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周回移動都市ヴェルサイユ  作者: 犬のようなもの
《セカンドオーダー編》             ようこそ新世界へ〈前日譚〉
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〔第12話〕アンコントロール

12話とめいうっていますが、間話みたいな物です。

 



 ワタシは自立型AINo5(ナンバーファイブ)

 ワタシは負けたと思っていない、確かにワタシの判断のせいでご主人様に迷惑と心配を掛けた。

 これはあってはならない事で恥ずべき事だ。

 しかし、ワタシはフブに負けていない。

 攻撃パターンを変則化し、相手の行動を読み切った。

 仮にテーザー銃が効いてなかったと仮定してもワタシに勝ち目は十分あった。

 ワタシは……。



「ねぇーーー。ヴィーナッスッくふぅん、冷蔵庫にあるコーラ取ってきてぇーー。」



 ———はい。



「ねぇーーー!!ヴィーナッスッくふぅん、髪の毛乾かしてぇ〜!」



 ———はい。



「ねぇ゛ーーー!!!肩もんでぇえ!!!」



 ———…。



 ワタシを作りし偉大な“咲嶺(さきみね)兎”様の為なら、ワタシはAIという概念も破って見せるのに…。

 何故、フブという(まが)(もの)のために時間を(つい)やしているのだろうか。









 ———————————————#####



「ねぇ、フフフブ…ヴィーナス太々(ふてぶて)しいね…ヴィーナスに対してはフブも私と同じ“権限”あるから…命令してもいいんだよ…?」


「んー、私お願いしてるだけで命令してるわけじゃ無いからな〜。私が頼んだ事やりたく無いって言うんなら別にやらなくてもいいと思ってるよ?」


「ろ、ろろろロボット三原則に引っかかってる…けど…自立型AIだから、まぁ…」


「いいじゃん、兎もわざっとそういうリミッター外してるんでしょ〜!」


「フブ……」


 兎はロボットの事について、恐怖心を持ちフブとは違って一線距離を引いている。

 しかし、兎は高度な完全自立型AIを“有効活用”する為に、何かを制限する為のプログラムを一切、(機能させていない)使っていない。

 これは度胸や、勇敢さから来ている訳では無い。

 高度なプログラムに制限を掛けず性能を最大限引き出そうとしているのだ。

 その事をロボット達も分かっていて、その上で創造主を尊敬している。

 自分達を作り、更に“自我”まで許してくれているのだ。

 ロボット達に取って、これはどんな事よりも幸せな事なのだ。


「ねぇー…ヴィーナッスくふぅん。ヴィーナスくふぅんはさ、AIな訳じゃん?」



 ———…はい。



「AIの思考って人間と違って煩悩(ぼんのう)とか無いの〜?」



 ———…本来なら有りませんが、ワタシは兎様にそれらを許可されています。これ以上幸せな事はありません。



「へぇー放牧してるみたいな感じだねー。」



 ———ゾンビ騒動が治るまでロビーに7体、その他階に8体を巡回させております。決して放牧などではありません。



「なんか、このマンション凄いねー。」



 ———兎様のご自宅なので当然かと。



「そういえばさ最初、私と戦った時なんか凄いメカメカしく喋ってたけど、なんで今そんなスラスラ喋れるの?」



 ———ブラフでした。



「え…?あー…なるほど。んで、どゆことなのさ。」



 ———…口調を単調にしておけば攻撃の単調性にも説得力が出ると思いました。そして油断した所を変速的に制圧する予定でした。



「んぇ?!んじゃ、私、最初…無意識に先入観(せんにゅうかん)持たせられてたって事?!あー…そうか、最初からコイツはずっと単調的な動きや言動しか出来ないと思わされてたんだね…」



 ———(兎様だったら、そんな事とっくに気づいていたはずだ。)



「凄いね!流石、特別なロボットだね!」



 ———…はい。



 ワタシはロボットだ。

 兎様によって作られた“特別な感情”によって個体差が大きく出る。


「あっ、兎〜今日、風呂長かったねぇ〜。」


「ふふふ風呂で寝てた…」


 しかし、それによりワタシはロボット扱いをされる時、処理しきれない感情がわく。

 ワタシはロボットだそんな物ただの作り物に過ぎない。

 だが、任務を遂行する日常に何気ない幸せを見つけているワタシに気づいた。

 これがロボットであっていいのか。


「危ないじゃん!!風呂で寝るのは辞めなぁ!!」


「うううん…そうする…」


 ワタシがロボットなんかでいいのか、ロボットの癖に冷静で無く、状況を理解しきれず、人間ほどの感情は持たない。

 もしかするとワタシはロボットにも人間にもなれない中途半端なスクラップでは無いのだろうか。

 先日も兎様に大きな迷惑も掛けた、兎様があんなに大声で怒ったのは初めて見た。


「ねぇーー兎、こっちきて映画見ようよー!」


「きょ、きょ今日はちょっと眠たい…」


 怖かった。

 ワタシが、ワタシ自身が。

 ワタシはワタシの“感情”の性で余計な事をしてしまった。




「ねぇーーーこっちきてよ!!!」


「ねぇーーー!!!」


 この感情はどう処理すれば良いのだろうか。

 どちらにも成りきれないワタシは……。

 ………。

 ……。

 …。



「ねぇーーー!!!ねぇ゛ーーー!!!聞いてる?」



 ———はい。どうしましたかフブ。



「こっちきて一緒に映画見よ?ほら兎寝ちゃったしさ〜こんな広い部屋でひとり映画は寂しいじゃぁ〜ん。」



 ———…………はぁ…ワ、ワタシとですか…。



「そうだよ!この部屋に他、誰がいるのさぁ〜!」



 ———分かりました。



 そう言って地面に正座するヴィーナス。



「え、なにしてんの?!」



 ———映画を観る準備をしました。何かご不明点が?



「いやぁさ…ほら、あれじゃん……私のソファの隣空いてるじゃん…ほら、その、あれじゃん…あれあれ。」



 ———ワタシがそのソファに腰掛けると最高級生地が傷んでしまう可能性が…



「いーーーの!!!そんな硬いこと言ってないで!!もし汚しても兎なら許してくれるってぇ!!私も掃除手伝うし!」



 ———しかし、ワタクシ共は主人の財産を守る為に…



「もし、ソファ傷付いたら一緒に兎に謝ってあげるから!!いーぢゃん!!」



 ———……しかし。



「じゃぁさ、何の為にヴィーナスは兎にリミッター外されてんの!」



 ———…。



 ワタシはまた勝手な行動で主人に迷惑を掛けてしまったら…。

 兎様の望みが分からない…。

 ワタシはワタシ自身どうなれば良いのかが分からない。


 しかし、その時フブから出てきた言葉にヴィーナスは納得してしまった。




「ロボットの垣根(かきね)越えてこーぜっ!」






 ———ソファが傷付いたら一緒に謝って下さいね。



「フフッ、勿論よ。」





「ヴィーナッスくふぅんは何観たいのさ?」


———これです。ピッ。


「え、これAIが人類滅ぼす奴じゃん…」


———…。


「ねぇ゛ーーー!!!どのホラー映画より今この状況の方が怖いんだけど!!!」


———冗談ですよ。



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