〔第38話〕再会 〜ムキムキゾンビを添えて〜
ちょいと入院してやした。引き続きよろしくお願いします。
こんにちは皆さん。
外は危険ですが、私は今1人で外へ出ています。
まぁおつかいです。
目的のブツは医者と医療品です。
まぁ病院に行けば医者の1人や2人いるでしょう。
でも、ゾンビの世界になってしまった以上病院の混み具合は想像がつかないな…。
すいているのか、混んでいるのか、無くなっているのか…。
「よしっ!今の所、大通りにゾンビも居ないし楽勝ッ!」
今まで他人の速度に合わせて走っていたフブは今、全力で走っている。
——————シュダッダッダッダッダッ!!!
全力でなんばの大通りを走るフブ。
車並みの速度で走っている。
誰もこの速度についてこれないだろう…ふふっ。
走っていた足を止めてフブは呟く。
「なんばに病院あるの…か、?」
なんばの道頓堀の橋で頭を抱えるフブ。
ネットが繋がらないから検索できないしなぁ…まぁスマホ今持ってないけどさぁ…。
「周りに人も居ないし…急がないと、サムが…」
上を見上げると大量の飛行艇が謎のロボットと激しい戦闘をしているし、前を見ればゾンビが出てくるかもしれない。
ディストピア極まれりだ。
「あっ!そうだ!交番に行けば地図とかあるかも知れない!」
フブは思いつきでなんばの交番に走る。
「なんば治安悪いから近くに交番あってラッキー!」
確か、ここを曲がって…
三角公園って場所にあるはず!
軽快な豪速ステップを踏み、曲がり角を曲がった先で見た現実。
「こ、交番ーーーー!!!!」
見たくない現実、紛れもない現実。
ロボットに堕とされたであろう飛行艇の残骸が交番の上に跨っていた。
もっと詳しくいうと交番は飛行艇の残骸に潰されていた。
(でも、まだ交番は燃えてない!)
残骸をかき分けながら地図を探すことは出来る。
「んんんー!!!」
——————ガシャーンッ。
フブは潰れた交番と飛行艇の残骸を凄い力で引っ剥がすフブ。
「うっりゃぁっ!!」
——————ガッシャーンッ。
飛行艇の残骸を蹴り飛ばすフブ。
飛行艇の残骸はひとつひとつの部品が凄く重たい、手で持ち上げるより足で蹴り飛ばす方が効率的だ。
決して私のストレス発散とかでやっているわけではない。
——————ガッシャーンッ。
「んー、あ!これ引き出しっぽい!」
残骸の中から見つけた机の様な物。
「んん!!!ふんっ!!」
——————ガンッ。
——————ガンッ。
引き出しを開けようとするがなかなか硬くて開かない。
交番が崩れた衝撃でフレームが歪んでいるのだろう。
「しかも、これ鍵の部分が変に歪んで…んぁーもうぉ!めんどうだ!せい!!」
——————バキッ!!!
フブは机の鍵の部分を踏みつけた。
「よし!あいた!え…最高ぢゃん!」
中には拳銃が3丁と弾丸30発が入っていた。
流石、なんばの治安悪パワーと言った所か…。
まぁ最近も暴走族同士が喧嘩してたし…まぁ納得か。
貰っておこう。
——————ツーッ。
交番の瓦礫から赤い血がフブのつま先に向けて流れて来た。
中に警官が居たまま潰されたのだろか…。
可哀想だ。
その時、フブの中のリトル兎が出て来て呟く。
(もも、もう一丁拳銃あるっていう事じゃん…探して貰っていこう…)
なんて事言うんだ、私の中のリトル兎!
(でででも、ヤカラに取られるよりは…ままままし…)
ぐっ…確かに。ぐぅの音も出ない、。
——————ガシャーンッ!
瓦礫を蹴飛ばして警官の死体を探すフブ。
こんなに大きな音を出していたらゾンビがやって来そうで怖いが仕方ない。
まぁ私1人ならゾンビから余裕で逃げきれそうだけど。
慢心かな?
「あ!警官居た…」
下半身が瓦礫に潰された警官が白目を剥いて死んでいた。
警官の上着から拳銃を探す。
「んー…無いな…拳銃。お?」
フブは警察官の上着から地図を見つけた。
「やったぜ…へっ…」
少し血がついている地図だけど、まだまだ使えそうだ。
これを兎達に見られたら、私が血みどろな戦いをして、地図を奪い取ったと思われかねない。
まぁいいか…。
今はそんな事より、見つけた地図で病院を探さなければならない。
「んー、どこにー、あるー、かなー、サムの傷は…外科?」
1人で地図をまじまじ見る。
「んー…わかんない…」
1人で呟いていると耳元から声がした。
——————「おい、お前…ベリエッタか。」
「うわぁぁぁあ!!!」
いきなり耳元で喋られ、驚きで飛び跳ねるフブ。
急いで振り返るとそこには背の高い女が立っていた。
すらっと手足が長くモデルさんみたいだ。
服装は黒のスーツっぽいモード系の服、胸ポケットにはサングラスを下げている。
顔はハーフというよりかはクォーターに近い様な、割と日本人寄りの顔だ。
髪は黒く、少しだけ癖っ毛のミディアムの様なショートヘアだ。
「びっくりしたぁ!あっ…」
フブは手元の地図が破れている事に気づく。
驚いた勢いで破いてしまったのだ。
「ベリエッタ。お前、どこで何してたんだよ…」
一方的に意味のわからない事を話しかけられるストレスとベリエッタというワードに苛立つフブ。
「ねぇ゛ーーー!!!貴方のせいで地図破れたんだけどぉ!ベリエッタなんて知らないから!私に似てる有名人とかじゃ無い?!他人の空似ですよ!!」
「いや、お前…でも地図は自分で…」
「責任とって!」
「あ…?」
「責任とって一緒に探し物手伝って!」
「ベリエッタ…じゃ無いのか?探し物って何だ。」
お互い疑問が絶えない不思議な空間が出来上がる。
「私、病院と医者探してるの!大至急で!」
「医者?誰か怪我ァしてんのか?」
フブが飛行艇で埋め尽くされた空を指さして言う。
「知り合いがあの残骸で大怪我したの。一刻を争う怪我で私達じゃどうしようもないの。だから助けて欲しい。」
「…知り合いに医者がいる。が、確認したい。お前は本当にベリエッタじゃないのか?」
「私はベリエッタじゃありません。フブ!」
「…そうか。アタシはカンネ•ロードだ。よろしくなァ。」
時々出てくる田舎のヤンキーみたいな話し方が印象的だが、どうやらこのモデルみたいな人は“カンネ•ロード”と言うらしい。
「よろしくカンネ•ロード。ところで医者って…」
——————ドゴォーーーーンッ!!!
フブとカンネ•ロードの頭上の空で飛行艇が爆発した。
その勢いのまますごい速度で飛行艇がこっちに向かって落ちて来る。
「ワァァッ!!!カンネ•ロード早く逃げッ!」
カンネ•ロードは微動だにせずフブを見る。
その表情から感じ取れるのは余裕。
——————バッシャッーーーンッ!!!
金属が砕け散る衝撃音と共に青白い光が落ちてくる飛行艇を粉砕した。
「ぼげぇ?!」
「あぁちょうどよかったァ、お前に紹介してやれる医者だ。」
——————ブウォーンッ、シューーッ。
青白い光がゆっくり空からカンネ•ロードの隣に降りて来た。
その青白い姿がはっきり見える高さまで降りて来た時に見た光景はまさにSF的だった。
浮遊する巨大なバックパックの様な機械は、幾つものナニカが回転しており常に青白い光を放っている。
蜂の尻やアリの尻を彷彿させる様な形状の大きな機械に何個か大きなボンベの様なものがささっており、その周辺から白い蒸気の様な煙の様な物が噴出されている。
それだけでも十分衝撃的であったが、何より驚いたのがその機械を付けている人間にケモ耳がついていた事だ。
何故ケモ耳のつけ物をしているのだろうか。
女に見えるがケモ耳ファッションが好きなのだろうか。
いや、そんな事よりこの大きな機械を付けている人が落ちて来た飛行艇を粉砕させたのだろうか。
そしてその大きな機械を付けたケモ耳の女はフブの顔を見て言う。
『え…ベリエッタ?』
「ねぇ゛ーーー!!!」
「カスミ、こいつァはベリエッタじゃない。他人の空似だ。」
『いや…似てると言うか…もうこれ本人でしょ。はぁ…わ、私はカスミだ。よろしく。』
「私はフブ…」
「んなァ事よりィ…ゴニョゴニョ。」
不満げな表情をするケモ耳女はカンネ•ロードに状況を耳打ちされる。
『医者が必要なのか。よかったな。私は医者だ。その知り合いとやらはどこを怪我しているんだ?』
自信に満ち溢れたケモ耳女の表情に少しの不安が走る。
こんなに都合よく医者がやってくる物だろうか。
しかも、このSF的な機械。
もしや、飛行艇を落としているロボット側の人間なのではなかろうか。
宇宙人の可能性だってある。
でも、まぁとりあえず質問に答えよう。
「左腕、肘から下が無くなった。」
『どういう無くなり方をした?潰れたか。切ったか。』
「はっきりわかんないけど、切り落とされた感じに近かったかも…」
『時間はどれぐらい経っている?』
「20分ぐらいだと思う。あ、止血…結構きつめにした。」
『そうか、止血は正解だ。まぁ実際見たほうが早い。とにかく急ごう。案内しろ。』
「…ついて来て!」
怪しむ時間なんて今の私にない。
いざとなったらこの拾った拳銃達で対抗しよう。
落ちてくる飛行艇を粉砕する様な人達に敵う様な気がしないけど…。
フブが兎達の場所に向かって走り出した。
——————ダッダッダッダッ!!!
後ろからカンネ•ロードとカスミがついて来ている。
カンネ•ロードは走りながら、カスミは謎の機械腰につけて飛びながら…どう言う原理かわからないが飛行している。
後ろをチラチラ確認して走っているフブ。
カンネ•ロードに合わせて速度を出す、が違和感がある。
(ん?私結構速度出してると思うんだけど、あんまり速くないのかな…今の速度?)
いつもなら一緒に走っている周りの人達と距離が空く速度なはずだが、カンネ•ロードとは一向に距離が空かない。
——————ダッダッダッダッ!!!
速度を少し上げてもカンネ•ロードとの距離は離れない。
カスミに関しては飛行しているから、まぁ別として…。
——————ダッダッダッダッ!!!
更に速度を上げるが、カンネ•ロードと距離が空かない。
しかも、カンネ•ロードの呼吸は普通に立っている時ぐらい落ち着いている様子だ。
一方、私は普通に走っている呼吸になっている。
少し悔しくなって全力の速度で走ってみる。
——————シュダダダッダッダッ!!!
コンクリートと靴底がぶつかる音が周りに甲高く響く。
(んぎぃ!!!)
「お前、なかなか動けるなァ。」
カンネ•ロードはフブの後ろ付きながら普段と同じ様に喋る。
「んなぁんでぇ普通に話せるのぉぉ!!」
「お前も話せてるじゃねぇか?」
「全然違ぁうッ!」
上には上が居る事を身に沁みて感じる。
あっという間に兎達が居る路地裏のビルまで辿り着いた。
しかし、兎達が居るビルの入り口に1人のゾンビが立っていた。
——————『ブルゥルルルウワァァアッ!!!』
3メートル程の背丈にムキムキな筋肉。
美少年がホテルで言っていたムキムキゾンビとはコイツの事か?
なんで、今こんな所に!!!
でも、今私の隣には身体能力お化けのカンネ•ロードとSFお医者さんが居るから負ける気がしない!
鋼鉄の飛行艇も粉砕するそのチカラでやっちゃってくださいSFお医者さん!
「P個体の幼体…か?アタシがァ行こォ。」
カスミがSF機械を使って戦ってくれると思ったのだが、どうやら今回はカンネ•ロードが戦ってくれるらしい。
『気をつけろカンネ。アイツがP個体だった場合、ましてやP個体の進化形だった場合は…』
「んなァこッたァ、わァーてる。」
ん?P個体とは何だろう。
有識者だけが知るゾンビの種類とかかな…?
『ブルゥルルルウッ!!!』
カンネ•ロードは静かに服の上着を脱いでフブに投げる。
その後、ゆっくりムキムキゾンビの方に歩いて距離を詰める。
「相手しィてやんよォ、ゴミィクズがよォ。」
やっとフブとカンネ•ロードが合流しましたね。




