〔番外編第3話〕死にたくないモブvs全力で殺しに来る2機
主人公、京の喋り方は普通の女の子って感じです。外壁メンテナンスの作業員達には厳しい口調ですが心を許した相手には普通に話します。
※勘違いされそうなので書いておきますが、助けてくれたおっさんは人の情報を勝手に売り飛ばす中年の男とは違います。喋り方似てるので注意!
下に空いた外壁の風穴から避難するって…こんな揺れの激しい中どうやってそこまで降りる?!
「おい、おっさん!どーやってこの下、降りる?!」
「俺の切れた下降制御装置のワイヤーを固定されてある壁に繋げて降りるぞ!!!」
「でも、長さ足りるのか?!」
相変わらず、大聖堂とやらのミサイルの轟音で耳がイカれそうになる…が、今はそんな事気にしている暇は無い。
「降りるか、ここで死ぬかだ!!!ちょっと長さ届いてなかったら飛び移るまでだよぉ!!!」
中年の男は安定した外壁にワイヤーをくくりつけた。
「おい、まさかッ本当にここから飛ぶのか?!」
「俺から行く!!!俺が生きてたら後に着いて来い!!!」
——————ヒュンッ!
「行くぞォォォォォォォオオオオ!!!」
「おっさぁぁぁあん!!!」
おっさんは何の躊躇も無く、勢いを付けて下へ降りた。
——————ヒュンッ。
——————…。
「い、生きてる…のか…?」
下の穴へ向かって飛び降りたおっさん。
しばらく返事が無かったから死んだのかと思った。
色々諦めた瞬間、繋がれていたワイヤーがクイクイと引っ張られた。
「…あっ、そうか。こんな大聖堂の轟音の中、下からの声なんて聞こえない…よな…まぁそれはそうだよね。ダメだ…しっかりしないと…死ぬ…。」
おっさんと同じ様にワイヤーを腰に巻き付けた。
——————カチカチッ。
「よし、行くぞ…行くぞ…い、行くぞ…。ダメだこれめっちゃ怖いッ!!!」
ワイヤーがクイクイ引かれる。
「わっ、わかってるよ!!で、でもちょっとまだ勇気がッ…」
——————ヒュゴォォォォォォォッ!!!
「ヤバいッ…」
再び遠くからコチラに向かって飛んでくる取っ組み合いをしている2機のスフィア、迷っている暇は無い。
おっさんみたいにダイブするしか無いのか?!
あーもうぉ!考えてる時間無い!!!
どうにでもなれぇ!!!
私は全力でジャンプした。
「もっと別の場所で戦ってよぉぉぉおおお!!!」
——————ドォガァァァァァアッン!!!
2機のスフィアが外壁に激突した。
激しい砂埃と共に、勢い良く下へ落ちる。
「やぁぁぁぁぁぁぁぁあああッ!!!」
投げ出された体は腰に繋がれたワイヤーを中心に円周をなぞり軌道を描いた後、下の風穴へ投げ出された。
——————ドンッ!ゴロゴロッ!ドンッ!!!
着地した地面に激突し、ゴロゴロ転がりながら行き先の壁にぶつかる。
「だ、大丈夫か?!」
無様に転がる私を心配そうに覗き込むおっさん。
「ッ…痛た…たッ…。」
「どこも折れてねぇか?!」
しばらく蹲った後、自分の体を動かして確認する。
「ど、どこも折れてない…と思う…。」
「そうか、なら早くもっと中の方へ急ぐぞ!!!」
グダる私の手を強引に引き歩き出すおっさん。
中は薄暗く無数の通路が重なって出来た様な、まるで迷路の中みたいだ。
所々、血や骸骨、その他の骸が転がっている。
どうやらヴェルサイユの中にはゾンビや怪物に溢れかえっていると言うのは本当だったらしい。
血で塗れた手形がそこら中に付いている。
「ひぃッ…ホラー映画みたいじゃんかッ…!」
「いつどこからゾンビが出てくるかわかんねぇ…警戒しろよ…。」
——————ガチャッ。
突き当たりのドアを開けて再び、薄暗い通路を進む。
自分達の足跡だけが響くこの空間に加え、この不気味な雰囲気…正直何がとは言わないが、チビりそうだ。
もう、ちょっとチビってるかも知れない。
いや、正直もうチビってる。
——————ピチョンッ。
「うぎゃぁぁぁあッ!!!」
「わぁぁぁッって驚かすなよ嬢ちゃんッ!!!ただの水じゃねぇか!!!」
「あっ…そうか…そうだな。ご、ごめん…。」
「嬢ちゃん今更だが、名前は?」
「…き、京。」
「おう、そうか京。俺はドラゴン、よろしくな。」
握手する手を差し出された。
これまで何度も命を救ってくれたドラゴンの手を無視出来るはずもなく人生で初めて握手する。
——————ガシッ。
「さぁ、嬢ちゃん。警戒して地上を目指すぞ。」
「…わかった。」
その時地面が大きく揺れた。
——————ゴォォォォォォォオオオンッ!!!
「あーッチクショ、まだ近くであのスフィア達戦ってんのか!!!」
「ドラゴン、ここもいつ崩れるかわからない早く行こう。」
——————ガチャッ。
2人は迷路の様な薄暗い通路を進む。
ゾンビや怪物の類はまだ出て来ていないが、一体どこに潜んでいるのやら…。
——————ガチャッ。
「おい!嬢ちゃん、遂に広い空間へ出たぞ!ッて…何だ、街…か?」
「なッ、何だこの不気味な“街”は…?」
洞窟が掘られて作られた家や、廃材などを使って作られたであろう建物が沢山ある。
しかし、特筆すべき点はそこじゃない。
この街の異常さはこの街の“空間”にあった。
まるで蜘蛛が巣を張ったかの様な白い糸が上に沢山ある。
しかも、その“上”はヴェルサイユの地中なだけあって不思議な青い大きな浮遊物が浮いて居た。
「おい、嬢ちゃん…あれ!あれ!」
「…ん…?あれは…。」
ドラゴンの指を視線で辿るとその先に大きな“スフィア”がいた。
しかし、そのスフィアは蜘蛛の糸に絡まった様な格好で体制を崩しこの街の上でボロボロになっている。
「…ハァ…一体ここで何があったんだよ。」
「蜘蛛みたいな化け物が居るかも知れないから、隠れながら移動しよう。」
「そうだな…嬢ちゃんの言う通りだ、静かに進もう…。」
建物の影に隠れながら街を歩く。
この街中に張られた太い糸は何なんだろうか…。
荒れた市場の様な場所をコソコソ歩く。
——————コツンッ。
木製の古い看板に足をぶつけた。
「…ん?トワイライト5000…。この場所の名前か?ドラゴン、トワイライト5000ってどこか知ってる?」
ドラゴンは京の足元に落ちている看板に目を向けて言う。
「…そうか。ここがあのトワイライト5000…か…。嬢ちゃん安心しな、ここにデカい蜘蛛なんか居ねぇよ。」
「…じゃぁこの街は…この街に張られた糸は何…?」
「まぁ聞いた話だが、昔の権力者が“居た”街で〜…2年前、エヴァンテ様に制圧されたっとよ…」
「エヴァンテってあのエヴァンテ?!」
「流石に嬢ちゃんもエヴァンテ様ぐらいは知ってんのか。」
「え、エヴァンテってヴェルサイユきっての権力者の1人のアイツ?!」
「あぁ、そうだよ。アイツとか…あんま言わない方が良いぞ…。」
「え、あぁ。そうか…。そうだよね。」
荒れた街の所々に大きな抉れが見受けられる。
まるで爆弾でも落とされたかの様な…いや、ミサイルか?
これも全部トワイライト5000を制圧する為にエヴァンテがやったのか…な。
——————シャンッ。シャンッ。
「…おい、嬢ちゃん止まれ…何か聞こえるぞ。」
「え…あっ…鈴の音…か?」
——————シャンシャンッ。
——————ニャァ〜〜イ〜ィ〜ヤァ〜ニァ〜ィ〜ヤァ〜!ィ〜ヤァ〜!
「んだ?!と、とにかく隠れろ!」
「猫?!いや、違うかッ?」
「早く隠れるぞ!」
「あ、あぁ。」
——————ニャァ〜〜イ〜ィ〜ヤァ〜ニァ〜ィ〜ヤァ〜!
——————シャンッジャリンッ!ダンッ!ダンッ!
鈴の音と足音が近くで鳴る。
それはリズムを持ちメロディを奏でている。
楽器…笛…歌声…何はともあれ間違いなく人間が出してる音だな…。
おっさんの指示に従いながら静かに音の方に顔を出す。
——————ニャァ〜〜イ〜ィ〜ヤァ〜ニァ〜ィ〜ヤァ〜!
——————ダンッ!ダンッ!ニャァ〜ィ〜!
最初に目に飛び込んできた光景は異様を超えて異常だった。
祭りで使われる様な大きな神輿に、それを担いでいる“集団”が大勢そこに居た。
人数はザッと100〜200人…?!
ヴェルサイユの中にこんなに人いるわけがない!
しかも、豪勢に提灯や旗を持ってライトアップしている。
その祭り集団を守る様に囲う、明らかに普通の人間とは思えない等身の人外達がいる。
ここはヴェルサイユの中だぞ?!何故、こんな大勢も…。
「んでッこんな所で祭りなんかしてんだよッ。」
ドラゴンの困惑と怒りを含んだ囁き声で視線を戻される。
「あのお祭り集団ぜっっっ絶対ヴェルサイユ陣営じゃ無い気がする。」
「…だよな。俺の予想でしか無いがヴェルサイユ陣営と222の決戦を漁夫の利しようとしてるどっかの国…とかじゃねぇかな…。」
「…え、それはそれでマズイんじゃ…。」
「あぁ、マズい…が。ここはヴェルサイユ地下数十kmだ。すると、祭り集団は地上から数百km…ここまで登ってきたって事になるな。」
「…ヴェルサイユの中のゾンビや怪物を押しのけてここまで上がってきた…つまり、相当な強者達という事か…?」
「あぁ、それもそうだが…俺の言いたい事はそういう事じゃない。」
「え?違うのか?」
「さっき言ってたエヴァンテ様がコイツら祭り集団の存在に気づいていない訳ない、つまり…」
ドラゴンが言いかけた瞬間、廃れた街に1人の女の声が響き渡った。
——————『“頼もぉぉぉぉぉぉぉおおおおおお!!!”』
——————ジャリンッ…。
その拡声器を使った様な女の声に、祭りの歌声と鈴の音がピタッと止まる。
——————『“私はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああ!!!…えーと…え〜と……あっ、ブリエル・ベリア…えーと…ベネ…え?あー…何だっけ?え?、あっそうそう…それっ。それっ。ベネテクト•ベリエッタ…後は何だっけ…え?あぁ、もう良いの?あ、はい。えーと、フブだぁぁぁぁぁぁあ!!!”』
何やらこの声の持ち主は計画性が無いらしい。
そしてを拡声器を使って声を出している者の隣にも誰か居る事が伺える。
——————『“え〜と…ヴェルサイユの領土に侵入した事につき…えーと…ねぇ、ここなんて読むの?え、あぁ、おけおけ。許諾していないにも関わらず…”』
あぁ、聞いてられない…まるで子供のおままごとぐらいグダグダだ…。
——————キィーンッ。
耳を塞ぎたくなる様な音割れの後また知らない女の声が聞こえてきた。
——————『“貸せやァ!もうアタシがやんよォ…ヨォ連合さんの属国和道国の皆さんヨォ…テメェらヴェルサイユが222と戦ってる時に奇襲ってかァ?!良い根性してんなァ…?アァ?そんな大人数引き連れて来やがってェよォ…覚悟出来たんだろうなァ?”』
今度はヤンキーが出てきた。
一様ヴェルサイユ側の人達っぽいから味方ではあるんだろうけど、なんか…全体的に雑というか…なんか…不安…だな。
「おい、今喋ってんの六防のカンネ•ロードじゃねぇか?!」
「六防ってヴェルサイユの〜…軍の人?」
「馬鹿ッ、六防ってのはヴェルサイユの軍数百万人から選ばれた6人の頂点だよ!そのうちの1人が今ここに居るんだよ!良かった、俺たち助かるぜ!」
「い、いや、ドラゴンちょっと待って…。」
「んぁ?」
「マズクナイカ…」
「何がだ?そんなカタコトで…。」
「だって、戦いに巻き込まれ…」
——————『“ここはトワイライト5000だァ…ならず者は少ねぇ場所だが派手に戦争ォすりゃア寄ってくんだろ?それはァお互い望んじゃいねェだろ?なァ〜…だから1対1でやんのはどォ〜だァ?テメェら和道国のやり方ァだろォ?”』
良かった…外みたいな派手な戦闘にはならなそうだ…。
——————《久しぶりやなぁ〜元気してたかぁ〜?2年間の空白期間をへて、感動の再会やなぁ〜。》
和道国と呼ばれた陣営の神輿から1人の白いチャイナ服を着た背の小さい華奢な女が出てきた。
ツインテールの様な髪型に2つのボンボンを引っ提げ子供の様な見た目をしている。
王女様…か?
——————《2年ぶりの再会で胸ん中いっぱいやろうけど、アンタが言い出した勝負ウチが、受けて立つは〜。》
——————『“チッ、んでェテメェが今、和道国の連中といんだよ。メイトン。”』
ライバル同士が戦場の中で再会した、そんなシュチュエーションを目の当たりにして、私はつくづく思う。
物語の中心に私、“京”は居ないのだと。
分かって居たがナニカ心に来るものがある。
外壁で意味もなくヴェルサイユの可動殺されて居たかも知れない私の人生まるで馬車に轢かれる蟻の様だ。
油断すれば躊躇なく潰される人生。
その上、私にはギアやエグゼクトもスフィアを運転する才能も無い、得意な事も無い、運動も苦手だ。
何かの間違いで物語に首を突っ込めたとしても多分すぐ死ぬのがオチだろう。
まるで物語のモブ以下じゃないか…。
「おい、嬢ちゃん…ヤバい…逃げるぞ。」
「アッえ?」
「ここに連合の主戦力“メイトン”が居るって事はもう外よりヤベェぜ…。」
「メイトンってそんなにヤバいの…?」
「説明してる時間はねぇ!早く安全な場所へ急ぐぞ!」
——————ドゴォォォォォッン!!!
「ッ?!んだぁ?!」
「あ、アレッ!ドラゴンッあれって!!!」
——————ドガァァァァンッ!!!
外の外壁で戦ってたスフィア2機が〔トワイライト5000〕と呼ばれるこの廃れた街まで突っ込んできた。
三章読み始めた皆様へ、全然内容分からなくても大丈夫です。戦火の中から始まる物語なので読者も京も気持ちは一緒だと思います。
※《1話から読んだ人向け小話》メイトンがいつもの赤いチャイナ服じゃ無い理由は、ゾンビの血が付いたらすぐにわかる様にする為です。
いつも赤いチャイナ服着てる理由はその逆なのにね。
その対象がゾンビか人間かで着る色が変わるなんてメイトンは何てオシャレさんなんでしょうか。




