〔第44話〕助ける命と助かる命
全然ッ周回移動都市に乗りませんねぇこの人達は…本編が始まらねぇよ。
「ッ…?!」
ちょうどフブがタンスからリビングへ出たタイミングで222が顔を逸らしていた事もあってまだ姿は見られていない。
並々ならぬ反射神経でキッチンの角にその姿を隠すフブ。
(兎、出てきちゃダメ。)
アイコンタクトで伝えるフブ。
しかし、そんな事をしている間にキッキンから見える影が無くなった。
部屋を日陰にしていた影が消えた。
フブは恐る恐る窓に向かって顔を覗かせる。
「居なくなってる…」
兎はフブの呟きを確認した後、それに動揺せずタンスを勢いよく飛び出し速攻でゾンビにキックをかました。
——————ドスッ!
窓の外に何が居たのかなど今は関係ない。
現状、目の前にいるこのゾンビが1番危ない。
だから、最初にゾンビを倒さなければならない。
私はキッチンからアイスピックを持ってきて、丸まっているゾンビの後頭部を血の飛び散らぬ様にそっと差し込んだ。
——————バタッ。
後頭部からゾンビの脳へ侵入したアイスピックはゾンビの海馬を的確に破壊した。
完璧な工程を経て、ゾンビはその場に静かに倒れ込んだ。
兎の冷静?な行動に関心しつつも先程の222が衝撃的過ぎたフブは我慢できず窓を指差して言う。
「兎!!!222って奴が外に居た!でっかいロボットがいた!」
まるで子供が夢の内容を親に必死に訴えるかの様な純粋さがそこにあった。
「おおおおっきいロボット…多分、222って奴だね…」
「私、後ちょっとタイミングズレてたら222に見つかってたよぉ!んーーー!!!」
「ぞぞぞゾンビはそれに怯えてたのかな…」
「…大きなロボットも怖いけど、そんな事より兎!なんて言うんだろう…えーと、これ…私達の時間巻き戻ってる…よね?」
「そそそうだね…。…あ。」
私はテーブルに置いてあるスマホを取り、早々電話わかけ始めた。
——————プルルルルッ。プルルルルッ。
フブは疑問に思う。
こんな状況で誰に電話をかけているのだろうか。
今目の前に居た“大きなロボット”よりも“時間の逆行”よりも大事な事が…?
そしてフブはひらめいた。
「あっ…時間が戻ったって事は…!!!」
——————ツーッ。ツーッ。ツーッ。
「ででで電話、繋がらない…いいい急がないとッ…!」
——————ダッダッダッ!
私は玄関に向かって走り出す。
フブは何も言わずに私の考えを汲み取ったかの様にただ後ろから着いてまわる。
急いで靴を履き、廊下へ出てエレベーターに乗る。
私はマンションの玄関へ到着し、設置してある彫刻に対し指示を出す。
「皆んな。警戒体制、レベル5、No01〜10まで着いて来い。」
——————メインサーバーから。“了解”致しました。
——————プシュッンッ、ガシャンッ!
ヴィーナスとその他、諸々の彫刻が一斉に動き出す。
場に緊張感が漂う中、ヴィーナスを見つけたフブが歓喜の声を上げた。
「ヴェーナス!なんか超ぉ久しぶりに感じる!!」
——————「“お帰りなさいませ”。」
ヴィーナスのその発言にフブは違和感を覚えたが、今は間に合わす為に急がねばならない。
私もその言葉に違和感を感じたが、今はそんな事言ってる時間はない。
「No05、No08飛行形態になれ。」
——————メインサーバーから報告します。その行為は日本国憲法、航空法 第五百二条に抵触する恐れが有りま…
しかし、私は状況の読めないメインサーバーの妄言を無視する。
「いいい行こう、フブ。父さんがッ…!」
「え、あ、メインサーバー…うん、行こう。急がなきゃだしね。」(え、兎…メインサーバーの言葉無視した?!)
——————… No05、No08に飛行形態の仕様を許可します。では、良い旅を。
——————ガシャンッガシャッ!ガシュンッ!
ヴィーナスとその隣のロボットが変形して小さいドローンの様になった。
しかし、ドローンとは違い回転する羽は無い。
その代わり、四方へ散らばった羽のない和っかが沢山ついている。
「ふふふフブ、ヴィーナスの方に乗って!!!」
「あッ、うん!」
言われるがまま乗るフブ。
自動で安全ベルトが足と腰に巻きつけられた。
「あひょッ?!びっくりしたぁッ!」
——————No05ヴィーナスから兎様へ。目的地防衛省、ルートを問います。
「最短だ。」
私が返答した1秒後、2人を乗せた飛行形態のロボット達が発艦準備を始めた。
——————2分で参ります。
——————ゴォォォォォォォオオオッ!!!
「えっ…ジェットエンジン?!ドローンじゃないの?!」
「フブ、せせ背骨折らないでね。」
「ねぇ゛ーーー!!!怖いッ!ひゃぁッ…」
その瞬間、マ○オカートの如く急発進した。
——————ゴォォォォォォォオオオッ!!!
「うわぁぁぁぁぁあ聞いてないぃ!!!」
———————————————#####
「カスミ、目的地に到着したァ。サキミネのマンションだ。」
「立派な建物だな。さぞ地位が高い人物なのか?」
「知んねェが早く回収しに行くぞォ。」
——————ゴォォォォォォォオオオッ!!!
「んァ?何だァ?」
「なんだ。」
——————ヒュッンッ!!!
カンネ•ロードとカスミの横をジェットエンジン付きのドローンで通り過ぎる兎達。
「はァ?!サキミネェ!!!」
「なかなかアドレッシブだな。うむ、楽しそうだ。」
兎達が通り過ぎると同時にマンションの扉は静かに閉まった。
カンネ•ロードは口を半開きにし、唖然としている。
「あんだけ゛待っとけてェ言ったァのによ゛ォ゛…」
キレそうなカンネ•ロードとは相反し、冷静なカスミは近くにいたサキミネの家のロボットに話しかけた。
「すまない。先ほど飛んで行かれたサキミネ殿は何処へ向かったのだ?」
——————警戒レベル5故、お教えする事は出来ません。
「そうか。それは残念だ。」
「聞かなくてェいい。今飛んでったのがァサキミネだァ。」
「あの一瞬であの二人の顔を見たのか。相変わらずカンネの目は良いな。」
「…ァ〜、んな事より、サキミネにイラつくわ゛。」
——————バックアップを確認。んー。んー。んー。
「おい、随分可愛い声を出すロボットじゃないか。」
「あ?どォーでもいーぃ行くぞォ。」
「あぁ。」
——————衛星からのバックアップによりカンネ•ロード、カスミの存在を確認。兎様との接触、友好関係、利害の一致確認、状況シュミレーション開始。終了。海岸沿いでの超常現象、未知のエネルギー確認。
「なんか始まったぞカンネ。」
「…は?」
「どうしたカンネ?」
「コイツ、今“巻き戻った出来事”の話し出したぞ。どォーゆーこった。あ゛ぁ゛?!」
カンネ•ロードのその言い回しに慎重さが垣間見える。
万が一勘違いだったとしても自分達が時間を戻った事を悟らせない言い回しにカスミは心の中で関心する。
(カンネ、今日は何かもの凄いイライラしいるが、頭はキレっキレだな。二つの意味で。)
——————確認完了。カンネ•ロード様カスミ様、咲嶺兎様は防衛省に向かいました。至急、援護願います。
「お前ェ…なァんで過去の出来事を知ってんだァ〜?」
——————衛星のバックアップから未来の日付の出来事が記録されてありました。私達はそれらを観測しました。
「どうなってやがる…つまり、“やり直し”のルールの穴を突いたってェ事かァ?」
「ほぼ間違い無く偶発的な物だろう。」
「まぁいい。んなァ事は後だァ。防衛省へ急ぐ。」
——————ガシュンッ、ガシュンッ、プシューッ。
カスミの腰についているバックパックの機械が大きく変形した。
そこにカンネ•ロードが乗る。
「行くぞ。カンネ舌を噛むなよ。」
「わァーてる。急ぐぞ。」
——————良い旅を。
警備ロボットの挨拶を気にカンネ•ロードを乗せたカスミが急発進した。
——————ヒュンッ!!!
———————————————#####
飛行形態に変形したヴィーナスに乗るフブ。
後ろからは8体の警備ロボが追跡し護衛する。
——————ゴォォォォォォォオオオッ!!!
路地裏を飛び抜けた。
そして電線ギリギリの低空飛行をし、防衛省まで一直線で行く。
「アババババッ!!!」
風圧で息ができなくなり焦るフブ。
まだギリギリ息ができるフブは体力の無い兎を心配し、見ると体制を前に屈めてバイクレーサーの様なポーズをしていた。
それに習って持てる力を腹筋に込め、フブも兎と同じ体制にする。
「プハァッ!!!」
(この体制だと息が出来る!!ほげぇー凄い!!)
先に教えといて欲しかったと言う気持ちを抑え込みフブは兎視点に立って考える。
今はお父さんの命が心配で後先考えられなくなっているのだろう。
フブはヴィーナスに付いているタッチパネルを見る。
そのタッチパネルには後1分で到着と書いてあった。
(早ッ!!!)
——————ゴォォォォォォォオオオッ!!!
兎はフブの方を見る。
体制を教え忘れていたから心配したが、無事私の真似をしてくれていたらしい。
この速度とあの仰け反り体制からよくこの体制に持っていけたな…。
フブの筋肉はどうなっているのだろう…。
そんな事より、顔の潰れたゾンビが玄関から侵入してくる前、お父さんとの電話が突然切れたのってメイトンが防衛省に攻めて込んできたからなのか。
…何故メイトンが防衛省へ攻めてきた?
いや、考えるまでも無い。
理由はわかる。
お父さんが“サキミネ”という名前だからだ。
メイトンは私を探していた。
そこからメイトンは私の情報を掴んでマンションまで来た。
過去の道筋は見えた。
…でも、私が今ここでメイトンの元へ向かって何になる?
防衛省でも敵わなかったメイトン相手に何が出来る。
マンションの強力なナノシステムでも時間稼ぎにしかならなかったのに。
防衛省に備え付けられている兵器でメイトンは死なないという事実は、もう巻き戻る前のお父さんが体験したはずだ。
別に私に秘密兵器がないわけでは無い。
が、それは最終の手段だ。
代償がデカ過ぎる。
なら防衛省の人を避難させるか?
いや、国の防衛の要を投げ出す様な人は居ない…。
それはお父さんも同じ…なのかな…。
どうやって納得させればいいんだ。
時間が巻き戻った事を言うか?
カンネ•ロードとカスミに助けを求めるか…?
しかし、カスミはメイトンに負けていた。
「私はどうすればいい…」
そして、私は何も考えつかないまま防衛省へ到着してしまった。
——————ズドドドドドドドッ!!!
到着するやいなや機関銃の音が酷く鼓膜を揺らした。
私とフブはヴィーナス達と共に防衛省上空でホバリングする。
上から見える景色は奇異怪怪だ。
——————ズドドドドドドドッ!!
防衛省の入り口で1人の女が機関銃に集中砲火されている。
——————ズドドドドドドドッ!!
しかし、その女は機関銃の集中砲火を喰らって尚、ケロっとしている。
「メイトンッ…!」
兎の詰まる言葉にフブが返す。
「兎!防衛省の人、早く非難させよう!!!」
フブの言葉に対し、私は無理やり肺から空気を搾り出し言った。
「ししし信じて貰えない…何も…思いつかないッ…」
下唇を噛むに私にフブは飛行形態のヴィーナスをバンバン叩き言う。
「ヴィーナスくふぅん!理由は知らないけど、多分、何か未来のバックアップ、メインサーバーから貰ってるんでしょ?」
——————察しがいいですね。フブ。
私は驚いた顔でヴィーナスとNo08に問いかける。
「それは…一体…どういう…?時間の逆行に対抗…?データは逆行しないのか…?いや、データも電子だ。壊れた建物が元に戻ったと言う事はつまりそう言う事で…わからない。どうして警備ロボ達はバックアップが取れてい…」
兎の動きが止まる。
「どうしたの…兎、急に黙って…?もしかして何かいいこと思いついたの?!」
「わわわわかった…衛星だ…。時間の逆行の法則は大気圏外にまで影響しないんだ。いいいいや、正確にはわからないし、ちち違うかもしれない。ででででも、衛星自体の時間は逆行してない…。つまり、メイトンのデータがそこにある!」
「おぉ!つまりぃ!!!」
「めめめメイトンのデータがあっても…物理法則を超えた動きは予測できないと思う…どどどうしようも…」
「どうしようもないんかーいっ!」
その時、私を乗せている警備ロボットNo8が言った。
——————主人を危険に晒す行為の提案。これは決してあってはなりませんが主人の意に反する様な事はしたくない。よって私は提案します兎様。お父様をお守りする為には貴方が囮になれば良いのではないでしょうか?
その考えに私は歓喜する。
「そそそそうか!そもそもメイトンの狙いは私だった!しかも、メイトン自体にカンネ•ロードやカスミ程の速度はなかった!今この状態ならば私を囮にメイトンを防衛省から離すことができる!!!」
その考えにフブは納得いっていない様子だったが他にいい提案が思いつかない。
「ねぇ、兎。でも、メイトンベクターの残骸使って竹馬してた時めっ↑ちゃ↓速かったよ?」
「でででも、今は空…。マンションが爆散した時もメイトンは空へまでは対応出来てなかった…」
「おぉ、確かに!」
現状、全員助かる方法はこれしか無いのだ。
「よし、わかった兎。危険だけどやろう。メイトンにギャフンと言わせてやろうぜ!へっ!」
「…うん。」
———————————————#####
『ハァ〜…アンタらおもん無いなぁ…さっきから飛び道具ばっかりで手数が少ないったらありゃせんわ〜。』
メイトンが防衛省の建物に向かって拳を構えた瞬間、上空から叫び声が聞こえた。
——————「ねぇ゛ーーーー!!!!クソゴリラァァア!!!サキミネは私の隣に居るよぉおお!!!私が先に貰って行くからねぇ〜ん!!!」
メイトンは不意を突かれ一瞬固まった後、すかさず言った。
『はぁ?!どこの誰か知らんけど…って!アンタらあん時の?!かっぷらーめん教えてくれた子ぉらやんか。まぁとっ捕まえて損は無いか。捕まえてサキミネ本人ちゃうんやったら殺したらええだけやしなぁ。防衛省は後回しや。ええよ。その誘い乗ったるわ。』
一方その頃、兎はフブの発言に困惑していた。
「え?ふふふフブ?!何でそんな一捻り入れたの?」
「いーから、いーからぁ、ここはね私が先に誘拐しちゃうからねぇ〜んって言った方が相手は食いつきやすいんだよぉ。フリマと一緒!」
「そそそそうなんだ…」
そんな事を話しながら私はメイトンの方を見る。
メイトンの顔がこちらに向けられている事がはっきりわかるそんな距離だ。
しかし、メイトンの気をこちらに引けた事に対し、ひとまず安心した。
誘導は出来たし、メイトンに時間を逆行する前の記憶は無いときた。
発言からもそうだが、過去の記憶が残っていたら防衛省なんかを攻撃せず、直で私のマンションに来ていただろうから。
思考が冴えてきた。
フブとNo8のおかげだ。
「ふぅ…兎。」
「うん。」
「行くよ。」
「うん。」
さぁ、2回目の鬼ごっこ開始だ。




