむかしむかしの旧世界での話。
大陸全土で大暴れしていた大怪獣を止めた2人の英雄が居ました。
その名は“ミル”と“鷹田レイ”。
彼らはエヴァンテの進行を阻止し、弩級戦艦セネカと共にその命を終え、沈みました…。
———「ちょ、待て待て待て待て!!!おい!!!!」
でも、実際の所ミルとレイの遺体をヴェルサイユが回収し、丁寧に修復する事で数十年程、延命された。
そして延命されたその命と時間を使い、周回移動都市の法改正に尽力を尽くしたとされている。
ミルとレイはエヴァンテを国際法で縛り、世界に名目上の平和をもたらした。
その国際法はいまだにエヴァンテを苦しめているのだとか…。
そしてミルとレイは残された時間で結婚し、1人の子供を授かった。
その名は“セネカ•ミル•レイディ”だ。
———「おい!待てよ!おい!サラッとエヴァンテって出てきたぞおい!」
セネカの名は平和の象徴を願った戦艦から名付けられてた。
ついでに、仮名はミルとレイの名をモジって与えられた。
両親の内、父親のミルはミルをセネカに与え、
母親のレイは「私と貴方の名前じゃレイの方が男っぽいよね。私の方の仮名はレイディにする。これだったらどっちが妻の仮名か間違えないよね!」
という理由で、レイでは無く、レイディになったらしい。
そして、僕はセネカ•ミル•レイディになった…らしい。
———「おい!」
ツッコミを止められない俺に対し、語り手として説明し終わったセネカは若干途中、話を邪魔されていたのもあって嫌な顔をする。
「今回奇襲してくる戦艦と僕の名前が一緒なのはこんな感じかなぁ〜。」
3日前の国防参謀議会で都市としての作戦会議自体はスムーズに終えた。
随分、荒れた会議だったが決まる事はすんなり決まった。
一様、あー見えても参謀議員の奴らは市民権で俺より何千年も長く生きているから多少なりともそういう所は器用なのだろう。
進行自体はとてもスムーズだった…気がする。
そのはずだ。
うん。
そして今は俺、セネカ、エウレカ、タフナ、フブ、兎が戦艦セネカとの戦い前に教会の食堂で集まって朝食を口にしていた。
「薄々エヴァンテは過去にえぐい事やったって知ってたけど…。大怪獣って…。アイツやってんなぁ…」
俺のその言葉にセネカが両腕を後頭部へ回し、体を横へ揺らしながらのんびり答える。
「まぁエヴァンテが昔大暴れしたせいで、未だに旧世界では超悪役だもんねぇ〜。まぁ実際、悪その物なんだけど。はははっ。」
はて、今の話に笑いどころはあったのだろうか?
…でも、今の話を聞く限り、セネカの両親の寿命を限りなく奪ったのはエヴァンテのはずだ。
セネカは一体どういう気持ちで周回移動都市に居るのだろうか。
「なぁ、セネカ。お前、実は仇討ちとか狙ってんのか?」
「えぇー?!なんで僕がそんな面倒くさい事しなきゃなんないのぉ?」
なんかコイツ軽いな…。
「まぁ、言っても僕の両親50歳ぐらいまで生きてたし、めっ↑ちゃ↓幸せそうだったし、大往生だったんじゃなぁ〜い?」
「お前の両親も市民権得たら不老になれたんじゃねぇのか?」
「それがね、もともと1回死んで無理矢理生き返らせたから市民権は得られなかったらしいよぉ〜。多分他にも理由とかいっぱいあったけど忘れちった。」
「まぁお前が色々納得してるなら俺は別にそれでいいんだけど…」
「チュグネ優し〜い。」
「誰が、チュグネだ。んな事よりッ、おいそこの兎!お前今日は大丈夫なんだろうな。前みたいに訳分からん事ッて…。おい、フランスパンでチャンバラするのはやめろって!流石に行儀悪りぃぞ!おい!フブもだぞ。おい!聞けよ!おい!」
その言葉を聞いた兎がすぐ様フランスパンを俺の方へ振りかざしてきた。
——————ヒュンッ!バコンッ!
「うぉッ!!!痛ェッな!何すんだテメェ!パンに謝れよ!」
ツグネの怒りの声を聞いたタフナが速攻で止めに入る。
「ちょっ、ツグネさん!落ち着いて下さい!!たかがフランスパンでどつかれただけですよ!」
「たかがフランスパンでどつかれた程度って何だよ!たかがフランスパンでどつかれた程度って何だよッ!!!」
俺は自分の口から出たツッコミで我に返った。
兎は自分から攻撃して来たくせにフブの後ろへ隠れて、被害者ヅラしている。
ダメだ。シンプルにムカわコイツ…。
「わわわ私に負けなど無い…」
ビビり散らかして言うその姿に威厳など皆無だ。
「ダッセェ姿でそんな事言うなよ…」
——————ヒュンッ!バコンッ!
「痛ッてぇ!!だから、フランスパン振り回すなやゴラァッ!!パンに謝れやァ!!!」
「ちょ、ツグネさん!落ち着いて下さい!そのパンじゃすぐ折れちゃいますよ!ていうか、兎さん達と同じレベルまで堕ちないでくまさいよ!!!」
その様子を見兼ねたセネカと同じカスミ部隊、第三師団隊長の肩書を持つエウレカが微笑んだ。
「食べ物を粗末にするのは頂けないが、戦いの前に心を奮い立っているのか。」
エウレカのその言葉に対し、誰も返事をしない。
返事をする余裕がないと言ったほうがいいか。
その代わりと言っては何だが、セネカが静かにエウレカの肩へそっと手を置き、静かに目を合わせた。
その姿はさながら「ドンマイ」と言わんばかりの人を馬鹿にした様な細目だ。
「たたた食べ物粗末に出来るのが勝者の優越…」
兎の舐め切った態度に俺は腹から声を出して言った。
「コイツ止まらねぇな!!!」
舐め切った態度の兎とは裏腹にフブは自分で握っている細長い1m程のフランスパンを見て驚愕している。
何をそんなに驚愕する事があるのだろうか。
「こ、これご飯だったの…。」
「テメェフランスパン知らなかったんかよ!」
やばい、またツッコミを入れてしまった。
このままだと俺は芸人になっちまう。
しかしまぁ今は大丈夫そうだが最近、兎は何だか不安定に見える…事もないが、ラスターをスフィアでボコボコにしたあの一件以来、何だか顔色が芳しくない様に見える。
今回222が現れるまでの区間の“やり直し”は2回目だ。
1回目の時は何の情報も無く、半ば奇襲の様な形で駆逐艦が現れたが、その時でさえ兎は余裕で奇襲に来た駆逐艦を堕とした。
だから、まぁ心配ないとは思うが、それでも1つ気になる点がある。
1回目の時はラスターをスフィアでボコボコにするイベントなんて無かったぞ…。
俺の細かい行動の違いで何か変わったのか…。
やり直しして、前回と行動が変わる人物はそう居ないがゼロでは無い。
やり直しのたび、毎回対応を変えて来る…そんな人物“ダグラス•モニカ”ぐらいしか居ないと思っていたが、コイツもそう言う類の人間だったら相当面倒だな…。
心配っちゃ心配だが、今回の戦いに置いてはまず負ける事がないのが一先ずの救いだろうか。
1ステージ目で負ける事はないが、気は抜けないし抜くつもりもない。
いかにして222との決戦時へ向けて、戦力を温存出来るかが今回の勝負の要だな。
多分、222側も今回の駆逐艦の奇襲で周回移動都市を削り切るつもりは無いのだろう。
「ねぇ゛ーーー!!!これ食べ物だったんなら早く教えといてよ!!!」
実質今日から222との戦いが始まるのにコイツらときたら…なんて呑気なんだろうか。
「ふふふフランスパン…し、知らないと思わなかった…」
吹き抜けた食堂のガラス窓に優しい太陽光が差し、風がゆっくりとカーテンを揺らす。
(戦いの前の静けさとはこの事か…)
1人でにそんな事を思っていると兎が食堂にある時計をチラッと見た後、テーブルに顔を埋めた。
「おい、何だよ急に、まさかッ、またなんかトラブルなんじゃねぇだろうな?!」
俺は内心焦り散らした。
その様子を見兼ねてフブも兎を心配する。
「どうしたの兎?!お腹痛いの?!」
「…やややばい。ちちち遅刻…。ネネさんに…おおお怒られる…。」
とにかく、公なトラブルじゃなくて良かった。
こんな大事な日に遅刻すんなよ…。焦らせやがって…。
そして兎にフォローを入れるかの様にタフナが提案する。
「まぁ今回のは大規模な軍事作戦ですし、あらかじめ時間に余裕を持ってスケジュールは組まれてるはずですよ。今から行ってもきっと間に合いますよ!きっと走っていけばネネさんも許してくれますよ!」
タフナ優しいな。
「あああ汗かきたくない…」
コイツはゴミだ。
長いフランスパンを横に咥えたフブが無言で兎をヒョイと背中へ乗せた。
「私に任せな兎!タクシーより速いこの足ならきっと間に合うさ!へっ!」
お前は馬か何かかよ。
フブもフブで兎を甘やかし過ぎだなこりゃ。
そりゃあんなバケモン出来るわ。
フブが兎を背中へ乗せて走り出そうとしたその時、開いていた食堂の窓から暴風が吹いた。
——————プシュュュュューーーーンッ!!
俺はこの光景に見覚えがある。
この間、スフィア2体が教会のガーデンに着陸した時に見せたアレだ。
吹き荒れる芝生、訓練場所として想定もされていそうな砂場も無惨に地面が抉れている。
暴風に負け揺れ折れるガーデンの花達はこの後すぐ無惨に地面へヘタれるだろう。
そして砂埃が素早く風に流れ、食堂のガラス窓から見えるその光景はデジャブそのものだった。
「ここのガーデンはスフィアの着陸場所かなんかよ!!今度は誰だ!!!」
一機のスフィアがこの間ボロボロにしたガーデンの上に着陸していた。
せっかく綺麗になった芝生と迷路の様な植木を躊躇なく踏み潰すその姿に若干の爽快感さすらある。
そのスフィアは膝立ちをして、腕を折り曲げ手のひらを胸部のハッチへ近づける。
そして胸部のハッチが開閉し、1人の女が姿を現した。
その女は自ら調節したスフィアの手のひらに乗り、建てられたスフィアの指に片腕を置きながら余裕そうな顔で言う。
——————『兎ちゃん。作戦の日に遅刻とはいい根性してるじゃん。』
そのスフィアのパイロットの正体は、六防、ヴェルサイユのエースパイロット、兼ラウンド保持者の“ネネ”だった。
「なななななッ!?!?」
兎が1番動揺している様に見える。
——————『わざわざ大先輩が迎えに来てあげたんだから、早くしてよね〜。ほら!ハウス!!ハウス!!!』
「アイツは兎の事、飼い犬か何かと思ってんのか?」
俺の咄嗟に漏れ出た言葉にセネカが返す。
「まぁネネはいっつもあんな感じだよ。先輩風吹かせて毎回恥ずかしい目に遭った後、赤面するタイプ。」
「あ〜…ぽいぽい。」
フブが背中に乗せていた兎をネネのスフィアの元まで届け、兎は強制的にネネに連れ去られて行った。
ツグネは飛び去るスフィアのデカい背中に対し、1人呟く。
「まぁシンプルに遅刻した分、仕事頑張れよ。」
兎が連れ去られてから一同は朝食のビュッフェをかき込んだ。
別に連れ去られた兎と違って、急いでいる訳ではないが単純にここのビュッフェが美味しすぎるのだ。
「うめぇ〜…何使ってんだろうなこれ。」
ヨーグルトとグミを足して割った様なデザートの食感に心奪われる。
きっとなんか凄いイイやつでイイ感じの人がイイ感じに作っているのだろーな。
そして俺達は朝食を食べ終えた後、皆でテーブルに座り予定の時間まで軽く談笑していた。
「では、そろそろ僕達も行きましょうか。」
タフナのそれにフブが反応した。
「ん?タフナンどこか行くの?」
「貴方もですよフブさん。ん?タフナン…」
「んぇ?!私なんも聞いてないッ!」
そーいや俺も最初の頃、エヴァンテになんも聞かされてなくて色々ビビったな…。
長命の奴って、そーゆー雑な所あるよな…。
俺が心の中で文句言ってる間、タフナはフブに説明する。
「これから駆逐艦とnew orderの戦いを軍部で観るんですよ。」
「つまり、画面越しに皆んなで兎を応援するって事だね!」
「そんなカジュアルな物ですかねこれ…」
話が逸れてごちゃつきそうになった時、エウレカがまとめた。
「軍部までは僕が案内しよう。」
「えーすっ。」(ツグネ)
「案内よろしくお願いします。」(タフナ)
「りょー!」(セネカ)
「はいは〜い!」(フブ)
そして俺は満を辞して、2回目の戦いを観測する事になった。
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私、兎は六防のネネに半ば誘拐されて出艦レーンのある軍庫まで来た。
ネネさんは“六防”という都市の防衛師団の6トップでありながら、ラウンドというスフィアパイロットの称号を持っている。
ネネさんが軍庫へ顔を出せば、全員が全員深く尊敬の念を持って敬礼する。
それを見ていると、周回移動都市にとって六防という立場がどれだけ偉いのかが実感できる。
でも、近未来の軍庫と敬礼しながら並ぶ整備員の列を見ているとアレを思い出す。
「…だだダースベー○ーダーみたい。」
「ダースベー○ーダーが何かわからないけど、あんまり褒められてないことぐらいはわかるわよ。」
「だだだダースベー○ーダーは褒め言葉。かっこいい…」
「何よ、急に。別に知らない単語で褒められても嬉しくないわよ。急にゴマすらないでよね。」
あ、ちょっと嬉しそうにしてる。
これが例のツンデレって奴か?
ツンが少ないタイプのツンデレだから、この場合ただのチョロい人になるのかな…?
「そそそそれより…そろそろ…首根っこ…つつ掴むのやめて貰っていいですか…」
「んー、何かヤダな。」
瀬音夏の両親については色々なストーリーがあるのでまた番外編とかでじっくり書きたいです。
そしてこの2人はこの世界で唯一、エヴァンテとヴェルサイユに勝った人達です。悪党に打ち勝ったヒーローです!
【絶対不可侵領域、規格外。】
【異常領域には近づくな。】
【大号令】
[5.4.3.2.1.レーン解放、発艦。]
平和の象徴で冴え数百年経てば、プロパガンダに成り下がる。




