〔第11話〕警備ロボvsフブ
ねぇ゛ーーー!!!!
その時は突然来た。
「ねぇ゛ーー兎!コイツ動かなくなった!」
「ほ、ほほ本当だ…」
「じゃあ、弱点は……脳みそ…?」
「せ、せ正解だけど…ち、ちちち違う…」
「ん?どう言う事?」
「の、ののの脳みその海馬…」
「あー記憶を司る所ね〜。」
「そ、そそそう。」
「てことは、ゾンビ映画みたいに、ただ脳みそ潰せば死ぬ、とかでは、ないんだね。」
「そそそそう…海馬…」
「ほげぇー…………怖いね。」
「こ、ここ怖い…」
そう言って丁寧に解体されたゾンビを2人は小分けにして生ゴミ捨てから捨てる。
兎の家は生ゴミをキッチンから捨てれる、その生ゴミは即時に天然ガスに加工されマンションのエネルギーに変わる。
その時、消毒と燃焼であらゆる細菌やウイルスも死ぬ。
だから安全だ。
「う、兎のマンションってほんとにすごいね…これがタワマンか…」
「わわわ私も最近、生ゴミの機能使ってなかった…料理しないから…」
「あっ、ねぇー!生ゴミわざわざ下のロビーまで捨てに行ってたんだけどぉ!そう言う事ぉ先に言っといてよねー!!」
「ごごごごめん…わ、忘れてた…」
2人はゾンビを捨てて部屋を掃除した後、風呂に入る。
万が一にでも感染しない為、体を念入りに洗った。
先に兎が風呂に入り、その後フブが入った。
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「ふぃ〜〜〜ッ兎の家の風呂ってめっちゃでかいよねぇ〜気持ち良いねぇ〜!兎〜今日何食べ……ん?」
バスタオルを体に巻いてリビングを見渡すフブ、リビングに兎の姿は無かった。
「うーーーさーーーーぎぃーーーー!!!ねぇーーーーーーー!!!」
叫びながら着替える。
返事はない。
どこへ行ったのだろうか、いくら兎の家が大きいとはいえ、こんな大声出したら気付くものだけど…。
もしかしたら、寝室で寝ているのかも知れない。
「ねぇ゛ーーーー!!どこーーーー!!」
家の全部屋を探したが居ない。
しばらく考えるフブ、買い物…な訳ないか…。
ならば、居なくなる前の兎に不審な点は無かったか…。
………。
あっ、ゾンビが窓の外を見ていた。
窓が開いている。
「もしかして、窓の下を見た時に…っ!!おちっ?!」
フブは走って窓の下を見る。
「ふぅ……下に落ちた痕跡はない…にしても25階って結構高いな…私の視力を持ってもギリギリ下が見えるぐらいだな…」
ならばどこへ行ったのだろうか…。
私を驚かせる為に隠れているのか?
まぁいつもの兎ならそんなお茶目な事もしそうだけど、今はゾンビの解体で疲れているはずだから…。
………。
分からない。
………。
んー…。
………。
あっ、もしかして、兎もゾンビが見ていた“ナニカ”を見てしまって連れ去られたとか…。
「それだと、まずいっ…」
フブは勢いよく玄関を開けて廊下へ出た。
階段へ続く扉へ走る。
「私1人なら階段のほうが速いっ…」
——————ヒュッヒュッヒュッ。
今のフブは階段の“段”を降りない。
手すりを跳び箱の様に飛び越えて、道をショートカットする。
時々、落下しながら手すりを掴み落下速度の調整をする。
15秒もしない内に1階のロビーへ到着する。
「兎ー!!!!」
勢いよくロビーに飛び出すとそこに兎はいた。
「うわっ!びっくりした…ななななななに…」
「何って!!1人で外に出たら危ないでしょ!!!」
子供が母親に言うセリフを兎にいうフブ。
「だだだだだ大丈夫…わ、私はロビーの警備ロボットを動かしに来ただけ…」
「……ん?け、警備ろ、ろぼ?」
「う、ううううん…」
——————ガシッガシッガシッ。
ここで1つ。私、フブから説明しておこう…
兎のマンションのロビーにはアホほど彫刻がある。それはそれは高級マンションと一目見てわかるほどに。
その高そうな彫刻が警備ロボとして動いている、いや、動いた時点で彫刻では無いんだけど…。
それにしても…。
「兎!こらっっ!!!勝手に外に出たら危ないでしょ!!」
「ひ、ひぇ………まままマンションの酸素、抜いたから…ああ安全かと思って…。それにこのマンションのロビーに…」
兎が周りを見渡す。
「あっ…。もしかしてこの彫刻全部……」
「う、ううううん…」
——————ウィ〜ンッ。ジジジジジッ。ピッピッ。
「ねぇ…なんかさっき兎に対して怒ったからかも知れないけど…私ロボットに警戒されてない?」
「そそそそんな事で警戒はしないと思うけど……この警備ロボは私の命令で…」
———ビーッ!ビーッ!エネミーの咆哮を確認。エネミーの体温を計測中……正常。エネミーの戸籍番号、認証開始……
「え?!えぇ?!えー!?!ねぇーーー!なんか始まったんだけどぉ!!!」
———正常。エネミーの入室許可を確認……拒否。拒否。再度、エネミーの入室許可確認……確認されませんでした。対象エネミーを無力化します。
「えぇ?!なになになになになに?!?!」
——————ガシャッガシャッガシャッ。
「けけけけ警備ロボ…?あ、にに入室許可忘れてた…」
「ねぇーーー!!!絶対やばいやつじゃん!!」
彫刻のひとつのビィーナスの様な警備ロボ。
体が変形して、腕の有りとあらゆる場所から銃口が出てきた。
「ねぇ゛ーーーー!!!撃たれんの私ぃ!?!?」
「だだだ大丈夫…テーザー銃だからし、死なない…けど逃げぇてぇ!!!」
「ひぃぇえええっ!!」
——————シュンッ!シュッンッ!シュンッ!
「ねぇ゛ーーーーーーっ!!」
フブは大声を上げながらビィーナスロボとの距離を詰める。
(ビィーナスロボの背中に回り込めばテーザー銃の銃口は無いはずだ!!射角外へ!!)
——————シュンッ!シュンッ!シュンッ!
「あっぶね。いま、いま、いま顔っ掠った!!!」
そう言ってフブは3連発ずつ撃たれるテーザーを目視で交わしながら確実に距離を詰める。
(大丈夫、動きは単調だしテーザー銃の射角も読めるっ)
——————シュンッ!シュンッ!シュンッ!
(やっぱり単調だっ…このまま次いけばっ…後、1メートルっ!よしっ、触れっ…)
——————シュンッ!シュンッ!シュンッ!
———“シュンッ”!!
「なっ!!」
その時、ビィーナスロボの攻撃のテンポが変わった。
撃たれたのは3発と1発、合計で4発。
フブは胸にテーザー銃を喰らった。
「ぐっ最後にフェイントッ4発目があるなんてっ…」
「フフフフ、フブッ!!!!!警備No.05お前ぇ!!お前ぇ!!何をやってっ!!」
——————ガシャガシャガシャガシャ。
警備ロボが主人の意に背むいた事に気づき、腕のテーザー銃をしまう。
——————「貧乏症で助かったぁ」
兎の声に応える様に、フブは胸に刺さったテーザー銃を抜き警備ロボの首の隙間にぶち込む。
———ガギギギガギガガカギギガギッ…シュー…。
警備ロボはガタガタ体を揺らし自分のテーザー銃で感電している。
「撃破ぁぁぁぁあっ!!!」
ヴィーナスロボの体にコアラみたいな形でしがみついているフブに兎は問う。
「なっ、ななななんで…フブ…大丈夫…?」
「言ったでしょ!私、毎日、“防護服”着てるだから!!!」
「あっ…そそそそうだった。」
——————ガシャッガチャ、ガラガラガラ。
大量の警備ロボットがフブを囲む。
———ビィーナス警備No.05の停止を確認。ただちに全警備ロボットを対象としエネミーの無力化を開始します。
「やばいやばいやばい流石にもう無理っ…」
その時、兎がフブの前に立って警備ロボットに放つ。
「私の命令が聞こえなかったか。お、お前達は私の恩人に“やってはいけない事”をした……咲嶺兎の権限で命令する。私の恩人を“敬え”。」
兎から出ていると思えない声と圧力でロボット達を制圧する。
全警備ロボットが膝をついて体を前に倒す。
「フフ、フブ……ごごごごめん……わわわ私の警備ロボで傷つけて…」
「傷?付いてないよ?まぁ、顔に掠ったのも薄皮1枚だったし…………………でも、なんかこの警備ロボ腹立つ!!!こいつら全員に落書きしたるねん!!!おらぁー!!」
そう言ってフブがロビーに置かれていたテーブルからペンを取り、倒れているヴィーナスとは別のロボットに落書きし始める。
———この行為は私達のステレス性能及び、彫刻像への擬態が困難なものになってしまいます。なのでこの行為は…。
「ねぇ゛ーーー!!!文句言い始めたんだけどぉぉお!!」
「どうした、No.11。不満か…?」
兎が落書きするフブの後ろで警備ロボットを威嚇する。
———しかし、我々の任務に…
「お前……スクラップになりたいのか……?」
———いえ、なんでもありません。フブ様どうぞ落書きをお楽しみ下さい。
「ちょ、フフフッ。この警備ロボ、兎の尻に敷かれてるんだけどフフフッ。ちょっ…フフッ。」
「ごごごごめん…とと取り乱しちゃった…ごごごごめん…」
フブは別のロボットにも落書きし始める。
———フブ様、接合部への落書きは……
「おい、No8何か言ったか?」
———いえ、仰せのままに。
「くっ…コイツも敷かれてるんだけどップププッ…」
「ごごごごめん…フブ…」
——————ガガガッ……回復完了。サーバーへの情報へアクセス。人物“フブ”への情報確認。識別番号No.05始動します。
ヴィーナスロボが起き上がった瞬間、フブに落書きされているロボット以外の個体が動き、ヴィーナスロボを囲む。
———%%%%%%%%%。
———€€€€€€€€€€€。
———¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥。
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———@@@@@@@@。
「え、兎…このロボット達、謎言語で話してるんだけど…」
「あ、うううん…。なんか…No5のヴィーナスロボが罵倒されてる…」
「フフフッ…ちょっ…ッ…ヴィーナスロボ皆んなからッ…囲まれて責められてんの?フフッ、ちょっと…面白過ぎるんだけどッ…」
必死に爆笑を堪えながら落書きするフブ。
この後、全警備ロボに動物の落書きをして部屋へ戻った。
安全の為、一様、彫刻に擬態しやすい場所に落書きした。
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「ねぇー兎。そういえばさ、このマンションってさどんな人、住んでるの?」
「んー……わわ、私がスカウトした…お金が無いけど、才能はある人を住ませてる…」
「さっきマンションのロビーと廊下の酸素抜いてたけど、大丈夫なの?」
「う、うん…一様…多分、全員…自分の部屋に引きこもってるから…」
「んー…まぁ窓から鉄の壁、降りてきても部屋から出てこない人達が住んでるってことね…。まぁ出てこれなかったんだけど…」
「そ、そうだね…く、く苦情の電話一本も来ないね…」
「まぁ、そんな人達なのね〜。ふぅー癖強いね〜。」
そう言ってソファに溶ける兎の髪の毛をくるくる回して遊び出すフブ。
フブは思い出した様に言う。
「そういえば兎、私の事“恩人”だって言ってたねぇ〜。恥ずかしい事、言ってくれるじゃんねぇ〜。」
「……ややややめてぇ。」
猿の数くらいの様な体制で兎の髪の毛をくるくる回すフブ。
「ねぇー。ところで兎。」
「な、なな何…?」
「えーと…今、目の前にいるこの…ヴィーナスロボは。」
———はい。ワタシはフブ専属の警備ロボです。
「えーと…説明をお願いしてもよろしくて?」
「ヴィーナス、言え。」
———はい。本来ワタシの仕事は兎様の“警備”ですが今日からフブ様専属の警備ロボットになりました。よろしくお願い致します。
「そそそそう…フブを攻撃した罰としてフブの警備をさせる事にした…」
「えぇ〜。ワタシに負けたロボットが私の警備…?!」
揶揄う様に言うフブにヴィーナスロボは膝を付いた。
———…はぁ。全く持ってその通りで御座います。はぁ。
「ねぇ、兎。なんかコイツ私に不満持ってない?」
「ヴィーナス。何か不満があるのか?」
———いえ、兎様の仰せのままに。
「やっぱり、コイツ私の時と態度違くない?!」
「ヴィヴィ、ヴィーナスへの命令権限をフブにも渡しといたから…その…命令すれば…大丈夫…」
「フンッ、ツンデレロボもいーじゃんよ。これからよろしく“な”!」
———…はい。
不服そうにヴィーナスは返事した。
「わわわ私の命令が聞こえなかったか。お、お前達はわわ私の恩人に“やってはいけない事”をした……」
警備ロボット達
(え、そんな命令されてたっけ?!)
兎はロボットに対して口調が強いです。AIに舐められない様にする為らしいです。小物ですね。
【繰り返す。だが、ゆっくり、ゆっくり前進する。人よ、そうであれ。お前もそうであれ。】




