表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
周回移動都市ヴェルサイユ《原案》  作者: 犬のようなもの
《セカンドオーダー編》            [第一章]周回移動都市ヴェルサイユ〈本編〉
78/78

〔第62話〕何負けそうになってんのよ。

しばらくツグネ視点です。


 


 今回、私が使うスフィアの名前は“プシュケー”だ。

 周回移動都市のデフォルト機と、まで言われる定番の機体。

 そのシンプルな使いやすさと安定性でこの地位を獲得した優秀な機体と言えるだろう。

 見た目は30m(メートル)程のデカさで、白とグレーの装甲に所々の青い球体が目立つ。

 名前の由来は過去の偉人から取ったのだとか。

 基本的にどのスフィアも過去の偉人の名前から取っているらしいから、豆知識として都市の住人に引け散らかすのはやめておいたほうが良いだろう。あのベクターですら人の名前だったらしい。なんだか感慨深い。





 私は30m(メートル)程の高さまで整備用足場を登りスフィアのコックピットに乗り込む。




 ——————キュゥゥゥーンッ。



 ——————プシューンッ。



 ハッチの閉まる音が静かに鼓膜を揺らす。









 ——————《デリカシステム起動完了。おはようございます。咲嶺(さきみね)(うさぎ)様。》



 機械音楽コックピットに響く。



 ——————《エンジン各部稼働チェック。完了》


 ——————《パイロット生態認証。パイロットナンバー無し。咲嶺兎。認証完了。》


 ——————《装甲鋼鉄板、強度チェック開始。完了。》


 ——————《パイロット酸素供給プリセット、準備完了。》



「いつも通りの設定に。デリカシステム、お前には今回の敵、もう捕捉できてるのか。」



 ——————《周回移動都市の周辺に脅威となる存在は捕捉できておりません。》



「そうか…。」


 しかし、今回私がツグネとエヴァンテに聞いている情報はこうだ。

 敵、ド級駆逐艦(きゅうくちくかん)瀬音夏(せねか)

 極めて高いステレス性を持っていて、一度でも雲へ潜れば、その場所を特定するのは難しいらしい。

 駆逐艦自体も遠距離、近距離、共に対応できる火力を持っており周回移動都市に接近されれば、甚大な損害が想定される。

 何だか“らしい”“らしい”で不透明性が見てとれるから心配だな…。



 ——————《発艦出口までレーンα(アルファ)を経由します。所定の位置に着くまでお待ち下さい。》













 ——————————————————#####


 ツグネの胸には(かす)かな違和感があった。

 喉の奥に魚の骨が刺さってうまく飲み込めない。

 そんな感じだ。


 骨を押し流す為の米も今ここには無いときたほんと全くだ…全く…。






 1回目の時と同じ様に(現実)は進み、エヴァンテの所有する教会から少し離れた軍部へ足を運ぶ事になった。


 そして今…



「うぉー!!!すっごぉーーーー!!!」



 フブの元気な声が縦横体育館程の広さを誇る空間に響き渡る。

 中央の壁一面には映画館にある様なデカいモニターが貼られていて、軍服を着た沢山の軍人と師団員達がズラッと揃っていた。

 それぞれがそれぞれせっせと仕事をしている様に見える。


 まるでSF映画に出てくる管制塔や司令室みたいだ。



「おい、フブ。俺はここん((ここの))事、映画館って言ってるぜ。」


「おっ、それイイね。私もこれからここの事、映画館って言うよ!」


「ツグネさん。フブさんに変な事教えるのやめて下さい。」



 そんな事を話していると館内放送の様な機械音がこの部屋に響いた。



 ——————『new orderレーン先導完了(せんどうかんりょう)。』



 館内放送が流れ、それと同時に今ここへ来た(ツグネ)、タフナ、フブ、エウレカ、セネカ()()()シーンと静まり返った。


 その中で唯一、胸に大量のバッチ(勲章)をジャラジャラつけた、いかにも偉そうなオジが1人席から立ち上がり画面の方を向き、言った。



『目標、弩級駆逐艦瀬音夏。…そして、正真正銘222(セカンドオーダー)戦の1発目、勝つぞ。発艦!!!』



 気合の入った声に呼応する様に、この大きな部屋のモニター画面の向こう側から何かが高速で移動する様な鋭い音が鳴る。



 ——————キィィィィィィィィィイイイイッ!!!



 さっき大声でレーン解放を命じた勲章オジとは別に、別の軍人が状況を大声で報告する。



 ———『new order予定より2秒早い速度で発艦されました!その影響でカタパルトの破損を確認!』


 ※(カタパルト… 航空機(※今回はスフィア)を強力な力で加速させて短い距離で飛び立たせる「射出機(しゃしゅつき)」のこと。)



 それを聞いた勲章オジは少し頭を抱えた後、自分の席の無線を掴み取りそこへ怒鳴りつけた。


『何度も言ったじゃろ!射出する最後の瞬間までカタパルトに足を付けておけとッ!!!馬鹿タレがぁ!!カタパルトより速い速度を出したらカタパルトが壊れると何度言えばわかるんだッ!!!』



 正面の映画館並みにデカいモニターにはneworderの乗っているであろうスフィアから見た景色が映っていた。


 フブ「すごぉおー!!!」

 タフナ「うわぁ…凄いですね…。」

 エウレカ「new orderの実力しかと見届けよう。」

 セネカ「うぉー!久々にここからのスフィア発艦みた!!」


 そんな時、横から馴染みのない声が聞こえてきた。



 ——————「おい、何で俺がこんなとこに連れてこられてんだ?」



 ハッと振り返った先、手をロープで縛られているくたびれた男が居た。

 コイツって…


「お前…ラスターかッ!なんでまたこんな所にっ?!」


「んなモン俺が1番聞きてぇよ!テメェら!敵エースパイロットにこんな重要そうな施設見せていいのかよ!」


 連れてこられたと言うだけ、ラスターの周りには沢山の警備員や軍人、師団員が居た。

 おそらく万が一にでも逃げ出さないようにする為なのだろう。


 わざわざそんな事する理由が思い浮かばな…


 そうか、ラスターにnew orderのチカラを見せつけて、(かたく)なに仲間になろうとしないラスターを懐柔(かいじゅう)する気なのか?


 そんな事を考えているとラスターは用意されていた椅子にドカッと座り込み上を向きながら体を脱力させて言った。


「にしてもよぉ、カタパルトより速く発艦できるってのは〜一体どーゆー理屈なんだよ、おい。」


「知らねぇよ。そんな事より、お前は兎怒らせた事について頭でも捻っといた方が身の為なんじゃねぇーか。」


「ハァ…全くおんなじ事返してやるよ。()()()()()。」








 ——————[こちら、01番new order。目標地点に到着…。対象が見当たらない。曇りだから隠れれる場所が多すぎる…。]



 モニター越しに聞こえる加工された兎の声。

 身バレ防止の為にそうしているのだとか。


 てか、コイツ今全然言葉詰まってねぇな。

 なんか言葉詰まる時と詰まんねぇ時あるけど、その違いなんなんだ…。


 加工された声のnew order()に勲章オジが返す。



 ———『new orderと言えども運には味方されなかったようじゃな。カタパルト潰しのバチだな。バチ。』



 ——————[そっちは大丈夫なの…。]



 ———『ん…?あー。安心しろ。都市の半径100km以内に侵入すればダークマターで作った駆逐艦だって、デリカシステムが検知する。』



 ——————[流石にもうちょっと下がった方がいいんじゃ…。]



 ———『今の地点は。』



 ——————[予定通り都市から125km(キロ)地点の太平洋…。]



 は?コイツ何言っているんだ?

 ついさっきカタパルトから発艦して、どうのこうの言ってたこの数秒の間に、100km(キロ)以上都市から距離を取ってたって事か?

 んなもん、戦闘機より速ぇじゃねぇか。


 準備をしてから発艦すると一瞬で100km(キロ)先まで行けんのか…末恐ろしいなnew order…。


 俺はチラッとラスターの方を見た。

 ラスターは眉間にシワを寄せ、何かを深く考えている様子だった。

 奴は兎と同じパイロットだからこそ、その凄さは肌で感じているんだろう。



 ——————[もう目視では無理。見つけられない…ツグネの用意してくれたアレやって…。]



 ———『わかった。教会で用意しているエヴァンテに合図を送る。new orderは予定通り位置につけ。』



 ——————[うん…。]



 new order視点のモニター画面は大きく揺れた。

 すると直後、瞬きよりも速く下へ落下し、海中へ沈んだ。


「アイツ移動速度速すぎんだろ…。」


「ほぼ瞬間移動みたいですね…。」


 海中から海面へ向かって映された映像は

 キラキラ光る水面と水の気泡がぶくぶく綺麗な粒となって光っている。



 ——————《デリカシステムから報告。只今より10秒後に大号令が発令されました。対象区域から直ちに避難して下さい。繰り返します…》



 館内に響き渡る機械音声が淡々と警告を読み上げる。

 この警告は、俺が前回の“やり直し”を()て打った布石だ。




 ——————《9.8.7.6.5.4.3.2.1.0。》




 次の瞬間、海中の中から見た空が真っ赤に光った。

 海中が真っ赤に照らされ、まるで海水が血に染まったかの様だ。

 遅れて重い衝撃波が走り、轟音が鳴った。



(よし。エヴァンテに伝えておいたプランがうまく行った様だな。)


 今回の敵、ド級駆逐艦(きゅうくちくかん)瀬音夏(せねか)のステレス性は非常に厄介だ。

 しかも、今回においてはいかにnew orderの消耗を抑えられるかが222(セカンドオーダー)本体戦との戦いに直結する。

 その分、ド級駆逐艦瀬音夏が本気で空へ隠れてしまうとその分、発見までnew orderの時間と燃料、そして体力を食う。


(まぁ、前回(1回目)の時は駆逐艦の奇襲から222本体の襲来まで数日時間があったが…。数日ありゃ体力回復してたか?スフィアパイロットの事なんか知らねぇからな…。)



 今回、俺はエヴァンテに頼み()()()()()()()の特権を使って貰うことにした。

 それは周回移動都市本体を1つの武器と()してしまう魔法の攻撃手段“大号令(だいごうれい)”だ。

 元々222(セカンドオーダー)本体にだけ()()()()()()大聖堂(だいせいどう)”という攻撃を予定していたのだが、今回無理を承知でエヴァンテへもう1発何か頼み込んだ所、あっさり許しが出てそれを使って貰った。

 それで兎が少しでも体力を使わずにこの戦いを収めることが出来るのなら安いものだ。


 今回の大号令は大聖堂程の超特大(ちょうとくだい)大技(おおわざ)では無いらしいが、目的は雲を蹴散らすことだ。

 大聖堂じゃなくともなんら火力に問題はない。




 そしてモニターの画面は再び動きを見せた。




 衝撃波が海中に響き渡った後、new orderはゆっくり海面から顔を出し、空の様子を伺った。



 ——————[ななななんて威力…。]



 空はまるで何事もなかったかの様な顔を見せているが…


 しかし、さっきまで曇っていた空は雲のカケラ一つ残っていない状態になっている。


 今回の周回移動都市を丸ごと利用した特大攻撃“大号令”の狙いはまさしくこれだ。

 駆逐艦本体にダメージを与えるより半径200km圏内の雲を爆発の威力で晴らす(蹴散らす)




 ——————[でも…そのおかげで…敵は見つけた。]



 全長4〜5km(キロ)の巨体が隠れる場所を失い姿を現した。


 妙に有機的なディティールをした銀と白色の駆逐艦は鏡を貼り付けた様な装甲を纏っている。

 しかし、鏡とは明確に違う点がある。

 それは装甲の反射鏡1枚1枚が有機的にうねっているのだ。

 反射鏡が揺らぐ事により、それに反射している光もゆっくりと動く。

 その姿はまるで水面を漂う魚類の様だ。


「うわ…めっちゃ綺麗だね…駆逐艦…」byフブ。


「そうですね。なんか、逆に不気味です…。」byタフナ。


「…ぶち壊せよ。兎…。」byツグネ。



 そして勲章オジが命令を出した。



 ———『new order、撃墜(げきつい)してくれ。』




 ——————[わかった…。]




 ——————キィィィィィィィィィイイイイッ!!!



 new orderから出る甲高い高音は極限まで絞られたバーニアの音。

 それが凄まじい推進力を生み出し、瞬きする()に駆逐艦へ距離を詰めた。


 new orderは背中に装備された量子演剣(りょうしえんざん)を瞬時に抜き取り、それを駆逐艦の前方中央部の装甲へ突き刺そうと高速で手を伸ばした。


 しかし、ガキンッ!という甲高い音と共にその刃が弾かれた。


 決して駆逐艦の装甲の硬さが量子演剣(りょうしえんざん)の硬さを上回った訳では無い。

 ましてや、new orderの量子演剣(りょうしえんざん)の使い方が悪かったわけでも無い。


 ただそこにnew orderを妨害する“未知”が介入していた。


 new orderと駆逐艦の間に見たことの無い形のスフィアが居た。

 大きく太い円柱形の何かが後方上(こうほううえ)方向(ほうこう)に左右1個ずつ付いており、その周りから細長いボンベが沢山生えている。

 見た目は全体的に黒く、所々に邪悪味を感じさせる赤ライトが付いているのが印象的だ。


 それはnew orderの刃を易々(やすやす)と己の剣で受け止め、余裕の表情をみせるかの様にこちらを凝視している。


「は?」


 それを画面越しで見ていたツグネは目を丸くし、1回目の時とは違う状況に喉の奥が詰まる。


(何だッ?!1回目の時はあんな奴居なかったぞ!ミルでもレイのスフィアでもないッ…何だあのスフィアはッ。)






 ——————[ッ…!]





 一方new orderは間髪入れず、ロスアクを瞬間移動の様に使い、駆逐艦と未知のスフィアから距離を取る。


 駆逐艦は有機的なデザインの装甲をはためかせながら周回移動都市へ向かってゆっくり螺旋(らせん)絵描(えが)きながら進む。


 new orderは駆逐艦を守るように空へ鎮座している未知のスフィアに対して、ターゲットを向けた。



 ——————[仕留める。]



 ——————シュバンッ!!!!!



 ——————[何ッ…避ッ?!]



 new orderが仕掛けた攻撃を未来を予知しているかの様に難なく交わし…



 ——————ガシッ!!!



 ——————[しまったッ、掴まッ…]


 謎のスフィアはそのままnew orderの機体の首を鷲掴みにして海中へ叩き落とした。



 ——————ズゴォォォォォォォォォォォォォッ!!!



 海面へ向かって落下し、瞬く間に鈍い衝撃音が鳴る。




 しかし、new orderはかつてラスターがやっていた様に、後方へ回転しながら衝撃を受け流すワザを今使ってみせた。

 本来は弾道ミサイルの衝撃を受け流す為のワザなのだが、new orderはそれを新しい形で応用してみせた。


 回転と海水を使った受け身を取り、すぐ顔を上げ敵の方を捕捉する。


 new orderは間髪入れずロスアクを連続で使いミルでもレイでも無い未知のスフィアに攻撃を仕掛ける。


 しかし、どの攻撃も素早い()()と移動で避けられてしまっている。




 ツグネは焦る。


「おい、駆逐艦を守ってるスフィアはミルとレイだけじゃなかったのかよ…!一体コイツは誰だ…。」




 そんな時、横からフブが大声で叫び出した。



「兎ィィィィイ!!!頑張れぇ!!!!!!攻めろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉおお!!!!!」



 室内の全員がその声に肩をビクッとびくつかせた後、フブの方を振り返った。

 タフナは流石にまずいと思ったのか、叫んだフブを必死に制止する。


「ちょっとぉ!フブさん!運動会とかじゃないんですよッ…!」



「応援はチカラになるんだよ!知らないの?ほら、皆んなも応援しなよ!!!」



「お前どんだけ頭お花畑なんだよ。」


「えぇー。これ負けたらどの道私達の負けなんでしょ?」


「…。」


 チッ、なんか言いくるめられちまったッ…。





 ——————ガシャンッ!ガシャンッ!ガシャンッ!



 new orderは背中に装備されている短距離ミサイル弾を放ち、未知のスフィアの行動可能(こうどうかのう)距離(きょり)を狭めさせる。



 ——————《一方的な時間(ロストタイムアクセラ)的攻撃(レーター)



 光の一筋が昼の空をなぞった。


 new orderのロスアクが未知のスフィアに叩き込まれた。

 しかし、未知のスフィアはさっきnew orderがやっていた様な後方回転の受け流しでロスアクを緩和していた。



 ——————[…ななななッ。]



 自身の持つ渾身のワザを単純な方法で仕留められなかった事に対し、焦りが滲みでた声を漏らすnew order。


 しかし、未知のスフィアも後方回転で100%ロスアクを受け流せていなかった。



 ——————バキンッ!!!



 火花を散らしながら体の装甲の一部剥がれ落ちた。

 未知のスフィアは剥がれ落ちた自分の装甲を見て呆然としていた。





 ——————【▽△▽△▽△。】



 ——————[ッ…?!]



 未知のスフィアが回線を通し、謎の言葉で接触を図って来た。



 ——————【…△▽△▽?】



 ——————[な、何語…。]



 その時、モニターの向こう側から鋭い合金のぶつかる音が聞こえた。



 ——————ガキンッ!!!!




 ——————[誰ッ!!!]



 new orderは視界の外から来た剣による攻撃をノールックで受け止めていた。

 目の前にはnew orderのロスアクを受け流したあの未知のスフィアが突っ立って居る。

 つまり、今視界の外から剣撃を仕掛けて来たスフィアは未知のスフィアでは無いという事が見てとれる。


 new orderが急速旋回し、場から距離を取る。

 そして全貌が見えた。


 new orderを死角から攻撃したスフィアの名前を1回の“やり直し”を経たツグネは知っている。



「クッソ、今このタイミングで出てくんのかよッ…レイッ…。」


 死んだセネカの母、鷹田レイの操るスフィアだ。



 レイのスフィアは騎士のような鎧を纏った黒い姿をし、片手に大きな盾、もう片手には大きな槍の様なものを持っている。

 周回移動都市側のスフィアはどれも変わった形が多い印象がある中、レイのスフィアは比較的人型だ。


(1回目の時と状況が違いすぎる。1回目の時はnew orderを妨害してくる存在はミルとレイの2体だけだったのにッ…。)




 ——————キィィィィィィィィィイイイイッ!!!



 モニター越しに耳を劈く様な高音と激しい合金のぶつかる音が響く。


「ッ…。これは流石にマズい…。」


 モニターに映っているnew orderはレイと未知のスフィアに集中攻撃を受けていた。



 ——————ガヒュンッ!ガキンッ!!!



 ——————ガリガリガリガリッ!!!



 new orderはレイの槍から放たれる剣撃と未知のスフィアから放たれる剣撃をモロに喰らった。



 ——————バキンッ!!!バリバリバリバリッ!!!



 合金が千切れる音が響くと同時に、new orderの右腕と左脚が(はじ)き飛ばされた。

 それぞれ飛ばされた部位(ぶい)が火花を上げて海へ向かって落下していく。



 ——————ガキンッ!!!ガガガガガガッ!!!!



 それでも尚、()まない剣撃でnew orderは確実に追い込まれていく。

 手持ちの量子演剣(りょうしえんざん)で2人の攻撃を受け流すのも限界が来た。


 new orderの装甲がボロボロと剥がされて行く。


 流石にマズいと判断したのかnew orderはすぐさま後方へ退避しようとするが、未知のスフィアがそれを許さない。



 ——————ガシッ!!!



 未知のスフィアは自分の手持ちの剣を手放し、両手でnew orderの機体を掴んだ。



 ——————[なッ…]



 未知のスフィアはnew orderのロスアクを予測し、無理やりその機体をこの場へ固定させたのだ。 



 ——————【▽△▽△▽。】  



 new orderはその場から動けず未知のスフィアと取っ組み合いになった。




 ——————[グッ…ん、こ、このォッ…ッ…離せぇ!!!]



 モニター越しに聞こえる加工された兎の声。

 その声から滲み出る焦りが軍部全体を揺るがす。



 ——————[やばいッ…]



 new orderがもがく。


 しかし、未知のスフィアはその手を決して離さない。

 new orderは腕一本と脚一本が少ない分、抵抗力が未知のスフィアより弱い。

 その為その手を振り解くことが出来ない。


 new orderはバーニアを絞り後方への推力を生み出すが、未知のスフィアもそれに対抗するかの様に後方へバーニアを絞る。


 よって2機は場に留まる。


 その隙を突き、レイが槍をnew orderの腹に突き刺そうとその腕を高速で伸ばした。



 ——————[間に合わなッ…]







 ——————ガキンッ!!!






 合金同士が強く接触した時に出る鈍くて甲高い音が響いた。




 モニターにはnew orderを守る形で1機のスフィアがレイの攻撃を受け止めていた。







 ——————『アンタねぇ…邪魔すんなって偉そうに言ってた癖に、何負けそうになってんのよ。』







 レイの槍を量子演剣で受け止めるネネの姿が太陽を背に輝いていた。



メモ


 “バラサイト8500”


 “プロメテウス•瀬音夏ハイドロテンプスィー装備


 セネカの両親が使っていたスフィアの名前。


 [5.4.3.2.1.レーン解放、発艦。]

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ