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周回移動都市ヴェルサイユ《原案》  作者: 犬のようなもの
《セカンドオーダー編》            [第一章]周回移動都市ヴェルサイユ〈本編〉
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〔第59話〕戦争の前の静けさ

 





 一同はスフィアによって薙ぎ倒されたガーデンを歩き、食堂へ戻った。

 敵国のエースパイロット“ラスター•エネ•ウォンスキー”とnew order兎という新しいメンツを添えて。







「おい、マジかよ。ヴェルサイユの奴らって朝飯(あさめし)ビュッフェかよ…!」


 ラスターの感嘆の声が場に響く。


「どーせこれ終わったらまた牢屋にぶちこまれんだから今日はたらふく食うぜ。」


 ラスターの意気込み満載な言葉にツグネが雑に返す。


「おう、頑張れよ。」






 自分の食べる分を皿に乗せ、少し大きめのテーブルに着く。

 メンツは、ラスター、エヴァンテ、セルフレリア、タフナ、(ツグネ)だ。


 そしてラスターの“ヴェルサイユの奴らって朝飯ビュッフェかよ!”に対し、エヴァンテが冗談混じりに答える。


「ふふっ、そうですわ。」


「え、エヴァンテ様っ…!地位が高い人達だけですよ!」


 冗談((嘘を教える))を言うエヴァンテにセルフレリアが困った様にツッコミを入れている。


 俺は心の中で“()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。”と思いつつ口には出さない。


 しかし…


 兎とフブは俺達とは別の少し遠くのテーブルに座っているな。まぁアイツらが一緒にいんのはいつもの事っちゃいつもの事なんだけど…。


「あの、ツグネさん…なんか兎さんって、僕達と妙に距離感有りますよね…」


 タフナはビュッフェで取ってきたスープをスプーンで優雅に啜りながら俺に小声で言ってきた。

 それに対し俺は行儀が悪い事を自覚しながら、肘をテーブルに突き、頬杖しながらダルそうにご飯を食べながらそれに(こた)えた。


「まぁそうだな。でも、なんかアイツら見てたらオモロイよな。ほら、今もフランスパンみたいな奴でチャンバラ始めたし。あっ、フブの目にパンクズ入った。」


「何やってるんですかねホント…。兎さんさっきまで結構凹んでた感じだったのに、立ち直るの早いですね。フブさんパワーですかね…」


 場の様子を見計らっていたエヴァンテはツグネ卓のテーブルでビュッフェにがっつくラスターに対し、今回の件について聞く。


「さて、ラスターさん。今朝は一体何があってこうなったのでしょうか。」


 ラスターはコップに注がれたミルクを一気飲みし、喉に詰まらせたパンを雑に流し込み語り出した。


「今朝起きた事をそのまま話すぜ。牢屋の中で寝てたら急に兎って名乗るガキ、ん゛ん゛女に起こされた。ソイツが、“お前に納得出来る価値があるのかどうか見定めたい”って言ってきて、俺は仲間になる気も無かったしどーでも良かったから無視した。そしたら、そのままどっかいっちまった。」


 ラスターが話に一旦の区切りをつけた。

 それに対し俺は、もう話終わっただろ?みたいな顔をしているラスターについツッコミを入れてしまった。


「いや、今の状況と全く繋がらねぇけど。」


「つまりアレだ。ここからの内容は報酬次第って所だな。」


「何だよそれ!月額料金払わねぇと観れねぇドラマかよ!」


 ラスターの強気な態度に笑顔を崩さないエヴァンテは再度ラスターに交渉を持ち掛けた。


「何がお望みなのでしょうか。」


 エヴァンテのその言葉に対し、セルフレリアが止めに入る。


「エヴァンテ様!この様な男の要求など聞くに足りません!()()()()()()を使えば…」


 しかし、エヴァンテはセルフレリアの制止をいとわずラスターの思惑に乗る。


「嘘偽りなく話して頂ければ構いません。私方に出来る事ならば何でもどうぞお申し付けくださいまし。」


 ラスターはエヴァンテのすわりきった根性()に関心した。

 そしてラスターはあっけらかんとした表情から真剣な顔に戻し淡々と言った。


「痛てぇからもう拷問の類は無しな。」


 一切表情を崩さなかったエヴァンテが今、初めて表情を崩した。

 それを見てラスターは、捕虜の分際ででしゃばり過ぎたかと一瞬後悔した。



「拷問…ですか?」


 しかし、返ってきた声は何の事を言っているのかわからないと言った様な拍子の抜けた声だった。

 その反応に違和感を覚えながらも、俺はラスターの顔を見た。

 ラスターは少し怒った様な表情を見せていた。


「部下が勝手して俺に拷問してたのか、お前が指示してやらせてたのかは知らねねぇが、もう俺に拷問すんのはやめろ。どーせ話さねぇし、仲間にならねぇ。あ、拷問されなくても今朝あった事はちゃんと話すぜ。」


「そのご要望承りました。」


 エヴァンテはラスターの要望に快諾(かいだく)した様だ。

 そして、エヴァンテは誰がそんな事をしたのか考える様な表情を見せた後、セルフレリアに目配せした。


 セルフレリアは黙って腰を屈めながらスカートの裾を持ち上げ、ぺこりと会釈(えしゃく)した後、その場を静かに()った。

 まぁ十中八九ラスターの拷問を誰が指示したのか調査しに行くんだろうと俺は勝手に解釈(かいしゃく)した。


 俺は黙ったエヴァンテとラスターの間を繋ぐ様にラスターへ聞く。


「お前の爪なんで全部剥がれてんのか疑問だったけど、お前拷問されてたのか。可哀想にな。ほら、このパンやるよ。この肉もやるよ。」


「拷問以外で健康な爪全部なくなる訳ねぇだろ!」


 ラスターは俺に渡されたご飯を強引に受け取りそれを頬張った。

 更に飲み物でそれを無理矢理流し込んだ後、不機嫌そうに再びソレの内容を話し始めた。


「そんで今朝何があったかの続きだが、兎って奴が牢屋に訪ねてきて、無視したら後ろの牢の壁スフィアでぶち開けられて拉致られた。以上だ。」


 俺はあまりにも現実味に欠けた話に対し、口に含んでいたパンを吹き出してしまった。



 ——————ブゥーーー!!!



「ちょ、待て待て待て!」


「なんだよ青年。課金額ぐっと安くしてやったのに文句があるっつーうんか?あぁん?」


「違ぇよ!課金した後の展開が急展開過ぎるつッてんだよ!」


「仕方ないだろ、青年。現実は小説より奇なりって言うだろ?今がそんときだぜ?」


「チッ、ラスター!テメェ…ッ!悔しいが、話に課金しただけあって無駄に先が気になるな、おい…」


「その後、俺は兎の操縦するスフィアに捕まって軍庫って所に連れてかれて、無理やりスフィアに乗せられて〜…。正直、敵に対して武器持たせる様な事して訳わかんなかったけど、なんか俺を試したかったんだろぉーよ。そんで俺はソイツにボコされたって訳よ。」


 ラスターの一仕事終えたみたいな雰囲気にタフナが突っ込む。


「“〜って訳よ。”じゃないですよ!サラっと終わらせすぎですよ!絶対なんかその間にあったでしょ!」


 ラスターの発言中にもエヴァンテは表情を動かさない。


「んでよぉ、改めて言わせて貰うが絶対アイツ(うさぎ)がnew orderだろ。まぁお前らが言及しなくても流石にわかるわ。」


 エヴァンテは静かにニコっと微笑みYesともNoとも取れる表情をラスターへ向ける。


 …正直、気まずい。


 俺はエヴァンテにフォローを入れる気持ちでラスターへ言った。


「わっかんねぇ〜ぜ。お前が拷問受けて爪全部無くなってるから超弱くなってんじゃねぇか〜?」


 俺のこの気まずさを取り払う為の苦肉の策に、タフナも乗ってくれた。


「そ、そうかも知れないですよ〜!ラスターさん超弱ってますし、ねぇ〜!」


 タフナ、お前嘘下手かよボケがァ!!!


 気まずさが一段階増(いちだんかいま)した気がする。

 俺の冷たい目線を感じ取ったのかタフナは諦めた様に話し出した。


「もうなんかラスターさんをボコボコに出来るパイロットってnew orderぐらいしかいないですもんね聞いた感じ。もう隠しても意味ないですよこれ…」


 タフナはエヴァンテに対し、遠回しに“もう諦めて”と言ったつもりだったのだが、それでもエヴァンテはYesともNoとも言わない。


 ラスター自身がその気まずさに耐えきれなくなったのか口を開いた。


「まぁそんでアレだ。そっからテメェらも知ってる様に俺はnew orderにボコボコにされたぜ。以上だ。」


 ボコボコにされ過ぎて寧ろスカッとしている様子のラスターにエヴァンテが慰めの言葉を掛ける。


「貴方のパイロットとしての技量はラウンドに達していると言っても過言ではないですわ。」


「あー。連合の中でも聞いた事あるな。ラウンドってアレだろ。ネネが持ってる奴だろ?ラウンドの称号持ってたらラウンダー、ラウンダーって呼ばれるあのダッサイ奴な。」


「えぇ、その認識で間違いないですわ。」


 エヴァンテとラスターの会話に俺が無理矢理目に割り込む。


「え、ダサいか?(寧ろカッコよくねぇか?)」



 ——————シーン。



 しばらくの沈黙の後、エヴァンテが1人口を開いた。




「かっこいいですわ。」



 どうやら俺はエヴァンテに気を使わせてしまったらしい。


「ん゛ん゛、さて、これで問題が解決しました〜…とは、いかねぇわな。」


「青年よ。俺は全部ホントの事話したぜ?後はそっちの問題だろ。」


 俺はラスターのごもっともな意見に黙り込んでしまった。

 しかし、見た目は気弱そうな()()()()()()()()タフナが反論する。


「いや、貴方当事者(とうじしゃ)でしょ…」


 ラスターはタフナのその意見に反論しようとするが、しばらく苦悶(くもん)した上で反論の余地が見つからなかったらしい。

 ラスターは肘をテーブルに突き捕虜とは思えないダルそうな態度で返事した。


「お前らがなんかnew orderちゃん怒らせる様な事したんじゃねぇか?」


 俺は心当たりねぇ所か、そもそも兎とあんま会ってねぇしな…もちろん、タフナも俺と同様だ。

 …となると。

 俺とタフナは顔を見合わせた後、エヴァンテの方へ目配せした。


「あら、(わたくし)ですか?」


 エヴァンテは指を顎に添え考え込む様に下を向いた。

 きっと洗いざらい思い当たる節を探しているのだろう。

 しっかり()をとったエヴァンテは、真剣な眼差しで言った。


「わからないですわ…」








 しばらくの沈黙が続いた後、エヴァンテを囲う様に立ち尽くしていたメイド達が食べ終わったビュッフェの皿を回収して食堂の裏へ移動していった。


 メイド達のラスターへの警戒心が解けたのか、それともラスターはスフィアが無いと何も出来ないと判断したのか…。

 わからないが、エヴァンテの護衛が全員エヴァンテの元から離れた。


 そんな中、俺は1人でに立ち上がりラスターの椅子まで歩いた。


「…何だよ、青年。」


 ツグネはラスターの肩にポンと手を置き、静かに言った。


「まぁそう落ち込むなよ。」


「何だよ。別に俺は何も落ち込んでねぇーよ。」


「年の離れた敵国の女の子に舐めプされた上、ボコボコにされて…。プライド、ズタボロなんだろ。」


「別にズタボロじゃねぇーし。ていうか、俺がこんな事言うのも何だけどよ。お前らこそ大丈夫なのかよ…。222(セカンドオーダー)ってヤバい奴が攻めてくるんだろ?こんな事してて大丈夫なのかよ。」


 ラスターのその言葉にツグネは軽く返した。


「俺、222(セカンドオーダー)出没(しゅつぼつ)日時(にちじ)知ってっから。」


 その発言に誰よりも早くタフナが反応した。


「え?!そんな大事な事何で知ってるんですかツグネさん?!」


「何でかと言われれば…俺のスーパーパワーでって答えるしかねぇな。ついでにこの情報はお偉いさんとエヴァンテと俺しか知らねぇ情報だ。」


 それを聞いたラスターは体をぐっと伸ばし、どこか遠くを見つめる様な表情で言った。


「お前らん所は預言者でも居んのかね。全く。」


 ラスターには伝わらないツグネの発言の意味。

 しかし、ツグネの能力(ギア)を知るタフナにはその言葉の重みが伝わった。


 タフナは俺の腕を強引に引っ張り、ラスターへ話を聞かれない距離まで連れて行く。

 そして眉の距離を縮めながら詰めて来た。


「もしかして、222(セカンドオーダー)との戦いって2回目とかだったりしますか。」


222(セカンドオーダー)が“いつ”“どこ”に出現するのか把握してからすぐやり直したそんだけだ。だから、2回目とまでは言えねぇ。まだ戦い自体は1回目だと思ってくれ。」


「…こんな事聞くのも何ですが、222(セカンドオーダー)の事どこまで知ってるんですか?」


「正直、1つや、2つ知ってるだけであんまりお前と変わらねぇよ。正直222(セカンドオーダー)が未知すぎるからいつどこに現れるかだけ把握した。もちろん、接触は避けて“やり直し”した。それだけだ。」


「…僕にも言ってくださいよ。」


「今言った。」


「結構もう長い事一緒に居るんですけど、僕まだ信用されてない感じですか。」


「違ぇよ馬鹿。こん(この)事に関してはちょっと話がややこしくなるから詳細はエヴァンテだけに話してただけだ。」


「後でそれちゃんと教えて下さいね。今日中に教えて下さいね。ちゃんとですよ。」


「わーた。わーたよ。でも、それ聞いたからって周りの奴に対して態度変えんなよ?」


「はい?えぇ、わかりました…」


「後、都市のお偉いさんが222(セカンドオーダー)の出現日わかってんのは鐘の音から何か感じ取ってるらしいぜ。」


「…地震を察知する野生動物みたいですね。」



 俺とタフナは内緒話を終えた後、エヴァンテとラスターの元へ戻る。



「ふふふっ、ではフレデレシアは元気にしているのですね。セルフレリアにそれとなく伝えておきますわ。」



 卓へ戻るとエヴァンテとラスターが軽く談笑していた。

 セルフレリアの親戚が連合にでも居るのだろうか?


「よーすっ。戻ったぜ。」


「お。青年、俺に隠れて内緒話とは頂けねぇな。」


「お前今捕虜って立場忘れてんだろ。」




 そしてラスターはさっきのツグネの“222(セカンドオーダー)の出現日時”発言に言及する事なく、場は解散した。

 敵ながら気を遣ってくれたのか、面倒事を避けたかったのか…まぁアイツの性格なら間違いなく後者だろうが。


 ラスターはエヴァンテのメイドとロイヤーへ連れられどこかへ行ってしまった。

 多分、牢屋へ戻ったんだろう。知らんけど。


 結局、兎が何故あそこまで暴れたのか分からずじまいだな…。

 ラスターが何か兎の地雷を踏み抜いたのか…?

 まぁいい、兎はちゃんと222(セカンドオーダー)が現れた時、きっちりnew orderとして仕事してくれれば、何の問題もない。

 まぁ不明瞭なトラブルであったが無問題(もうまんたい)だ。


「なぁ、タフナ。」


「何ですか。」


 俺とタフナは食堂の広い広い吹き抜けの窓からぐちゃぐちゃになったガーデンを見ながら話す。

 もちろん、周りにはビッフェを堪能する客なんて居ない。


222(セカンドオーダー)は今から2週間後の朝4時に来る。」


「…222(セカンドオーダー)って、随分と早起きなんですね。ていうか、都市のお偉いさん(がた)が出現日時知ってたんなら、ツグネさんが“やり直し”た意味なかったんじゃ無いですか。」


「言ったろ。222(セカンドオーダー)について俺は1つや2つ知ってるって。」


「…何ですか、その漫画の伏線回収みたいな話し方。」


「う、うっせぇな。ちょっと言われたら恥ずいじゃねぇか。」


「ツグネさんって変にウブな所ありますよね。はいはい。その222(セカンドオーダー)について2つ目を教えて下さい。」


 タフナのすました態度に対し、拳を強く握る程の苛立ちを感じながらも、俺はタフナに話す。


222(セカンドオーダー)は伏兵を操る。んで、そろそろ来るぜ。」


「…何が来るんですか。」


222(セカンドオーダー)の伏兵、空飛ぶ駆逐艦がよ。」




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