〔第19話〕やりたい事、全部やるの!そんで「明日は何しよう」って考えてワクワクしながら寝るの、これが私の人生。ねぇ兎、今日は何して遊ぶ?…え、デスチワワ…?
ツグネの話入れようと思ったけど…また、入れれませんでした…。
ねぇ゛ーーー!!!
カメラに映った世紀末ランニングマンは、車のいない車道を走っていた。
——————『ヴァァァァア!!』
「なんか…あれだね…キモいけど応援したくなる走り方してるよね…」
「そそそそうだね…でも、私は応援したくない…」
——————『ヴァァァァアッ!!!』
画面外に何か見つけたのか、世紀末ランニングマンはそっちの方向かって走り出す。
兎はドローンを動かし視点を動かす。
そして、ドローンが女の叫び声を拾う。
——————『きゃー!!!』
——————『ヴァァァァアッ!!!』
視点が追いつき状況がわかる。
世紀末ランニングマンは今見つけたであろう女を襲っていた。
女は世紀末ランニングマンから逃げるも追い付かれ、その体に覆い被さられる。
——————『ヴァァァァアッ!!!』
——————『きゃぁぁぁぁぁあっ!!!!』
「兎!!やばいよ!!この人、襲われてるよ!!」
「ややややややばいっ!」
「う、兎!このドローンにミサイルとかついてないの?!」
「そそそそんなの、つつついてない…」
「どーしよー!どーしよぉー!!!」
「どどどどどどうしよ…」
「ド、ドローンぶつけてみよう!!!」
「だだだた、ダメ…このドローン大きい…から、ぶつけたら女の人怪我するかも…」
「えぇ?!このドローンそんなでっかかったの!?」
焦る2人に現実は無情だ。
——————『痛いッ!や、やめてぇ!!!!』
——————『ヴァァァァアッ!ブチブチッ、クッチャクッチャ…』
「ねぇ゛ーーー!!!女の人食べられてるよぉ!!!コイツ多分ゾンビぢゃん!!!」
「ゾ、ゾゾゾゾンビだ…だったら…ぶぶぶぶつける…何もしないよりかは…まし…」
「そ、そうだね!や、やろう!」
兎はドローンを動かし、ゾンビの頭目掛けて突進する。
「やっ…やぁぁぁあ!」
「いったれぇぇぇえいっ!」
——————バシャッ。
——————『ヴァッ……。』
ドローンの羽でゾンビの頭が切れる。
そこから大量の血が吹き出し、襲われていた女の人に降りかかる。
——————『きゃぁぁぁぁぁああああっ!!!」
ドローンのカメラに血が付き画面が見えなくなるが、それと同時にゾンビの声は聞こえなくなった。
「女の人、アイツにかじられてたけど…大丈夫かな…あっ、それより、ごめん…ドローン壊れちゃった…」
「だだだ大丈夫…どどどドローンはまだまだ在庫ある…」
すると、壊れたと思っていたドローンの画面から声が聞こえた。
——————『イッ、タイ…けど…助けてくれたの…?ドローン…さん…?』
血で染まったドローンのカメラが拭かれる。
「あっ、画面見える。」
「ほほほ本当だ、こここの女の人がカメラ拭いてくれた。」
——————『ハァハァハァ…私…噛まれちゃった…』
「やっぱり、噛まれたらゾンビになるのかな…」
「わわわ私達…外の世界について…あんまり知らないから、そうなのかも…」
ドローンが持ち上げられて、女の人のお腹の部分が映し出される。
特徴的なネズミのイラストが描かれた服だ。
何というかパンチの効いた絵柄だ。
——————『ありがとう…ドローンさん。もう、私の顔…映せないぐらい酷くなってるから映せないけど、外に出たら……だめよ。』
「…。」
「ななな何で…そ、外出てたんだろう…この女の人…」
——————『もう私は大丈夫…飛べるんだったらもう…行って……私は、良いから…』
「兎、もしかして、ドローンって壊れてなかったりする?」
「え?ややややってみる…」
ドローンの羽が回転する。
——————『ウィーーーンッ。』
「壊れてない!」
「じょじょじょ丈夫だ…」
——————『壊れてなかったのね。じゃあ、ありがとう…行って…』
ドローンが持ち上げられ視界が少し上になる。
——————『ウィーーンッ。』
しかし、ドローンは動かない。
いや、羽は回転しているものの、高度が一向に上がらない。
「兎もっと高く飛ばせないの?」
「こここ高度が上がらない…」
——————『待って…やっぱり行かないで…』
ドローンが飛ばない理由。
すぐに分かった。
女の人がドローンを下から掴んでいるからだ。
——————『やっぱり…1人で死にたくない…私が死ぬまでここにいて…』
「ねぇ、兎…いてあげよう…」
フブが悲しい顔で兎の方を見る。
フブが見た兎。
顔は悲しさとは別のものだった。
兎は口を半開きにして、目を見開いて考える。
女の人が外出していた理由は…なんだ。
外が危険ってことぐらい分かっていたはずだ。
何故だ。
命を危険に晒してまでも、欲しいものがあったのか?
水、食料か?
それとも、何かの薬か?
いや、でも女の人の服装を見る限り“ラフ”な格好だ。
バックも持っていない事から調達の目的では…無さそうだ…。
口ぶりからして外の世界を私達より知っている。
となると…
「じじじ、自殺志願者…」
兎の出した呟きにフブが驚愕した目を向ける。
——————『最後はゾンビになって死ぬ…か…はぁ…やっぱりこんな事しなきゃよかった…』
ドローンに映る画面。
顔は映されず車の無い道路だけがそこにある。
そして画角が下がり、ドローンが地面に置かれた。
「…。」
フブは兎の呟きの理由を察した。
——————『あっ!ねぇ、ドローンさん。最後にお願い事していいかな?』
——————ピカッピカッ。
兎はドローンに付いているカメラのライトをピカピカ光らせて返事した。
——————『それで返事してくれてるの?フフフッハッハッハッハッー!!何それ可愛い。』
「可愛いだって兎、褒められてるぞぉ〜ほれほれ〜。」
「ややややめてぇ〜…」
——————『で、お願いなんだけど…。このドローンに私のサイン書いていい?別に私、有名人とかじゃないけど一回やってみたかったんだ…』
——————ピカッ。
そして女はポケットから取り出したポーチから、メイクで使うアイライナーを取り出して、ドローンにサインしだす。
「なんかこの女の人…行動パターンが私に似てるな…」
「けけけ警備ロボに落書きしてた、フブみたい…」
——————『よしっ、描けた…。ダメだ…。もう…意識が落ちそう…私…は、そろそろ寝るね……』
——————バタッ。
女の人が倒れた様な音が聞こえた。
静かになる女の人。
「…兎。もう別の所に行こう。この人が…ゾンビになる前に…」
「…うん。」
そしてドローンを飛び立たせる。
兎はドローンを飛ばしながらフブに話しかける。
「そそそ外の世界は…おおお思ったより…終わり近づいているのかも…外に、人いないし車も通ってなかった…」
「思ったより外は世紀末だねぇ…」
兎が少し寂しそうな顔でしゅんとする。
私は友達が出来たらしたい事、沢山あった。
“私には友達が出来ない”と諦めていたけど、今になってフブという大切な友達ができた。
まだ、世界が終わったわけではないけれど…
(ななな夏祭りや…こここ、高校の体育祭…文化祭…フブとなら行きたかったのに…も、もももう開かれる事はないかも知れないって考えたら…)
「ねぇ、兎。ドローン近くに着陸して〜。」
「え…?」
「早く〜!」
「え、あ、うん…」
兎は近くの民家の屋根にドローンを着陸させた。
次の瞬間、フブは兎の腕と腰に手を回し半ば、無理やり立ち上がらせる。
困惑の声を漏らす兎。
「なななななななっ?!」
そして、手を掴み兎を回転させ、近づけたり、離したりする。
フブは兎をくるくる回した後、もう一度、腰に手を回し兎の体を反らさせる。
それはまるで…
「社交ダンス!私、子供の頃に少しやってたんだ!」
「わわわわわわッ」
——————回る。
———回る。
——————止まって。
———回る。
——————回る。
兎はぐるぐる回され目が回る。
そして、体を回されながらも必死にフブの顔を見る。
次、フブが兎と対面する様に立つ。
フブは兎をリードして、踊り出す。
——————ステップを踏む。
———前に進んで。
——————止まって。
———回る。
——————もう一度、ステップを踏む。
———“ふたり”で回る。
「誰でもない、“あなた”と“いま”ここで踊ってるの!」
「ききき急にどうしたの…」
兎はフブの行動と言葉に困惑する。
が、フブから発せられたいまと言う言葉にフブと過ごす、これからを想像する。
「ほら、私世界がこんな状況じゃなかったら、最初ニュースで不吉な速報が流れてなかったら…兎の家で社交ダンス踊ってなかったよ!まぁ本当にゾンビ出るなんて思わなかったけど…さ。」
「う、うん…」
「世界が終わろうとしてなかったら、来年から受験勉強だよ。」
「…う、うん。」
「世界が終わろうとしてなかったら、庭に畑作らなかったよ。」
「…うん。」
「世界が終わろうとしてなかったら、一緒に保存食買いに業務用スーパーに行ってなかったよ?」
「うん。」
さっきまでの、うかない顔していた兎の気持ちを見透かした様に優しく話し出すフブ。
「やりたい事、全部やるの。そんで“明日は何しよう”って考えてワクワクしながら寝るの!これが私の人生!ねぇ兎、今日は何して遊ぶ?
——————『メインサーバーから報告します。マンションの入り口にて大量のデスチワワが目撃されました。警備ロボットNo8を派遣させます。』
…え、デスチワワ…?」
フブの眩しい言葉に瞳孔が揺らぐ兎。
大きい窓と、揺れるカーテン。
柔い光が兎の顔を照らし、瞼の筋肉を収縮させる。
「そそそうだね、フブ。わわわ私達、こここれから…もっと楽しい事が待ってる気がする!」
「うん!今までより、もっと楽しい事!好き放題しようぜ!!」
でぇすぅちわぁわぁ〜




