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周回移動都市ヴェルサイユ《原案》  作者: 犬のようなもの
《セカンドオーダー編》             ようこそ新世界へ〈前日譚〉
22/78

〔第20話〕馬鹿につける薬はねぇんだよ。

ツグネさんの過去話は2話分あります。

少し長いです。

 

 ———

 ——————

 —————————

 ————————————

 ———————————————


 俺は“逃げていた”ゾンビから…

 この街を支配する“異能”の奴らから…


 《そして、“自分自身”から…》



 ——————ダンッダンッダンッダンッ!



 ——————『待てやぁごぉるぅぅうらぁぁぁあ!!!』



 大きな巨大。

 熊の様な体で追いかけてくる男。

 大きさは3メートル程だろうか?


「おい、タフナァ!!!“霧”使ぇええ!!」


「今日で、もう3回目ですよぉ!!!ほんっと、人使い荒いですねぇ!!!」



 ——————ブシューーンッ!!!



 瞬間的(しゅんかんてき)に当たりは白い霧に包まれ視界が悪くなる。


「タフナァ!こっちだ!」


 そう言ってタフナの腕を強く引っぱり、近くに乗り捨てられていた車へ乗り込む。


「キーはあるんですか?!」


「んなもんねぇーよ!刺さってる事を祈るだけだ!!」


「ひぇーーーっ!!」






「キーが刺さって…ないっ…!」


「どーすんですかぁぁぁぁあ!!」


「大丈夫だ、霧であいつの視界遮ってるし、足元も悪かったからまだ時間があるはずだ、キーを探せ!!座席のポケットとかには無いか?!」


「ここもっ、ここもっ、ここもっ、無いですよぉ!!!」


「どこだ、どこだ!どこだぁー!!」



 ——————『待てやぁごるぅらぁぁぁぁぁあ!!!』



「ひぃぃぃぃっき、きましたよツグネさん!!!」


「くっそ…降り…」


 ツグネは車を動かす事を諦め様と視線を落とした時、目に映った車の小物ケースを開ける。

 運良く、車のキーを見つけた。

 “いや、ゲームかよ。”

 と内心笑ったツグネ、しかし、今はそんな事で喜んでいる時間はない。


「あったぞ!」


 見つけたキーを使い急いでエンジンをかける。



 ——————ブルウウウウウウンッ。



「シートベルト閉めろ!いくぞォォォォォォォオオオオ!!!」


「うわぁぁぁぁぁぁあああああ!!!」


 車が急発進する。



 ——————『待てやぁぁぁぁぁぁあああああ!!!』



 後ろから迫り来る大男の姿が遠くなっていく。

 ツグネは霧で視界が悪くなっているにも関わらず、アクセルを限界まで踏み抜き道路を走る。



 ——————ブルウウウウウウンッ!!!



「あああああ危ないですよぉぉぉぉおおお!!!」


「どの道今、追いつかれたら死んじまうだろ!!!」


「この速度じゃ、なんかにぶつかったらぐちゃぐちゃですよォォォォォォォオオオオ!!」



 ——————ブゥンッ!!!!



「よし、霧を抜けた!!あっ…」


「えっ、ちょっとツグネさぁぁぁぁぁあ!!!!」



 ——————高い崖の上。


 ——————下は海。


 ——————行き先は“死”。


 直感で、まずいと分かった。



 ——————ガッシャァァァンッ…。




 車と共に崖から落ちた2人の意識は遠のく…。









 ———————————————#####



「……ん゛ん゛…イッタ……こ、ここどこだ…?」


 頭が痛い…俺は…ていうか、あの崖から落ちたのか…?

 ツグネの頭には“()()()()”出来たか、どうかが浮かぶ。


「やっと起きましたか。ツグネさん。」



 ——————パチパチパチッ。



 焚き火の横でタフナが魚を焼いている。


「お、俺どれぐらい寝てた…?」


「僕が()めてから半日ぐらいでしょうか?」


 ツグネは自分の体を見る。

 どこかが欠損している…とかは、ないようだ。

 にしても、ここは洞窟(どうくつ)か?

 俺は落ちた後、ここに流れ着いたのか…?


「なぁ、ここ…どこだ?」


「さぁ?僕も落ちて気付いたらここに流れ着いてましたからね。」


「お前…思ったより元気そうだな…」


 ツグネのその言葉にタフナは少しキレ気味で言う。


「ぜんッぜん元気じゃありませんよぉ!あの大ジャンプで体中(からだじゅう)痛いんですからね!?」


「…わり。」


「絶対思ってないやつですよぉねぇ?!怒りますヨォ!!」


 ツグネは怒るタフナを軽くあしらい、さっき見た巨大(きょたい)の男を思い出す。

 熊の様な見た目だった。

 3メートルもある体で、車や瓦礫を力ずくで押し倒し追いかけてきた。


「タフナ…俺らはどこまで遠くに流されたんだろうな。」


「知りません。でも…遠くだといいですね。」


 タフナの曇る顔を見て、ツグネは大声を出す。


「そもそも!!!食糧と薬を独占してるアイツが悪いのに!何で俺らがこそこそ逃げなきゃ何ねぇんだよ!!!」


「ですね…。この世は弱肉強食って奴ですか…同じ文明人とは思えないですね。」


「あの、“異能”さえ無ければ…」


「そうですね…」


 この街の薬を独占している“草薙(くさなぎ)グループ”。

 近くの薬局や施設から薬を集めて、本当にそれが必要な人に対し物々交換を申し出る。

 そして一粒の薬を法外な量の食料と交換させ、ここら一帯の生存者を苦しめさせている。

 “悪”でしかない。

 しかし、この世界ではそれが許される。

 もう法律なんて無いのだから。

 そして、奴にはそれが出来る“異能(チカラ)”がある。


 “チカラ”が法律だ。

 “チカラ”で奪い。

 “チカラ”で得る。


 この腐った世界でのルール(法律)だ。


「なぁ、タフナ。何で、俺らが逃げてんだ?」


「それは…僕達が草薙から薬を無許可で奪ったからです。」


 ツグネは濡れた靴を脱ぎタフナに投げつける。



 ——————ベシッ!!!



「ッ?!何するんですか?!」


「違う!何で、正しい事をした俺らが逃げてんだ!俺らはただ今、本当に薬が必要なガキに分け与えようとしただけじゃねぇか!!!」


「確かに、そうですが…あの男に“異能”がある限り僕達は何も出来ませんよ…。すみません、僕の異能がしょぼいばかりに…」


 そうだ。

 タフナにも異能がある。

 瞬間的に霧を出現させる異能だ。

 使える様になったのは最近らしいが、それだけだ。


「そうだな…熊みたいな男に(かな)う能力ではないな…霧は…」


 タフナがしょんぼりした。

 そして、しょんぼりした顔のままツグネに問う。


「ツグネさんは何か能力は無いんですか?」


「……ない。」


「そうですよね…そんな簡単に異能がいてたまるかって話ですよねぇ…」


 タフナは焼けた魚をツグネに渡す。

 ツグネはそれをゆっくりかじり海の方を見る。

 波の音が現状の悲惨さを知らしめる。

 そしてみるみる内に太陽が落ち始め、世界の明るさが失われていく。



「なぁ、タフナ。草薙(くそなぎ)ムカつかねぇか?」


「えぇ、その頬ぶん殴ってやりたいです。」


「…。」


「…。」



「…やるか?」


「…死にたくはないですが、ここで引いたら男が(すた)れます。」


「お前って意外と男気あるよな…」


「意外ですか?僕、元ボクサーですから。」


「マジ…?見えねぇ〜…」







 ———————————————#####



 退廃した世界にあるひとつの大きなショッピングモール。

 看板には(こけ)や草木が()(しげ)り、駐車場にはボロボロの車がポツポツ乗り捨てられている。

 草薙(くさなぎ)グループはそこを拠点にし活動している。

 ショッピングモールの入り口は2箇所。

 北口と、南口。

 それ以外の入り口は溶接して閉じてある。

 このパワープレイにはどんな凄腕の泥棒でも、簡単には侵入出来ないだろう。

 そして、草薙は朝の光でショッピングモールの入り口を開け、“客”が来るのを待つ。

 顔にタトゥーを入れた、“いかにも”な男達が鉄パイプや金属バットを構えて接客の準備をする。


「草薙さぁん、今日は缶詰ぇ何個ゲットできますかねぇ?」


『アホか。ゲットすんじゃねぇ。俺達ぁ“公平”に買って頂くんだよぉ。』


「そそそそうでしたねぇ、今日の缶詰の相場はどうしやすか?」


『今日は機嫌が良い。一粒“10”缶ぐらいにするかぁ!』


「さ、流石ですぜ…兄貴…」



 ——————「あっ…あの〜…」



『早速、客が来やがったな。いらぁしゃっせぇ…って…』


 草薙(くさなぎ)グループ今日最初の客は泥棒“タフナ”だった。


『お前ぇどのツラさげて戻って来てんだぁてめぇ?』


 草薙がみるみる内に姿を変え、熊の様な姿になる。



 ——————『グルゥゥゥゥゥゥウッ!てめぇ殺す。』



「ちょっとタンマです!!!タンマ!!!僕はアナタとタイマンをはりにきましたぁー!!!」



 ——————『あぁ?お前、逃げてた癖に何言って…』



「えぇ!!その節はごめんなさぁぁい!!!なので!!!正々堂々やり合いましょう…」



 ——————『…何考えてんのか知らねぇがなぁ。まぁ受けてやんよ。この異能は使わないでやるよ。その代わりこの勝負…お前が死ぬまで終わらねぇからな?』



 草薙が人間の姿に戻る。


「えぇ、大丈夫ですよ…では、さっそく正々堂々殴り合いましょう…」


『待て。おい!お前らァァァァア!!!デテコォォォォォオオオイヤァァア!!!』


 草薙が大声を出すとショッピングモールの中からゾロゾロ草薙の仲間が出て来た。


(…多い、30人はいるか?)


 そして、タフナと草薙をぐるっと丸く囲い大声を出す。


「草薙さんやったれぇぇえ!!」

「殺せぇぇぇえ!!!」

「やれぇぇぇえ!!!」

「しねぇやぁぁぁあ!!!」

「草薙さんいけぇぇぇぇえ!!」


『おい、泥棒。お前ら近所のガキの為に命張ってたんだってな?!本当笑えるナァァァ!!』



 ——————ブンッ!!!



「ッ!!」


 タフナは草薙からのフックをぎりぎりで()わす。


『お前ぇ…なんかやってたなぁ?』


 タフナは草薙を挑発する様な口調で言う。


「薬独占してるような…せこいやり口。正直めっちゃダサいですよ。」



 ——————ブンッ!ブンッブンッ!



 草薙のジャブをタフナは左右にステップを踏み()わす。


『…逃げるばっかで、よぉ。お前のがクソだせぇじゃねぇかぁ。』


「でも、当たらなかったら意味ないですよ…?」


 若干の息切れで言うタフナ。

 草薙はそれを見逃さず、すかさず次の攻撃に入る。



 ——————ブンッ!!!



『おっるぅらぁぁああ。逃げてばっかでおもんねぇなぁ!」



 ——————ブンッ!!!



『『『草薙ぃ!!!草薙ぃ!!!草薙ぃ!!!』』』


 タフナと草薙を囲うギャラリーはヒートアップする。

 2人を囲う熱気に汗が滲む。


「ハァハァハァ…」



『『『草薙ぃ!!!草薙ぃ!!!草薙ぃ!!!』』』




 ——————ドスッ!!!



「グハァッ…」


 タフナの横腹に草薙のフックが直撃する。


『結局ぅお前は逃げてばっか…でぇっ!攻撃する勇気もないしぃ、反撃する余裕もない!本当ぉ…お前何しに来たんだぁ?おっるぅらぁぁぁっ!!』



 ——————ドッッス!!!



「ガアァッ!!」


 (うずくま)るタフナを蹴り上げる草薙。

 周りのギャラリーが倒れようとするタフナを起き上がらせ無理矢理戦わせようとする。


『お前ぇもうよろよろじゃねぇか…ちょっとは攻撃してこいヨォ…?』


『『『草薙ぃ!!!草薙ぃ!!!草薙ぃ!!!』』』


『お前ぇのしょっぼい“異能”霧使えやァァア!まぁこの距離じゃ意味ねぇけどなぁァァア!!!』



 ——————ドスッ!!!



「グハァッ…」



『『『草薙ぃ!!!草薙ぃ!!!草薙ぃ!!!』』』



 ——————フシュー…。



 タフナは周囲に若干の霧を出す。


「じゃ…じゃあ…だっ、出させて頂きます…雰囲気作りです…」


 周りをギャラリーで囲われている為、霧自体に意味はない。

 しかし、若干の霧がタフナの意識を覚醒させる。


「な、懐かしいですね…この雰囲気…」


『ぁぁあ?』


 タフナは思い出す。

 リングに入った時の熱狂、汗や熱気で会場が沸くあの感じ。



 ——————ブンッ!!!



『交わしてぇばっかりでよぉぉお!!』


 タフナはフックを交わした後、草薙の横腹に強烈なカウンターを食らわせた。



 ——————ドスッ!!!



『グハァッ…!』


『『『うぉぉぉぉぉぁぁおお!!!』』』


 ギャラリーはタフナの1発に沸く。

 草薙がそれにイラだちタフナに猛攻(もうこう)を仕掛ける。


『おるぅぅぅあらぁぁぁぁぁあ!!!』



 ——————ブンッ!ブンッ!ブンッ!ブンッ!!



 タフナは草薙の猛攻を全て見切り、その分カウンターを放つ。



 ——————ドスッ!ドスッ!ドスッ!ドスッ!



 顔面にカウンターのジャブをモロに食らった草薙は、体をのけ反らせた。


『『『うぉぉぉぉぉおお!!!』』』


 ギャラリーは沸きに沸き、朝のショッピングモールが大きな会場さながらになる。



『お前ぇ、ぇ…グッハァッ……やるじゃねぇか…』


「アナタも…」



 ——————ピピピピッ。ピピピピッ。ピピピピッ。



『『『草薙ぃ!!!草薙ぃ!!!草薙ぃ!!!』』』



 タフナの腕時計からタイマーの様な電子音が鳴る。



『『『草薙ぃ!!!草薙ぃ!!!草薙ぃ!!!』』』



 ——————ピピピピッ。ピピピピッ。ピピピピッ。



『なんだぁ…?』



『『『草薙ぃ!!!草薙ぃ!!!草薙ぃ!!!』』』



 ——————ピピピピッ。ピピピピッ。ピピピピッ。



「ハァハァ…盛り上がってる所…申し訳ないですが、では…また来世で。」



「「「草薙ぃ!!!草薙ぃ!!!草薙ぃ!!!」」」



 ——————ピピピピッ。ピピピピッ。ピピピピッ。



『はぁ?お前何言って…』



 ——————バタッ。



 タフナはその場に倒れ込みうつ伏せになった。


『『『うぉぉぉぉおおお草薙ぃさぁんの勝ちだぁぁぁぁぁぁああああああ!!!』』』


 その瞬間、轟音と共に霧が“裂ける”。



 ——————ドドドドドドドドドドドドッ!!!!


 ——— ドドドドドドドドドドドドッ!!!!


 —————— ドドドドドドドドドドドドッ!!!!


 ———ドドドドドドドドドドドドッ!!!!


 —————— ドドドドドドドドドドドドッ!!!!


 ———ドドドドドドドドドドドドッ!!!!


 —————— ドドドドドドドドドドドドッ!!!!


 ———ドドドドドドドドドドドドッ!!!!


 —————— ドドドドドドドドドドドドッ!!!!


 ———ドドドドドドドドドドドドッ!!!!


 —————— ドドドドドドドドドドドドッ!!!!


 ———ドドドドドドドドドドドドッ!!!!


 ——————ドドドドドドドドドドドドッ!!!!


 ———ドドドドドドドドドドドドッ!!!!


 —————— ドドドドドドドドドドドドッ!!!!


 ———ドドドドドドドドドドドドッ!!!!


 ——————ドドドドドドドドドドドドッ!!!!


 ———ドドドドドドドドドドドドッ!!!!


 —————— ドドドドドドドドドドドドッ!!!!


 ———ドドドドドドドドドドドドッ!!!!




 ———シュー…。



 砂埃が舞い、辺り一面が静まり返る。



 ———「おーーい!タフナァーー!!大丈夫かぁー?!」



 ツグネは伏せた体を起こし周りを見る。


「ひぇッ…」


 ツグネと草薙を囲んでいたギャラリーは全員上半身が無くなった状態で地面に横たわっている。

 当の草薙本人も上半身が無い状態で倒れていた。



 ———「おーーい!タフナァーー!!大丈夫かぁー?!」



 ツグネが機銃(きじゅう)の付いた車の上でタフナに呼びかける。

 タフナはそれに返事せずゆっくり立ち上がり、ツグネの方向かって大きく手を振る。



 ———「大丈夫そぉーーだなぁーーー!!!」



 その言葉にタフナは心の中で、ひとりグチをこぼす。


(ほんっと…人遣(ひとづか)い荒いにも程がありますよ…)


 ツグネは機銃の付いた車を降りてタフナの近くに寄る。


「なぁ、タフナ。お前なんか傷だらけだな…」


「誰のせいだと…」


「流石に…草薙の仲間全員外に出す為とはいえ、お前…熱狂させ過ぎだろ…。俺が車で近づいても誰も気づいてなかったぞ…」


「ちょっと、お互いムキになってしまいましてね…」


「あー、俺もそれ見たかったなぁー。」


「もう、機銃掃射(きじゅうそうしゃ)のオトリになんか、なりませんからね?!でも…なんか、卑怯(ひきょう)な手使ってしまいましたね…僕達。」


 タフナのその言葉にツグネは笑って返す。


「馬鹿につける薬はねぇんだよ。」


「ハハッ、何ですかそれ。そんな事より、薬必要な人に届くと良いですね。」


「あぁ、必要な奴は取りにくんだろ。」


「ですね。」



 ——————『おい…待てやぁ…』



 後ろから聞こえてきた声に2人は驚き振り返る。


「うぉっ?!」

「わぁっ?!」


 振り返ると上半身がキッチリ付いた草薙が立っていた。



 ——————『ハァハァハァ…よくもやってくれぇたなぁ…』



「アナタ…上半身飛ばされてたのに、何で元に戻ってんですか。」


 至極真っ当なタフナの反応とは違いツグネは自分の思った事だけをズカズカ言う。


「お前…近くで見たらキモいな。熊みたいな見た目してる癖に毛ぇ生えてねぇし、耳もない。それに熊というより毛ぇむしり取ったゴリラみてぇじゃねぇか。草薙(くさなぎ)って名前の癖にぜんっぜん、草食獣っぽくねぇーんだな!!」


「めっ、めっちゃディスるじゃないですか…」



 ——————『お前…言って…ハァハァ…言ってくれるじゃねぇか…コロス!!!!』



 熊の様な草薙の腕がタフナを襲う。


「危ない!」


「ツグネさん?!」


 ツグネはタフナの前に出てそれを庇おうとする。


(チッ、次は再生できねぇ様、機銃で撃った後しっかり焼くか…)


 ツグネは“()()()()”の為、()()()()()()


 この時、まだタフナはまだツグネの“やり直し”の能力を知らない。



 ——————ドチャッ…!



(あれ、俺…痛くねぇ…)


 目を開けるツグネ。


「ちょっ…はぁぁぁあ?!」


 ツグネの目の前に広がっている光景。

 草薙が地面で“潰れている”。

 更に詳しく言うと、何かに叩きつけられた様な潰れ方をしている。


「ちょ、ツグネさんッ?!何したんですか?!」


「お、俺もわかんねぇよぉ!」



 状況に混乱してオドオドしていると、ショッピングモールの入り口から1人の男が出て来た。



 ——————『ワシの目の前で暴れるとはいい度胸じゃのぉ。』



 黒いローブを顔まで深く被った、お爺さんの様な喋り方をした男が現れた。

 しかし、喋り方とは相反(あいはん)し、声自体は若々しく聞こえる。

 お爺さん…

 お兄さん…

 いや、子供っぽい声だ。

 しかし、その威圧感だけで胃がキリキリする。

 ドスの効いたザラザラ声のせいだろうか?


「お前は、誰だ。草薙の…仲間か?」


 ツグネが先陣を切って喋りかける。



 ——————『貴様(きさま)みたいな下郎(げろう)が…ワシに…』



「は?何言って…」



 ——————ドチュンッ!



 ツグネが草薙と同じ様に潰れる。



 ——————『話しかけるな。』



「アッ、アッ、ア゛ア゛ア゛!!!ツグネさぁぁあん!!!!」



 タフナが潰れたツグネの方に寄り追い縋る。

 見間違いでは無く今この場でツグネがぐちゃぐちゃに潰れて死んだ事を確認した(のち)膝をつき絶望する。

 そしてタフナは黒いローブの男を親の(かたき)のごとく(にら)みつける。

 黒いローブの男はそれを睨み返し、不機嫌な態度で言った。



 ——————『何じゃ、貴様。反抗的な目をしておるな。』



 その声と言葉にタフナの中の本能が叫ぶ。



 逃げなくては


 死ぬ死ぬ死ぬっ!!!


 勝てない。


 生きたい。


 死にたくない!


 …ダメだ。


 …コイツからは逃げられない。


 タフナは本能で(さと)った、コイツは格が違うと。


 …逃げきれない。


 タフナは死んだツグネの血肉を指で拭い地面に擦り付ける。



 [逃げろ]




 書き終えた瞬間、タフナの意識は消えた。


本能で悟った。死は避けられないと…。

なら、なぜ地面に逃げろと書いたのか。

その理由は単純です。

次この場所に来た人が自分と同じ様な状況に陥らない様…この文字を見たらすぐ逃げられる様、[逃げろ]と書きました。

これは生物が次の犠牲者を出さない様にする為のバトンみたいなものです。

タフナ自体本能だけでコレを書いたので、その意味は自覚していません。


詳しい説明、描写は後々出て来ます。


ツグネの元いた世界はゾンビまみれになっています。

ツグネの元いた世界と兎とフブの世界は違います。

ショッピングモールの駐車場で騒いでも、ゾンビ達が近寄ってこなかった理由は、ショッピングモール自体が大きな柵で囲われていたからです。草薙達は安全な場所を独占していました。

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